シトロエンのロータリーエンジン

コラム・特集 車屋四六

1959年、バンケル博士とNSUのRE開発成功の報に、世界から100社以上が独逸に集合の話は有名。で、技術提携に成功しても世界中が実用化に難航する中、マツダが成功も周知の話。

二輪ではスズキが販売に漕ぎつけ、ソ連のラダが70年1ローター70馬力→74年ツーローター115馬力→82年3ローター130馬力へと進化しながら、その後の話は途絶えている。

トヨタ日産は発売直前に石油ショックで没。巨費を投じたGMも鳴かず飛ばず。カーチスの航空機用も没。シトロエンも没と思っていたら、プロトタイプでの実走実験の実施を知った。

2008年パリサロン取材中、シトロエンから「収蔵庫見ませんか」と誘われた…収蔵庫と云うから大きな物置を想像したが、立派な工場ほどの建屋に、一号車から400台ほどが所狭しと並んでいた。

其処はパリ郊外、シトロエンの工場の一角。商売がら写真を撮りまくっていると、M35プロトタイプに出会った。そのツードアクーペは、ベースのアミ8を一回り大きくして、ワンローター995cc・49馬力を搭載していた。

レシプロ搭載のアミ8は35馬力で最高速度120㎞だから、160㎞は越える性能だったろう。聞いてみると量産試作で275台が製作され、選ばれた顧客による実走実験に使われたと云う。

M35の完成は70年で、更にツーローター107馬力に発展しシトロエンGSに搭載したのが74年だった。当時シトロエンは「次世代モデルはREで」と噂が流れるほどに力を入れていたのに、没になった理由は聞くのを忘れた。

M35で興奮していたら、奥の方にヘリコプターがあるではないか。ヘリだけでもオッと思うのに、REだと云うので、また驚いた。
その完成は71年で、2ローター2400cc・190馬力。車重625kg・全備重量840kg・最高速度205㎞・巡航175㎞時の燃費4.4km/Lで高度1万フィート/3300mに到達と書いてあった。

機体も自社製と聞いて感心したが、設計にはサーブが協力したようだ。軍需産業盛んなフランスだから、成功していたら燃費お構いなしの兵器で活躍の場があっただろうに。

 

 

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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