「アクセラ」から車名が改められ、マツダの新世代商品第一弾として発売された「MAZDA3」。従来から定評のあった魂動デザインにさらなる磨きをかけるとともに、内装では人間のバランス能力を最大限引き出す理想的な運転姿勢を採用。人間中心のクルマづくりに徹底的にこだわった。
ボディタイプは、4ドアセダンとファストバック(ハッチバック)を用意。エクステリアデザインは、セダンが凛とした伸びやかさ、ファストバックが色気のある塊をテーマとし、それぞれに異なる個性を与えた。特に、ファストバックは、サイドセクションにキャラクターラインを持たずに〝光の移ろい〟を表現し、スピード感あふれるルーフと力強いCピラーの造形が、一つの塊のような存在感を放っている。
エクステリアと同様に、インテリアデザインも進化。シンプルな造形でありながら美しさ、上質感、運転に集中できる心地よい空間を目指し、コクピット周辺の操作、機器、情報などをドライバー中心に左右対称に配置。肌が触れるところにはソフトパッドが多用されており、随所に質感の高さが見られるのは好印象だ。
一方で、後席の足元空間のゆとりは少なく、ファストバックはヘッドクリアランスも狭く、後方・側方視界もあまり確保されていない。ブラインドスポットモニターなどの安全装備で補完できる部分もあるが、流麗なデザインと実用性を両立する難しさを感じさせる部分であった。
パワーユニットはガソリンが1.5L直噴、2.0L直噴、ディーゼルは1.8L直噴ターボを設定。さらに、新世代ガソリンユニット、2・0ℓスカイアクティブ-Xも採用された(搭載車は年内販売開始を予定)。今回は、ディーゼルモデルのセダン、2.0Lモデルのファストバックに試乗する機会を得た。
まずはディーゼルモデル(最高出力116PS/最大トルク270Nm)から試乗。近年のマツダのディーゼルは非常に完成度が高く、どのモデルに乗っても不満を覚えることはないが、MAZDA3のディーゼルにおいてもその印象は不変。特有のカラカラ音はほぼ遮音され、エンジンから伝わる振動は微小に抑えられている。低回転からの太いトルクを発揮するので街乗りでも扱いやすく、踏み込んだときのスムーズな吹けあがりはディーゼルとは思えないものに仕上がっていた。
2.0Lガソリン(最高出力156PS/最大トルク199Nm)は、走り出しは穏やかなものの必要十分なパワーを備え、スピードに乗ればどの速度域においてもパフォーマンスに不足は無い。高速の追い越し時や登坂路といった、もう一段階上の加速がほしい場面でも、力感のある走りを見せてくれる。
乗り心地はセダン、ファストバックともに若干硬さを感じるが、騒音や振動は抑えられており、同乗者も不快に感じることはないだろう。基本的にはフラットライドで、一般道での右左折や車線変更後の車両の揺り戻しは少なく、直進安定性の高さは輸入車と比較しても差し支えないレベルになっている。
ハンドリングは扱いやすさを重視しながら、程よい操舵感のあるもので応答性も良好。操舵に対するレスポンスやクルマの動きにも軽快感があり、特にワインディングでのしなやかな走りは、ロードスターが標榜する“人馬一体”の片鱗をMAZDA3においても感じることができた。走り好きや、クルマの購入要件に動的質感の高さを求めるユーザーにとって満足度の高いモデルと言える。
ファストバックの写真はこちら
セダンの写真はこちら