公益財団法人 本田財団(設立者:本田宗一郎・弁二郎兄弟、理事長:石田寛人)は、2019年の本田賞を、人工知能におけるディープラーニングの先駆的研究と実用化への貢献を果たしたとして、トロント大学 名誉教授、ベクター研究所主任科学顧問ジェフリー・ヒントン博士に授与することを決定したと発表した。本年で40回目となる本田賞の授与式は、2019年11月18日に東京都の帝国ホテルで開催され、メダル・賞状とともに副賞として1,000万円がヒントン博士に贈呈される。
1980年に創設された本田賞は、科学技術分野における日本初の国際賞であり、人間環境と自然環境を調和させるエコテクノロジーを実現させ、結果として「人間性あふれる文明の創造」に寄与した功績に対し、毎年1件の表彰を行っている。ヒントン博士はAI(人工知能/Artificial Intelligence)へのディープラーニング活用の基礎となるバックプロパゲーションをはじめ、AIを実用化に至らせた数々の技術を考案してきており、AIは科学技術の発展のみならず、エネルギーや気候変動といった人類が抱える地球規模の問題を解決するうえで重要な役割を果たすことが期待されている。ヒントン博士の取り組みは、本田賞にふさわしい成果であると認め、今回の授賞に至ったと述べた。
【ジェフリー・E・ヒントン博士 プロフィール】
トロント大学 名誉教授。1947年12月、英国(英国&カナダ市民)生まれ。
<略歴>
1978~80年 カリフォルニア大学サンディエゴ校、博士研究員
1980~82年 ケンブリッジMRC応用心理学ユニット、リサーチサイエンティスト
1982~87年 カーネギーメロン大学、助教授&准教授
1987年~ トロント大学、コンピューターサイエンス学部教授
1998~2001年 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、ギャツビー計算論的神経科学ユニット長
2013年~ グーグル・ブレイン・チーム、工学フェロー(半日勤務)
2016年~ ベクター研究所、主任科学顧問(無償ボランティア)
<栄典・受賞暦>
1998年 王立協会フェロー
2001年 デビッド・E・ラメルハート賞(認知科学)
2005年 IJCAI人工知能研究優秀賞
2011年 ヘルツバーグゴールドメダル(カナダ、理工学)
2016年 米国工学アカデミー外国人会員
2016年 IEEE/RSEジェームズ・クラーク・マクスウェル・ゴールドメダル
2016年 BBVA財団フロンティアーズ・オブ・ナレッジ賞 情報通信技術部門
2016年 NEC C&C賞
2018年 ACMチューリング賞(ヤン・ルカン氏およびヨシュア・ベンジオ氏と同時授賞)
<主要出版物>
- A Learning Algorithm for Boltzmann Machines: (with Ackley, D. H. & Sejnowski, T. J.), Cognitive Science, Elsevier, 9 (1): 147–169, 1985(ボルツマンマシンの学習アルゴリズム)
- Learning Representations by Back-Propagating Errors: (with Rumelhart, D. E. & Williams, R.J.), Nature 323 (6088): 533–536, 9 October 1986(誤差逆伝播法による表現学習)
- A Fast Learning Algorithm for Deep Belief Nets: (with Osindero, S. & Teh, Y.), Neural Computation, 18 (7): 1527-1554, July 2006(ディープ・ビリーフ・ネットワークの高速学習アルゴリズム)
- Reducing the Dimensionality of Data with Neural Networks: (with Salakhutdinov, R.R.), Science, 313 (5786): 504–507, 28 July 2006(ニューラルネットワークによるデータ次元削減)
- ImageNet Classification with Deep Convolutional Neural Networks: (with Krizhevsky, A. & Sutskever, I.), NIPS 2012. Curran Associates Inc.: 1097–1105, 3 December 2012(深層畳み込みニューラルネットワークによるImageNet分類)