どこまでも踏み込みたくなる気持ちよさ レクサスRC F試乗

試乗レポート

昨年10月にマイナーチェンジされたレクサスRC。これに続いて今年5月、そのハイパフォーマンスバージョンである「RC F」がマイナーチェンジされた。

RC F “Performance package”

マイナーチェンジとはいえ、今回の改良ポイントは多い。その狙いはスポーツ走行をより楽しめる運動性能の実現。レクサス“F”は「公道からサーキットまでシームレスに走りを楽しめる」ことを開発テーマに掲げているが、新型RC Fはこれまで以上に限界性能を高めることで、その楽しめる領域を上に拡大したものだ。

さて今回の改良点は数多いが、まず大きなポイントとなるのが軽量化である。細かな部品まで見直すことにより、従来モデルに比べ20kgのスリム化を実現。さらに今回から追加された高性能バージョン「パフォーマンス・パッケージ」では約70kgも軽量化が実現されている。

また空力性能も大きく進化。レースで得られたノウハウがフィードバックされ、フロントスポイラーのコーナーにカナード形状を取り入れてダウンフォースを向上させたほか、サイドのロッカーモール後端はリヤタイヤ周辺の乱気流を抑制するためにアンダーカット形状をつくるなど、細かな改良が重ねられている。

今回は富士スピードウェイで試乗したが、実際に走らせてまず感じたのはクルマ全体の動きのキレが増したことだ。ステアリングの操作に対して瞬時に、そして無駄な動きをすることなく、操作量の分だけクルマが反応する。高速域ではもちろん、低速域での細かな振動も抑えられ、雑味のないクリアな乗り味である。

アクセルへの反応が俊敏なのも特筆できるところ。搭載するエンジは従来と変わらず自然吸気の5L・V8「2UR-GSE」だが、エアクリーナーを刷新することでレスポンスが向上している。基本的には高回転型のエンジンだが、低回転域でも素早い反応をみせ、力強いトルクが発生するのでサーキットのみならず、公道でも扱いやすいだろう。ちなみに最高出力は従来の477psから481psにわずかだが向上している。

足回りの粘り強さも増した印象。RC Fはスポーツクーペとしては従来からしなやかなセッティングだったが、新型はさらに熟成。状況に応じて減衰力を切り替えることで、減速から再加速といった姿勢が大きく変わる時でもギクシャクしないため、スムーズな走行が可能だ。またコーナーリング時の初期ロールが抑えられると同時にロールが素早く収束するため、クルマの挙動にブレがない。

これらのRC Fの持ち味は、新設定の「パフォーマンス・バージョン」ではより強く感じられる。エンジンのパフォーマンスはベースのRC Fと変わらないが、さすがに70kgもの軽量化の恩恵は大きく、明らかにフットワークが軽い。タイヤはサーキット走行を主眼に専用開発されたミシュラン・パイロットスポーツ4S」を装着しており、このグリップの高さも相まってエンジンの大パワーを活かした走りも可能だ。固定式のカーボンリヤウイングがいかにもという印象を与えるが、そのおかげで時速200キロを軽く超える領域でも安定感は高いままで、気持ちの良い走りが楽しめる。

一方でRC F同様にパフォーマンス・パッケージも、公道では普通に走行できる快適性を備えているのも特徴で、いかにもレクサスらしい部分でもある。スポーツカーにありがちな硬さを感じることがなく、多少荒れた路面でも滑らかな乗り心地はそのまま。しなやかな足でタイヤのパフォーマンスを最大限に発揮するセッティングだから、ワインディングでも心地よいドライブが楽しめるだろう。日常から非日常までシームレスに楽しめるハイパフォーマンスモデルである。(鞍智誉章)

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