{大きいことは良いことだ}…東洋一高い霞ヶ関ビル完成の68年、森永チョコレートの山本直純作曲のCMソングだが、人間には本来大きいことが最上という意識があるようだ。
自動車にも同じことが云えるだろう。天皇家のロールスロイスやプリンスロイヤル、英国王室のダイムラーやロールスロイス、米国大統領、そしてソ連・中国にも自国製というように、長大リムジンが国家元首には権力象徴の必需品のようである。
それは世界の要人ばかりでなく、長大リムジンは金満家御用達でもある。高い身分での必需品の人も居れば、身分を誇示するステイタスカーとして愛用する人も居るようだ。
21世紀に入り、日本でもこの風潮が流行りだしたようで、一億円で2台と売りだしたマイバッハは即完売。商標権を手に入れたBMWのロールスロイスやVWのベントレーが、日本でも売れているようだが、若いオーナードライバーが居るのには感心する。
時計の針を戻して20世紀、この時代はWWⅡ以前、以後と分けねばならない。その以前の自動車は、即王侯貴族金満家御用達だったから、馬鹿でかい高級車ばかりが闊歩していた。
が、大戦を境に本格的大衆時代が到来して様相は一変する。自動車後進国日本は当然だが、欧州では戦勝国も含めて経済復興期には、軽自動車もたくさん登場した。
いずれにしても、世界的に自動車の大衆化が始まり、加速したのはWWⅡ終戦が切っ掛けと云って良かろう。が、いつの世にも裕福な人達が居て、またぞろ大型高級車の需要が喚起される。
戦勝国の米国では、キャデラック、リンカーン、クライスラー、パッカードなどに、伝統のリムジンが復活し、英国では、ロールスロイス、ダイムラー、オースチンなども復活するが、自動車王国だったフランスやイタリアでの復活はなかった。
さて、WWⅡ以前の自動車大国ドイツは、敗戦国らしく国土復興優先で、真っ先に多くの軽自動車が登場したが、一段落すると小型車が元気を取戻しはじめる。
やがて1951年、メルセデスベンツ300登場、久々の大型高級車の復活だった。300は好評で世界の金満家御用達となり活躍するが、63年これぞ極めつけとばかりに登場したのが600だった。
600には長短二車種があり、六座席でも全長5540㎜あり、八座席のプルマンともなれば6240㎜で{世界最大級リムジン}の名を欲しいままにしたのである。
タイ王室の600リムジーネは六座席のほうだが、側で見れば小山のようだった。王様の車らしく、登録番号は{1番}。
2005年のバンコク自動車ショーで、王室のベンツ8台が展示された中の1台。前に赤色灯、後ろに無線アンテナが3本立っていた。
300の心臓は直列六気筒だが、600ではベンツ初のV型八気筒で、6332cc・250馬力+4ATで最高速度が200㎞をオーバーしたが、当時のポルシェでは追いつけない早さだった。