既に死語になったろう{てんじょうてんがゆいがどくそん}は釈迦の言=この世にただ一つということ。とまではいかないまでも「そこらのとは違うんだ」と自己満足を楽しむ人達がいる。
で、そんな好みを満足させようと生まれた車会社が各国にある。
そんな人達は、姿形装備での個性的演出、また速さを求める人もいる。速さを求める人達のために、生まれた会社=チューナー、日本ならTRDやニスモ、伊アバルト、独ハルトゲ/シュニッツアー/ゲンバラ/ロリンザーなどがある。
独アルピナやAMGは、BMWやベンツのカタログモデルになり、仏アルピーヌも同様。いずれにしても市販車の改造改良だから比較的安価で、人気が上がればメーカーの販売網に載せられる。
モーリス→MG、モーリス→ロータス、シムカ→マトラ、フィアット→アバルトのように、チューナーには安い大衆車でスポーツカーをという分野があり、アルピーヌもそれに属する。
アルピーヌのベースはルノー4CV。日本でも日野ルノーで有名なベストセラー銘柄である。アルピーヌ生みの親、ジャン・ピエールはルノーのレーシングドライバーであり、販売店の経営者だったから、ベースにルノーは当然の成り行きである。
ルノー4CVエンジンをチューンアップ、サスを強化し、1952年に登場した彼のスポーツカーはなかなかのもので、草レースやラリーで好成績を挙げ、最後はミレミリアで優勝という栄冠に輝いた。
で、自信を得て市販目的のプロトタイプの完成が55年…誕生したアルピーヌ・ミレミリアA106は、性能もさることながら、姿も含め、いかにもフランス生まれという個性の持ち主だった。
さて市販の段階で、レデールがとった戦略は賢く、交渉の結果、ルノーのカタログに載せ、販売、部品供給、アフターサービス全てをルノーでという契約に成功したのである。
それでレデールは、仕入れから販売、整備という面倒な作業から解放されて、好きな開発作業に専念できる体制を整えたのである。
対するルノーの方は、莫大な開発費を投じることなく、高性能スポーツカーをカタログに載せることができ、客に渡ったアルピーヌが勝てば宣伝に繋がり知名度が上がる、という共存共栄一挙両得を絵に書いたような、旨い話が実現したのである。
ドイツ製、英国製のように多くのファンは得られなかった反面、アルピーヌのファンは強烈で、日本にも輸入されている。
一方本家のアルピーヌ社は、73年にルノーに株式を譲渡したので、現在はルノー完全支配の子会社になるが、2012年に英ケーターハム社が50%株式を取得するも14年に提携解消。再度ルノーが単独を宣言している。