サバンナはロータリーエンジン(RE)車専用に開発された車だ。その初代はツードアクーペで、走りの良さ、豪快さに舌を巻いたものである。
当時サーキットで無敵を誇るのはスカイラインGT-R。それをサバンナGTが破った。マツダが、世界で初めて量産化に成功した、REならではのコンパクト軽量、高出力が威力を発揮した。
この快挙の後、自動車業界に難題が飛び込んできた。マスキー法に端を発する排気ガス規制。REは、この難題もいち早く解決して世界の注目を浴びる存在となる。
が、不幸が待っていた。石油ショックだ。世界中がエコ一色になり、REに“大食い“のレッテルが貼られ、日向(ひなた)から日陰に転落。これでREはとどめを刺されたと思ったのは、浅はかだった。
78年(昭53)、RE専用ブランドのサバンナを冠したスポーツカーが登場する。サバンナRX-7はアメリカ市場をターゲットに開発の純粋なスポーツカーだった。
RX-7はフロントエンジン、リアドライブとコンベンショナルな機構だが、軽量コンパクトなREの特長を生かして前後荷重配分50:50から“フロントミドシップ”を名乗る。こいつは、トランスアクスルを生かしたポルシェ944、強いてはF1と同じ荷重配分なのだ。
その心臓RE12A型は、573ccx2ローター、圧縮比9.4、130ps/7800rpm、16.5kg-m/4000rpmと、相変わらずの高出力を絞り出していた。
目標のアメリカ市場では、ポルシェ911時代から熾烈な戦いを続けるダットサン(フェアレディ)が居た。RX-7の仮想敵はポルシェ944。で、944の各部性能を少しずつ上回るよう仕上げられた。
が、よく見れば、944のハッチゲートを兼ねるリアウインドウがワンピースなのに3ピース。「日本のガラス屋では作れないのでやむをえず」は開発の親方小早川隆治主査の言。
ついでに「リトラクタブル・ヘッドライトは」と聞くと「944を意識したものではない・ライト露出の試作車がどうしても200㎞の目標に達せず・ライトを引っ込めて目標達成」ということだった。
我々ジャーナリストのRX-7試乗会は、広島三次(みよし)に完成したばかりのマツダのテストコース。バンクから直線路でアクセルを床まで踏むと200㎞を少し超えるが、ヘッドランプを出すと196㎞にダウンすることを確認した。
テストコースだけに、ハードなコーナリングも試したが、全高1265㎜の低いシルエットでの低重心。僅か1トンの車重に130馬力と良好な馬力荷重(パワーウエイトレシオ)。前後荷重配分の良さと相まって、身軽で安定した回頭が素晴らしいと思った。
もちろん、鋭い発進、加速の伸び、加速後の韋駄天走りは世界のトップレベル。スポーツドライビングの醍醐味が満喫できるスポーツカーだと評価した。
マツダはその後経営不振でフォードの支配下に入り、REの廃止が決定的となった。が、一部の技術者が存続に固執して、地道な開発を続けていた。
外部では、マツダの切り札、REも終わりかと噂され、これで終わりかとREファンが嘆く話も伝わってきた。ところが、REは不死鳥のように蘇(よみがえ)り、業界を驚かせたのである。
それが2003年登場のRX-8。高性能スポーツカーでありながら、変則的3ドアで、実用的な後席を持つ四座席。日常の乗用車としても通用する嬉しいスポーツカーだった。
余談になるが、多種多様な燃料に対応できるREの特長を生かして、水素型RX-8が開発されて、インフラ整備を進める、北欧にまとめて輸出されている。