3列シートを備え多人数乗車を余裕でこなす大型ミニバンから、取り回しの良さや高い経済性で若い子育て層を中心に支持を集めるハイト系軽自動車まで、ファミリーカーは時代のニーズにあわせて進化を果たしてきた日本独自の自動車文化と言える。そのファミリーカーの新たな選択肢として登場したのが、トヨタの新型コンパクトワゴン「ルーミー/タンク」だ。
ルーミー/タンクは、 広々とした空間〝Living〟と、余裕のある走り〝Driving〟を掛け合わせた「1LD-CAR」をコンセプトに、乗降性にすぐれるパワースライドドアやゆったりとくつろげる室内空間、多彩なシートアレンジなど、ミニバンの持つ魅力をコンパクトボディに凝縮したモデルになっている。
エクステリアは、存在感のあるフロントグリルによって、クラスを超えた押し出しの強さのあるルーミー、力強さを表現した切れ長のヘッドランプと大開口アンダーグリルによって躍動感を強調するタンクと、二つの個性を設定。さらに、メッキ加飾や専用バンパーを持つカスタムグレードも設定されている。
車内に乗り込んでみると、天井の高さがもたらす開放感と後席の広さに驚かされる。後席足元スペースにも余裕があり、大人が足を組んでも窮屈しない空間が確保されている。加えて、後席は240㎜のスライド機構を持ち、大人が3名乗車した状態でも、荷室には機内持ち込みサイズのスーツケースなら四つ積むことができるほか、シートを床面に収納すればフルフラットのスペースを創出。シーンにあわせて多用途に使える空間は、子育てファミリーだけでなく、荷物の多いアウトドアレジャーにも活躍しそうだ。
これ以外にも快適性と利便性を高める仕掛けが満載。センターコンソール下部に設けられた容量5Lの大型センターダストボックスは、脱着式なので手を汚すことなくそのままゴミが捨てられ、スマートフォンが収納できる回転式カップホルダーは、引き出せば1Lの紙パックの飲み物も置くことができる。さらに、上下2段に分けられた大型乗降用アシストグリップは、上段を太くし乗り込む時につかみやすくする一方で、子どもが乗り降りしやすいよう下段は細くするなど、かゆいところに手が届く細かな気配りが感じられる装備を採用している。
パワーユニットは、1・0Lエンジンをベースに、街中での発進や中間加速に磨きをかけた自然吸気と、高速走行でもストレスを感じさせず、1・5Lクラス相当の最大トルク140Nmを発揮するターボの2種類を設定し、これにCVTを組み合わせる。どちらもアクセル操作に対するレスポンスが良好で、発進・加速でもたつくことはなく運転しやすい。街乗りがメインというユーザーはNA仕様で十分に満足できるレベルになっている。ただ、高速や登坂路でのパワーのある走りを求めるなら、やはりターボモデルが優位。さらに、ターボモデルに搭載されるスポーツモードを使うと加速レスポンスが鋭くなり、想像以上にキビキビとした走りを楽しめる。高速に乗るシーンが多く、運転を楽しみたいというユーザーにはターボモデルをおすすめしたい。