2012年のデビューから毎年アップデートを重ねてきたFRスポーツカーの86が、登場4年目にして初のマイナーチェンジを実施。8月のインプレッションではサーキット試乗の様子を紹介したが、今回は一般道と高速道路をメインで走行し、熟成された独自の走りを確かめた。
エクステリアも空力性能向上のため意匠変更し、ハの字型に下側を広げたラジエーターグリルとノーズフィンが個性と精悍さを主張。インテリアの基本デザインは踏襲しつつも、メーターはアナログ主体のデザインからGモニターやラップタイムを表示するマルチインフォメーションディスプレイを備えたコンビネーションメーター(GT、GT〝リミテッド〟に標準装備)とするなどで、スポーティな印象を一段と高めている。
試乗車のGTは、ダンパーの減衰力を中心にセッティングを施したショーワ製のダンパーを搭載。スポーツモデルらしく全体的な乗り心地は硬めになっているが、街乗りの速度域で走らせても突き上げなどは最小限に抑えられている。
今回のマイナーチェンジでは、リヤピラーを中心にスポット溶接の打点増し打ちでボディ剛性を強化。クルマの軸となる部分をしっかりと補強することで、とくに高速道路やワインディングなどのシーンでは、ブラッシュアップされた足回りと相まってフラット感のある乗り心地と粘り強いコーナリング性能が従来型から大きく進化したポイントだ。さらに、これまで通りカーブでの高い回頭性は保たれているので、高いスピードレンジからの操舵でも安定した姿勢でコーナーをクリアしていく。
また、6速MT車エンジンの最高出力が200PSから207PS、最大トルクが205Nm212Nmに向上。パワーアップは小幅な変更に留まっているが、アクセルの踏み込みに対する反応がよりリニアになっており、トルクも3000回転前から徐々に盛り上がり、これが7000回転あたりまで淀みなく発揮されるので、数字以上に動力性能が向上している印象を受ける。一方で、低速域でもう少しトルクが太くなると街乗りでもさらに扱いやすくなるだろう。
また、吸気音を巧みにキャビンに引き込み、アクセルの操作に合わせてキャビン内に流す演出も気分を高揚させる。FRならではの素直なハンドリングやショートストロークのMTシフトとあわせて、操る楽しさを直感的に体感できる。
近年は手ごろな価格帯で楽しめるFRスポーツが少ない中、86のようなモデルは貴重な存在。クルマ離れが進んでいるといわれている時代においても、スポーツカーの魅力や運転する楽しさを伝えるモデルとして、これからも年次改良などのブラッシュアップでその魅力をさらに高めていってもらいたい。