2012年にデビューしたFRスポーツカー86は、ドライバーの感覚一つで思いのままに取りまわせる「手のうち感」や操る楽しさを体感できる「直感ハンドリングFR」をコンセプトに開発。水平対向ユニットや超低重心FRパッケージを採用することで、独自の走りを追求してきた。
毎年アップデートを重ね、独自の走りをブラッシュアップしてきたが、7月5日に大掛かりなマイナーチェンジを実施。ニュルブルクリンク24時間レース参戦からフィードバックした技術を中心にすべてを見直し、世界各地の道で鍛え直すことで車両各部を作りこんだという。
試乗会場となったのは、富士スピードウェイのショートサーキット。一般道とはやや異なる環境下だが、レースで培った技術を導入した86の性能を確かめるには向いていそうだ。
さっそくコックピットに乗り込むと、サイドサポートの張り出したスポーティなシートが体を包み込み、特に腰回りをしっかりと固定していた。また、ステアリングホイールはトヨタ最小径となる362㎜で、断面形状が掌によりなじむものとなり、操舵性の向上にもつながっている。
最初に試乗したのは6速MT車のGグレード。搭載されるパワーユニットは先代から変わらないが、6速MT車はエンジンの最高出力が200PSから207PSにアップし、最大トルクも205Nmから212Nmに向上した。さらに、最大トルクの発生回転数が6400-6600rpmから6400-6800rpmへと拡大している。ショートサーキットの試乗コースでは7PS/7Nmの差や、高められた空力性能の違いを感じることはできなかったが86のワンメイクレースなど本格的なサーキット走行では違いが顕著に表れそうだ。
足回りはやや硬めで、ステアリング操作やアクセルレスポンスは素直な印象。ハードなコーナリングでもステアリング操作に応じてノーズがスッと向きを変え、アクセルを踏み込めばシートに体が押し付けられるほどの機敏な加速を発揮する。ロールもごく自然で、応答遅れなどは感じられない。
一方で、AT仕様の“GTLimited”では、オプションのSACHS製ダンパーを装着していた。また、横滑りを防止するVSC機能に新たにトラックモードを採用。サーキット走行向けのこの機能は、ハードなコーナリングでタイヤのグリップ力が限界に近づくと、スピン挙動の緩和をサポート。ある程度のリヤスライドは許容しつつ、ドライバーがコントロールする領域を維持したままコーナーを抜けられるので、サーキットだけでなく雨天の日でも活用することをおススメする。
ショートサーキットでの試乗はあっという間に終わってしまったが、それでも進化した86の性能を垣間見ることができた。この車離れと騒がれている時代に年々若返っているという86オーナー層は今後も拡大しそうだ。