1999年に誕生したキャデラック・エスカレードは、アメリカの成功のシンボルや憧れのクルマとして実業家やセレブから人気を集め、愛用するハリウッドスターの姿を目にしたことがある人も多いのではないだろうか。そのエスカレードが昨年フルモデルチェンジを果たし4代目となった。今回は2月から業界に先駆けてアイフォーンをカーナビやカーオーディオとして活用できるアップル社の「カープレイ」を標準装備したモデルに試乗した。
実車と対面すると改めて実感するのはクルマの大きさで、威圧感すら感じる大型フロントグリルと相まって全長5195㎜×全幅2065㎜×全高1910㎜以上のスケールを感じる。乗り降りするのも一苦労するなと思いながらドアを開けると、試乗した上級グレードのプラチナムには自動でせり出してくるサイドステップが備わっていたので、思いのほか乗降性も悪くなかったのが印象的だ。
そんなフルサイズSUVの大きさに気をとられながらエスカレードを運転する。序盤こそ車線をはみ出していないかと心配するばかりだったが、運転席が高い位置にありフロントマスクがかなり立っていてスクエアな形になっているので見切りも良く、徐々にサイズ感を掴むことができた。
パワートレーンは6・2L V8直噴エンジン(最大出力426PS/最大トルク623Nm)を搭載し、エンジンの負荷によって半分の4気筒で走行できる気筒休止機構を備える。トルクフルなエンジンは軽いアクセルタッチでも約2・7㌧ある車両を淀みなく加速させ、モタつきなどは感じさせず箱根の登坂路でもストレスを感じることはなかった。低回転のトルクの太さを活かしたなめらかな走りは長距離をゆったりと走るのに最適で、エスカレードのキャラクターにマッチしたチューニングだろう。
インテリアはナパレザーシートやウッドパネルがラグジュアリーな雰囲気を醸し出す。運転席と助手席のパワーシートにはマッサージ機能が付いており、しっかりと体をほぐしてくれるので長時間のドライブも安心。後席の居住空間は言うまでもなく快適で、足元の広さから頭上空間まで一切の圧迫感を感じさせず、ファーストクラスを思わせる2列目のシートも柔らかさの中にも適度な硬さがあるので、疲れを感じさせない座り心地だ。また、三重シールドアの採用や吸音材を多用したことにより遮音性が高く、標準装備するボーズのサラウンドシステムを通して臨場感あふれる音楽を車内で楽しめた。
エスカレードにはキャデラックユーザーエクスペリエンス(CUE)というタッチパネル式の統合制御ナビシステムを搭載し、従来でもブルートゥースでアイフォーンの音楽を再生することが可能だった。2月から標準装備されたアップルカープレイはケーブルで接続することによって、音楽の再生だけでなく電話やメールの送受信も可能となっており、ステアリングのボタンから音声による操作も可能で安全性にも考慮されているのがCUEとの大きな違いだ。音声によるカーナビの操作や電話は非常に快適で操作性にすぐれていた。ただ、現状ではアイフォーンユーザーが多くダウンロードしている地図アプリ、フェイスブックやLINEなどのアプリがアップルカープレイ非対応なのが残念。日常的に使うアプリが対応するようになれば利便性はさらに向上するだろう。