{冒険者たち}67年作フランス映画。アラン・ドロン、リノ・バンチューラ、ジョアンナ・シムカス主演の歴史に残る名画に、登場するのが、メルセデスベンツ220SEbカブリオレだ(写真上)。アフリカに眠る財宝捜しに出掛ける三人組に、悪党らがからむストーリーで、主人公が乗るカブリオレの格好よさが、妙に印象に残っている。
この220SEbカブリオレとクーペが誕生した61年という年は、ダイムラーベンツ創業75周年。それを祝う記念シリーズが、220SEbだったのである。
そもそもダイムラーベンツは、敗戦の焦土から戦前型170で生産を再開して、生産が軌道に乗り始めた51年に登場したのが、直六搭載の中級モデル220シリーズだった。
この220は、170ともども泥よけがある戦前型だが、54年のフルモデルチェンジで、最新流行アメリカ風フラッシュサイド姿に豹変、世界が注目するモデルになった。
この新220の54年型は、代理店ヤナセで230万円だったが、日本でそれほどの人気はなかった。
が、55年に外貨不足で乗用車輸入禁止になるころから人気急上昇、プレミアム価格で500万円、一流実業家や成金御用達となる。このあたりから、日本人のベンツ信仰が始まったのである。
新220誕生の頃、ベンツはレース界にも復帰して、破竹の勢いでラリーやレースを制覇していたが、魔の55年を迎える。ルマン24時間レースで、優勝間違いなしと思われたベンツが観客席に飛び込み、大惨事を引き起こしたのである。
それでも、残る車が優勝確実だったが、ベンツは総引き上げを決定、レースを放棄したのである。
以後長いことサーキットに姿を現さなかったが、ラリーでは活躍を続け、モンテカルロ・ラリーで一・二・三位独占の60年には、ヨーロッパ・ラリーチャンピオンに輝いている。
創業七五周年、記念すべき年のカタログには、170・180・220SE・300SE・300SLと豪華な顔ぶれにプラスして、記念車220SEbが載せられているのである。
最後に諸元を紹介しておく。全長4875㎜、全幅1795㎜、全高1380㎜。車重1380kg。直六・OHC・2195cc・120馬力。4MT/4AT。最高速度172㎞。ゼロ400m加速14.0秒。