ルノー渾身のスポーツハッチバック ルーテシア ルノー・スポールトロフィー 試乗記

試乗レポート

ルノー・スポール(以下、RS)は、F1をはじめとするルノーのモータースポーツ部門が専用にチューニングを施したモデルのみに冠される名称だ。そのRSの中でも最高峰モデル、ルーテシアRSトロフィーにワインディングロードで試乗する機会を得た。

従来のルーテシアRSには、一般道での走行に最適なセッティングが施されたシャシースポール、サーキット走行にも対応できるシャシーカップがあった。このトロフィーは、シャシーカップのエンジン、シャシー、トランスミッションをはじめ各部の性能を大きく向上させている。

最高峰モデルであることはエクステリアからも一目瞭然。ホイールアーチ一杯に広がる18インチのホイールや、F1マシンのフロントノーズをイメージさせるエアインテークブレードにリヤのアンダーディフューザー。どれもレース車両の技術に裏打ちされたものだ。

エンジンはRSのみ与えられる特別仕様で、直列4気筒1・6ℓ直噴ターボを搭載。シャシースポール用をベースにさらにチューニングされ、最高出力は+20PSの220PS、最大トルクは+20Nmの260Nmを発揮する。

さらに、そのハイパワーを引き出す走行モードとローンチコントロールを持つ。走行モードは、燃費に配慮したノーマル、レスポンスをさらに高めたスポーツ、サーキット走行に適したレースがあり、レースはトラクションコントロールや横滑り防止といった電子制御がすべてカットされ、サーキット専用とも言えるので今回はノーマルとスポーツを試すことにした。

まずはノーマルモードを試してみると、シャシーカップ比で40%かためられたという足回りは、低速域では路面からの振動がダイレクトに伝わるので、助手席や後部座席の乗員はややつらい乗り心地になりそう。走り出してみると低回転から太いトルクが発揮されるので、軽くアクセルを踏んだだけでも弾かれたように一気に加速。登りに差し掛かっても加速は衰えず、そのパワーは余りあるほど。あらゆるシーンにおいて胸のすく加速を味わうことができる。また、ブレーキのタッチと剛性感も良好で、ブレーキング時におけるストレスは皆無。ステアリングはシャシーカップに比べてギア比が10%クイックなので、小さい舵角でも狙ったラインをトレースでき、誰にでも扱いやすくスポーティな走りを楽しめるだろう。

スポーツモードに切り替えるとクルマの特性が豹変する。走り出す前からアイドリングの回転数が上がり、キャビンに響くエンジン音がドライバーの気持ちを高ぶらせるとともに、準備万端だとクルマが主張しているようだ。スポーツモードでは、ミッションの変速スピードや加速レスポンスがよりクイックになるが、トラクションコントロールが作動するのでホイールスピンを起こすことなく、常に痛快な加速性能を見せてくれる。低速域ではかたいと感じされた乗り味も、速度が上がるにつれてしなやかになり路面との接地感が増し、コーナーでのロールも極めて小さくクルマとの一体感が強まった。

一方、減速時にはマイナスのパドルシフトを引き続けていると、クルマが最適なギアを選択するマルチシフトダウンを搭載しているので、カーブの立ち上がりはいつも鋭い加速になる。この賢いシステムが、意のままのドライビングをサポートする。

5ドアという利便性を持ちながら、サーキット走行も可能にするハイパフォーマンスを持ち、なおかつローンチコントロールのようなレース向けの装備を搭載しながら329万5000円はかなりのお手ごろ価格と言えるだろう。

Tagged