トーヨータイヤは5月9日、国立大学法人富山大学(所在地・富山市、齋藤滋学長)との共同研究により、二酸化炭素から高収率でブタジエンへ変換する触媒を開発し、タイヤの主原料であるブタジエンゴムの合成に成功したと発表した。
自動車タイヤの原材料はタイヤの品種によって割合は異なり、天然ゴム以外の約4割を占める合成ゴムのうち、石油由来原料であるブタジエン系ゴム(SBR、BR)はその約3割を占め、タイヤ業界では石油以外の天然由来の代替原料(資源)によってブタジエンゴムの実現と活用を模索する動きが活発化し始めている。
富山大学は、温室効果ガスの一つである二酸化炭素の再資源化を目的とした高性能触媒の開発を通じて、積極的かつ革新的に脱炭素社会づくりへの貢献に取り組んでいる。
また、トーヨータイヤでは、タイヤ材料の主成分として多用するブタジエンゴムの生成に、二酸化炭素そのものを石油由来の原料から代替適用できないかという課題をテーマにして、2016年より、富山大学学術研究部工学系・椿範立教授と検討と研究を重ね、共同で開発を推進。
今回は、地球環境に多大な影響を与える気候変動の主因の一つとされる、二酸化炭素からブタジエンを合成する道筋をつけることに成功したことで、従来の石油由来原料を用いた場合に比べ、生成過程での環境負荷(二酸化炭素排出量)の極小化に大きな成果が得られるほか、ブタジエンゴムへ重合するための出発原料として二酸化炭素を採用することによって、将来的に実際のタイヤLCA(Life Cycle Assessment)の観点で直接的に有効、かつ有力な素材として活用可能性が期待できる。
富山大学では、持続可能な社会をめざして次世代の物質変換技術を開発する学術的基礎研究、及びその社会実装をめざす応用研究を行なうことを目的とし、カーボンニュートラル物質変換研究センターを設置。今回の両社による技術開発もその活動の一環として、高価な貴金属を使わない安価な固体触媒の開発において十分な触媒性能が得られたもので、その収率は世界最高レベルになるとしている。
今後、量産化に向けた触媒システムの開発を進め、2020年代末までにその実用化をめざすほか、寄与率の大きなゴムや補強剤のサステナブル素材へ置き換えるための研究開発を進めると述べている。