会話するドライビングパートナー「パイオニア NP1」の実力をチェック!

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今年3月、パイオニアから発売された「NP1」は、新しいタイプのオールインワン車載器だ。カーナビ、次世代通信型ドライブレコーダー、クルマWi-Fiの機能をワンボディに搭載し、さらにOTA(Over The Air)で新機能を追加・アップデートしていくというもの。簡単に言うと、これまで別々に装着していたカーナビとドライブレコーダーが一体になり、さらに通信機能も備えることで新機能の追加も含めて進化していくというものだ。ちなみに5月のアップデートでは「Amazon Alexa(アレクサ)」に対応、9月29日にはコエステーションの技術を活用し、人気声優・悠木碧さんの声を含む4つの“コエ”が追加され、6種類の「コエ替え」が可能になった。それ以外でもバグ修正を含めて細かなアップデートが行われている。

多彩な機能を備えるNP1だが、本体はコンパクトで、やや大き目のドラレコといったところ。前方用と後方用にそれぞれカメラを備え、マイクやスピーカーも一体となっているから設置も簡単。配線も電源ケーブル1本のみという手軽さだ。フロントウインドウ上部に装着すれば本体側の準備はOKで、後はスマホアプリの「My NP1」と連携して使用する。

特徴的なのは、カーナビやドラレコでは当たり前のモニターがないこと。地図やルートの確認は連携するスマホアプリでも出来るが、音声だけで操作や検索・案内を行うのが基本で、車載型スマートスピーカーというイメージである。これは操作がラクというだけでなく、運転中にモニターを見る必要がないので安全にも役立つ。車載機器として、これは正しいコンセプトといえるだろう。

道に詳しいパートナーが助手席にいるイメージ

カーナビ機能を持つNP1だが、その最大の特徴は「音声だけで操作・案内するスマート音声ナビ」ということ。

通常のカーナビの場合、モニターに表示された地図画面と音声の両方でルート案内を行う。どちらかというと地図画面がメインで音声がアシストする形だ。このため「音声のみのカーナビ」と聞くと、不安になるのも無理はない。通常のカーナビは、地図画面と併用することを前提で音声ガイドを行っているからだ。

例えば複数の交差点が連続する道路を走行していることを想像してみよう。都市部の街中ではよくあるパターンだが、通常のカーナビでは「200メートル先を左です」といった案内をされるので、「もうすぐ左折だな」ということはイメージできる。しかし、その前後に複数の交差する道路がある場合、どの交差点を曲がればいいのか、地図を見ながらでないとよくわからない。

これに対しNP1は「2つ先の信号を左です」と、より具体的に教えてくれる。これならば、どの交差点を曲がるべきか明快だ。助手席にいる人が道案内をしてくれているような感覚である。「左側の車線がおすすめです」等、その先のルートも見越して最適な走行車線も教えてくれるから、スムーズにドライブすることが可能だ。

目的地の設定も、同様に音声で行える。施設名称をNP1に伝えれば最適なルートを探索してくれるし、例えば「近くのレストラン」といえば、複数の候補を挙げてくれるので、その中から選択すればOK。あとはNP1の指示に従って走行するだけである。

NP1を実際に試してみる

そんな未来型のNP1を、実際に社有車に装着してテストしてみた。取付自体は至って簡単で、アプリとの連携も問題なし。試しに「近くのコンビニを探して」というと近隣の3店舗を挙げ、何番に行きますか?ときちんと教えてくれた。

続いて自宅までのルートを設定し走行してみる。自宅近くの市役所を音声で目的地に設定して、案内スタート。首都高の入口や出口も分かりやすく案内してくれる事にまずは感心。全体のルートの概要や料金、目的地までの距離、所要時間まで細かく教えてくれるので、これならば、よく知らない場所へも安心して行けそうだ。

翌日はちょうど試乗会に出かけるところだったので、会場である千葉のロングウッドステーションとNP1に伝える。都内の首都高入口からアクアラインを渡り、館山自動車道から茂原街道を通るルートを教えてくれるはずだ。がしかし「すみません、まだ対応できません」とNP1。どうもマイナーな施設だとうまく検索できないようだ。

その場合は、スマホのアプリに入力すれば検索・案内できるはずだが、走行中だったこともあり、ロングウッドステーションを目的地にするのは断念。そこで、とりあえず途中にある東京湾アクアライン上のパーキングエリア「海ほたる」に目的地を変更することにした。現在地からの距離は35キロ程度である。

NP1に「海ほたる」と伝えると、しばらく考えた後に「直線距離で300何キロの場所に海ほたるが見つかりました」と教えてくれた。大阪あたりなのだろうか?ちなみにNP1によれば「海ほたる」は海鮮居酒屋で星4つ、予算は4000円程度だそうだ。

予想を超えたNP1の回答に驚愕していると、「ここに行きますか、ハイかイイエでお答えください」的なことを言う。人間だったらふざけるなといいたくなるが、NP1は真剣だ。イイエと答えて「海ほたるパーキングエリア」と言い直してみたら、今度は「まだ対応できません」との回答が。なかなか難しい…。仕方がないので、結局ナビ無しで行く。

帰路は編集部のある麹町を目指す。「カーアンドレジャーニュース」などと会社名を叫ぶも、対応できません、とNP1は予想通りの回答。そこでスマホのアプリから目的地設定し、いざ出発。今度はルート案内に不安はなく、途中、アレクサに天気予報やニュースなどを尋ねながら無事に到着することができた。渋滞中の気晴らしにアレクサは役に立つ存在だ。

今後の進化に大いに期待

時節柄、マスクをしたままでNP1に指示を出すこともあったものの、その音声認識能力は高く、聞き間違いは少なかった。音楽やラジオを掛けながらでも正確に音声を認識し、この点は非常に優秀に感じた。また目的地が正しく設定できれば、ルードガイドは懇切丁寧で高く評価できる。音声のみでも十分にカーナビとしての機能を果たせる。

ただ残念なのは、現時点では音声だけで検索できる施設にバラツキがあること。そこをスマホアプリで補っているのだが、住所や電話番号での検索も含めて、できれば音声のみで完結させて欲しいところである。走行しながらでも会話するように目的地が設定できるのも音声ナビのメリットといえるからだ。

本来であれば、もう少しテストを重ねてみたかったのだが、どういうわけかその後はNP1とアプリの連携が不安定になることも多かった。他の車載Bluetooth機器やアプリを入れているスマートフォン、ETCとNP1本体の位置関係なども関係している可能性があって難しいところではあるが、これも課題かもしれない。

そんなわけでNP1はまだまだ発展途中というのが実感だが、そこはアップデートで進化できるのもNP1の良いところ。今後もどんどん実力を高めていくはずだから、それも従来カーナビにないNP1ならではの楽しみといえるだろう。(鞍智誉章)

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