【スズキ・ソリオバンディット試乗記】後席乗員にも優しい乗り心地の快適トールワゴン

all 試乗レポート

ミニバンの使い勝手とコンパクトカーの扱いやすさを融合させたのがコンパクトハイトワゴン。その代表格といえるのがスズキ・ソリオだ。昨年12月にフルモデルチェンジしたその新型モデルは、先代モデルよりボディを一回り大きくし、後席の快適性や荷室容量を拡大したのが大きな特徴。といっても全長3790mm×全幅1645mmでコンパクトサイズであることには変わりはない。

車種構成としては標準の「ソリオ」と上級の「ソリオバンディット」の2本立てで、これは先代同様。今回はソリオバンディットに試乗した。

まず乗り込んで感じるのは、室内の広々感。特に後席は足元、頭上ともにスペースに余裕がたっぷりとあって心地よい。フロアも高くないので、乗り込む際も楽である。2列目シートは左右独立して簡単な操作でスライドできるので、荷物の積み込みも簡単だ。後席にもリクライニング機構やアームレストが装備されているので、快適に乗車することができる。この後席シートの座り心地の良さは、ライバルであるルーミー/トールよりも明確に上回る。

後席の空間は広大。センターアームレスト付でリクライニングも出来る
左右分割でスライドも出来るので、多彩な使い方が可能

 

運転席周りも視界が広く、ゆったりとしている。インパネは上部に張り出しが少なく直線基調となっており、視界を妨げないデザインとなっていることもポイント。着座位置が高めなこともあり、見晴らしは抜群だ。センターメーターを採用するが、表示も大きく視認性も問題ない。さらにバンディットにはヘッドアップディスプレイも装備されているので、この点で不安を感じることはないだろう。インパネ周りは余計な加飾などはなく、実用本位かつ直線基調でオーソドックスにまとめられているので、操作性も良好だ。

インパネ周りは直線基調でスッキリ。整然としていて視界も良好だ

 

長距離移動にも向く、ゆったりとした乗り心地

スポーティに見えるバンディットだが、乗り味はマイルド

走りは、乗り心地優先のセッティング。スポーティなルックスのバンディットだが、足回りはソフトでかなりマイルド。軽スーパーハイトを含め、最近のハイトワゴンやミニバンはやや硬めの乗り味のものが多いが、この新型ソリオのゆったりとした乗り味は少し前の世代の2Lクラスミニバンに近いイメージだ。

エンジンは1.2LのNAだが、これをモーターがアシストするマイルドハイブリッド。といってもモーターの最大出力は3.1ps。発進時はこの小モーターがエンジンをアシストしているはずだが、体感上はわからない。そこから先の加速も緩やかで、必要十分レベルである。これを穏やかで扱いやすいと見るか、モッサリしていて物足りないと見るかは好みによっても分かれるが、5人のフル乗車できつめの上り坂だと、かなり厳しいことは確かだ。加速時のエンジン音もやや大きい。

足回りは前述したようにソフトだが、意外なことにロールはよく抑えられていて気にならず、コーナーでの安定感は高い。ただし前後のピッチが大きく、またその納まりが遅い点は気になった。細かく前後に揺れるのではなく、大きな揺れが長く続く印象だ。路面がよく整備された高速道路ではそれほど感じなかったが、うねりのある一般道ではこのフワフワ感が終始残る。ステアリングも軽く、低速域では扱いやすいが接地感を伝えてこないタイプなので、カッチリとした操舵感を好むドライバーだと不安に感じるかもしれない。

反対に、家族での旅行など、ノンビリしたペースでの長距離移動には向いている。ステアリングやアクセル操作への反応も穏やかなので、気を遣うことなくリラックスしてドライブすることが可能だ。特に後席乗員の快適さは、座り心地の良いシートと併せ、このクラス随一といえるだろう。背の高いコンパクトカーというよりも、小さいミニバンと捉えたいモデルである。乗り心地も含めてミニバンが好きだが、3列目シートは不要というユーザーに最適な選択になるだろう。(鞍智誉章)

荷室は広くなり、実用度もアップ
Tagged