三菱ふそうトラック・バスは4月14日、同社製品のデザインプロセスを通じた品質の追求を紹介する「デザイン・エッセンシャルズ」を開催した。
このイベントは、フィジカル、プロダクション、アドバンスのデザインプロセスを紹介し、同社の商用車技術の完成を目指し続ける姿勢を示すものとなった。
フィジカルデザインは、日本人モデラーの伝統的な職人技術のほか、最新のデータモデリングによる3Dプリントや数値制御データ切削などの技術を紹介。クルマのデザイン形状を確定させるため、モデラーは紙上(2次元)のアイデアを、クレイ(工業用粘土)模型に具現化していく。デザイナーとモデラー、両者が理想の形を共有できるまで何度も繰り返す。
現在は工程の中で機械化できる部分も多くなったが、同社ではモデリング工程の大部分では時間を惜しまず手作業にこだわる。これによって、高品質なモノづくりだけでなく、ふそう車両の個性の表現を追求している。
プロダクションデザインでは、昨年10年ぶりにフルモデルチェンジされた小型トラック「キャンター」の実車を用いて、目で見たり手に触れたりする部分のデザインを紹介。フロントマスクに配されたブランドアイデンティティ「ブラックベルト」は、車両の色や形状変更が必要になった場合でも、ひと目でふそうのクルマとわかる外観上の特徴と、組み立てプロセスの効率向上を両立させるデザインとしたことが説明された。
さらに、大型観光バス「エアロエース」からキャンターまで共通のLEDヘッドライトを採用。車両開発の全プロセスにおける効率化だけでなく、開発総コストの削減にも貢献した。
アドバンスデザインは、デジタル化や自動化、高齢化社会への対応など、2040年の世界を想定したコンセプトを創造するチームだ。この日は、モジュールトラックや輸送用ドローンなど、未来的なコンセプトモデルが披露された。なお、このコンセプトは今後の開発計画を示すものではないが、これらのデザイン要素の一部は現行車にも反映されており、未来の完全自動運転トラック研究の一助にもなっているという。
また、仮想現実(VR)技術を活用した「バーチャル・デザイン・スタジオ」も公開。仮想空間で、内装と外装の比較検討を効率的かつ多角的に行えるようになった。現在はコロナ禍で日本と海外を行き来してのデザインの確認などできないため、今後はグループ企業での導入も進めていく方向性も示された。
イベントで挨拶したダイムラー・トラック・アジア兼MFTBC デザイン部長のベノワ・タレック氏は「ふそうのトラックとバスは単なる輸送車両ではなく、お客様の誇りを主張する美しい車体であることを目指している」と述べ、商用車においてもデザインの重要性は高いと説明した。