2020年10月に発売されたホンダのピュアEV「Honda e」に試乗させていただきました。8月から行われていた先行予約では、すでに生産枠以上の応募が殺到し、抽選になっていたほど注目の高いクルマですが、果たしてその実力やいかに。
■エクステリアは見た目買いしたくなるデザイン!
Honda eの最大の魅力と言っても過言ではないのが、エクステリアデザインでしょう。
コンセプトカーそのままのような、今までのクルマにはないキュートなデザインで、それでいてどこか往年のシティをリバイバルしたようなレトロ感も醸し出しているのがデザインの妙です。
EVだからこそ実現したこのスタイリングなのかもしれませんが、500万円前後となるコミコミ価格と少ない生産数のせいで、購入できる人も限られているのは惜しいところ。もし同じデザインで300万円前後のリッターカーとしてデビューするなら、かなりの人気車になると予想します。実際にそういうリクエストの声も多いそうです。
エクステリアの特徴は、その可愛らしいフォルムだけでなく、超小型化されたデジタルアウターミラーや、格納されるフロントドアハンドル、そしてクーペに見えるように配置されたリアドアハンドルなど、キュートさを損なわないようにボディのノイズになるような突起物を極力排したデザインになっているのもユニーク。
フロントとリアの顔つきも対称になるなど、デザインの見どころは豊富です。
■内装も従来のクルマの概念を超えた、まさに「部屋」!
スマホを鍵代わりに出来るNFCも採用した、目新しさに尽きないHonda eのインテリアに乗り込んでみると、これまた今までのクルマでは見たこと無いような独創的なインテリアデザインになっています。
まるでテーブルのような木目調のダッシュボードの上に配置された12.3インチのディスプレイが左右に2枚広がり、さらにはデジタル液晶メーター、そしてサイドミラーを映すモニターへ繋がり、一面に液晶が並ぶインテリアデザインにはエクステリア同様、驚かされました。
EVなので充電する間、車内で待つシチュエーションも多くなるので、「待ち時間を部屋にいるようにくつろいで楽しんでもらいたかった」と開発の方が語るように、2面の液晶モニターを使って様々な楽しみ方が用意されていました。
Honda eは車載の通信端末が用意されているので、クルマ自体がWi-Fiスポットになり、アプリをダウンロードすることでアクアリウムなどを楽しむこともできますし、さらにHDMI端子が用意されているので、AmazonFireスティックやChromecastなどの映像を楽しめる端末を差し込めば、大型モニターで映画館に早変わり。さらにはゲームハードもAC100VコンセントとHDMI端子で接続可能なので、まさに家のリビングに居るようにゲームや映像を楽しむことができます。
そしてそれをさらに居心地良くしているのが、まるでソファのようなファブリックを使ったシートや、サイドテーブルのような木目調のセンターコンソールの素材感が、従来のクルマのインテリアというより、家のインテリアコーディネートに近いためでしょう。
エクステリアだけでなく、インテリアも独創的なアプローチをしているHonda eは、見た目だけで欲しくなる魅力に溢れています。
個人的には、「走る・曲がる・止まる」といった、100年前から続いている自動車の価値観だけでは、もはや購買意欲には結びつかず、Honda eのようなこうした新しい価値が「欲しい」という欲求に直結すると思っています。移動手段としてだけなら、カーシェアやレンタカーで十分なわけですから。
■取捨選択で犠牲になった部分も
ここまでは絶賛のHonda eですが、ネガがないわけではありません。
前席までの質感や雰囲気は良いですが、リアやラゲッジに関してはコンパクトカーの標準以下の広さと質感で割り切りを感じます。
後席足元もかなり狭いですし、シートの背もたれも分割可倒できない一枚のもの、さらに平板で座り心地は良いとは言えません。
ラゲッジスペースもミニマムでフロアも高いので後席使用時の容量はかなり少ないですが、2名乗車と割り切れば、後席を倒した際には565Lの容量となります。
実質、2名乗車のシティコミューターとして考えれば、実用性に不満はないでしょう。
内外装は動画でもインプレションしています!
■走りは痛快!ただし最大の問題は…
リアモーターでRRレイアウトのHonda eは、前後の重量配分は50:50、しかも重いバッテリーを床下に配置しているので、走りは痛快そのもの!
最小回転半径は4.3m、まさにゴーカートと言ったクイックなステアフィールと、どっしりとしたフロアの剛性感は、国産車ではちょっと味わえないような楽しさに溢れています。それ以外でもHonda eの走りの楽しさの理由として、EVならではのリニアなトルクの立ち上がりも挙げられるでしょう。
床まで踏んだ際の加速感は、まさにスポーツカーさながらで、高速の合流でも静かに力強くあっという間に法定速度まで達してしまうほど。
見た目のキュートさとは裏腹に、かなりスポーティな走りも得意なHonda eは、羊の皮をかぶった狼的な魅力もありますね。高速などの中間加速でもモーターならではの踏んだ瞬間からの100%のトルクで、下手なスポーツカーでもぶっちぎれるほどの加速を見せてくれます。
ただし、そんなHonda eでも最大の問題はバッテリー容量が少ないことでの航続可能距離が短いこと。
16インチタイヤ&ホイールを履くベースグレードで283km、17インチを履くAdvanseでは259kmしかありません。しかも最大でこの距離なので、エアコンを作動させたり、アクセルを踏み気味だともっと航続距離は短くなります。
東京青山のホンダ本社で満充電の状態から、さいたま市までで80%まで減っていました。
その後、周囲の30分程度の試乗で65%・航続可能距離125kmまで減っていたことを考えると、ちょっと航続距離には不安が残ります。
とは言え、高速充電30分で80%程度まで回復できるとのことなので、充電スポットさえ確保して30分我慢すれば200km程度は走れそうです。
それを不便と取るか、楽しみのうちと考えられるかで、EVとの付き合い方も変わりそうですね。
いろいろ新しいクルマとの付き合い方を提案しているHonda-eですが、生産台数がいかんせん少なく、年間販売計画は1000台のみと、購入できる人の数も限られています。
2020年の第一期は抽選販売となったようですが、今後も狭き門になると予想されますので、気になっている方はお早めにホンダディーラーで商談されてみてはいかがでしょうか。
走りのインプレッションは動画でも公開中!
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[ドラヨス]
月間100万PVのブログ「ワンダー速報」と、登録者数14万人、月間440万再生以上(2020年12月29日現在)のYouTubeチャンネル「ワンソクtube」の管理人。
クルマ買うチューバーを自称し、2か月に1台のペースでクルマを購入してレビューするスタイルが好評。
ワンダー速報ブログ:https://wansoku.com/