レクサスの走りを象徴するFRスポーツセダンとして〝運転する愉しさ〟を追求してきたIS。先日行われた大規模なマイナーチェンジでは、内外装デザインの刷新をはじめ、世界各地で走り込みによって走行性能を鍛え上げ、さらなる熟成が図られた。
新型ISのボディサイズは、全長4710mm(従来比+30mm)×全幅1840mm(+30mm)×全高1435mm(+5mm)で、ホイールベースは従来と不変の2800mmとなっている。
エクステリアは、上下方向のプレスの動きに合わせて金型が横方向からスライドする機構を追加し、レクサスならではの緻密で立体的な造形を可能とする「寄絞り(よせしぼり)工法」を世界で初めて開発した。
これによりラゲージ後端部のキャラクターラインにおいて、高精度でよりシャープな造形を実現させたという。拡大された全幅と大型化したフロントのスピンドルグリルが相まって、よりワイド&ローなプロポーションが強調されている。左右リヤコンビランプをつなぐ横一文字のデザインなど、マイナーチェンジを経て、見た目はよりスポーティでスマートな雰囲気を纏っている。
インテリアは、インパネ上部のモニターが10.3インチタッチディスプレイになったことと、電動パーキングブレーキの採用以外、大きな変更はなし。センタークラスターの造形はTNGA採用以降のモデルと見比べるとやや古臭さは否めず、エクステリアとは異なり新鮮味に欠ける印象だ。
パワートレーンは、V型6気筒3.5L「IS350」、直列4気筒2.5L+モーターのハイブリッド「IS300h」、 直列4気筒2.0Lターボ「IS300」の3タイプはそのままで、出力やトルクの変更は無い。ただ、IS300hはアクセル開度に対するエンジンとモーターの駆動力制御を変更。IS300は、ドライバーのアクセル開度などから走行環境を判定し、シーンに応じて適切なギヤ段を設定するアダプティブ制御を採用し、よりドライバーのアクセル操作や意図に対してリニアなレスポンスを実現させたという。
■乗り心地と剛性感の向上はフルモデルチェンジ級
まずはIS350から試乗。パワートレーンに関して特に改良点はアナウンスされていないが、NAエンジンならではの高回転までの淀みない吹け上がりは大きな美点だ。最高出力318PS、最大トルク380Nmのピークはいずれも高回転域で、特に高速域での再加速などでもう一段階強い加速が欲しいときの走りは頼もしい。ライバルとなる欧州各メーカーはダウンサイジングが進むミドルサイズセダンにあって、V6 3.5Lというユニットは今や貴重な存在だ。
チューニングの見直しが図られたIS300hとIS300は、いずれもアクセル操作のレスポンスがリニアになった。ただ、IS300のターボエンジンにもう一歩力強さが加われば、より爽快感のある走りを得られたのではと感じた。
すべてのモデルに共通しているのは、乗り心地と剛性感の向上だ。右左折や車線変更後の車両の揺り戻しは少なく、どっしりとしたコーナリングでカーブでの走行も安心感の高さは、まさにスポーツセダンの本領だ。
乗り味は専用の足回りを備えるF SPORTとversion Lでは味付けが異なるが、フラット感が高く、路面の凹凸もきれいに吸収するので、キャビンに不快な突き上げや振動を伝えない。マイナーチェンジでサイドラジエーターサポートの補強、フロントサイドメンバーのスポット打点追加、Cピラーからルーフサイドにかけての構造最適化などによりボディ剛性を高められたことが功を奏している。この日はLSを試乗してからISに試乗したが、TNGAを採用するLSと比較しても設計年度の古さを感じないレベルに仕上がっていたのは驚きであった。この部分はマイナーチェンジの域を超えた改良点と言える。
走行モードは他のレクサスと同様に、エコ、ノーマル、スポーツ、スポーツ+を設定。足回りやアクセルレスポンスはノーマルでも十分だが、スポーツ以下だとハンドルの操舵感の希薄さが気になった。スポーツセダンであるならば、もう少し重厚な操舵感を求めたいところであった。
デザインのリファインだけでなく、走行性能にも大きな手が加えられたIS。現行モデル登場から7年と、フルモデルチェンジを期待されたタイミングでのマイナーチェンジであったが、その完成度の高さは試乗を通して感じられた。