ヤリス、ハリアー、フィット、ノート、レヴォーグなど、新型車が続々と登場した20年。しかし、始まりもあれば終わりもある。華々しくデビューする新型車の一方で、ひっそりと生産を終えるモデルも数多い。というわけで、今回は2020年に生産を終了した(+生産終了が決定している)モデルを一挙に見てみよう。
・レクサス GS
2020年8月生産終了。2012年発売の4代目(国内では2代目)モデルが最終となった。
LSに次ぐ上級4ドアセダンだが、この「上から2番目」というのは難しいポジション。トヨタブランドでいうとクラウンに次ぐ「マークX」と同じ立場だが、こちらも一足早く19年に終了している。どうせ買うなら、ちょっと頑張ってLSに、という人も多かったのではないだろうか。
またミドルクラスというサイズ感も微妙なところ。FR駆動のため、大きめのボディながら室内がそれほど広くないのは弱みだ。同じFRセダンでもVIP送迎メインのLS、パーソナルカーのISなら許容されても、GSの立ち位置だと中途半端。
結局のところ、セダンが主流だった時代には存在意義があったGSだが、セダンそのものの販売ボリュームが縮小した現在では居場所がなくなってしまったというところ。GSは「グランドツーリング・セダン」の略だが、このカテゴリーはいまではSUVが主流。生産中止も止むを得ないだろう。
・トヨタ タンク
16年に登場した小型トールワゴン。「ルーミー」と姉妹車だが、ルーミーのマイナーチェンジに伴って統合され、20年9月終了。発売時の販売店はタンクがトヨペット店とネッツ店、ルーミーがトヨタ店とカローラ店だった。月販目標台数はタンク、ルーミーとも3750台。
18年の年間販売台数はルーミーが8万6330台、タンクが7万3734台。19年はルーミーが9万1650台、タンクが7万4518台で、ルーミーの方がやや上回っているが、タンクも立派に売れている。つまり販売不振で終了ということではない。20年5月のトヨタ販売店の販売チャネル統合で、専売車種として無理に2モデルを作り分ける必要がなくなったということだ。
・ホンダ シビック(セダン)
ハッチバックは販売中だが、セダンは20年8月に生産終了。最終となった10代目シビック(セダン)は17年9月の発売なので、わずか3年での退場だ。20年1月にマイナーチェンジしたばかりなので、ちょっと意外な終了となった。
クルマそのものの出来は良かったものの、セダン不振の中でも特に厳しいミドルサイズであったことが苦戦の大きな要因といえそう。が、そもそも登場時から「デカい、高い」と言われ、日本の多くのユーザーがイメージするシビック像と乖離していたことも厳しかった理由だろう。
・ホンダ ジェイド
20年7月終了。2015年に乗用ミニバン「ストリーム」の実質的な後継車として登場したモデルだが、発売当初から販売は大苦戦。あまりの不人気ぶりが話題になったほどだ。18年には2列シートのステーションワゴン仕様も追加されたが、状況は変わらず。
そもそも先代ストリームの後半期の時点で、3列シートにヒンジドアの乗用ミニバンそのものが衰退していたのだから、その後に登場したジェイドの苦戦は無理もないところ。そのうえストリームより大きく、価格も高かったのでは、ミニバンユーザーから見向きもされなかったのも仕方のないところだ。
・ホンダ グレイス
20年7月終了。ホンダでは久々の5ナンバーサイズのセダンとして14年12月に登場したモデルで、当初はハイブリッド専用車として発売、15年にはガソリン車も追加された。
発売当初の勢いはそこそこ良く、「セダン復権か?」とも言われたものの、人気は長続きせず、一巡した後は低迷。既に生産中止が公表されているプレミオ/アリオンを除けば、現在国内市場で残っている5ナンバーセダンは、継続販売中のトヨタ「カローラアクシオ」のみという状況を考えれば、その需要の少なさも想像できる。もはやモデルそのものの良し悪しではなく、「小型セダン」というだけで敬遠されてしまうのが実情だ。
・スズキ バレーノ
インドのマルチ・スズキで製造されるBセグメントのコンパクトカー。インド生産で日本へ輸入されるというのは珍しく、というより日本初。ということで16年の登場時はちょっと話題になったが、バレーノが話題になったのはその時だけで、それ以降、存在感はさっぱり。街で見かけることも稀なレア車だった。
実用的だが、無国籍風のあまり特徴のないオーソドックスなスタイルのコンパクトハッチバックで、車格としては「スイフト」と同じBセグメント。となれば、わざわざバレーノを選ぶ理由は希薄だろう。スイフトより少し室内は広く居住性では優位だが、なにせ知名度の低さゆえ、忘れ去られた存在に。インド製だからダメだったというのではなく、クルマのキャラクターそのものが日本向きではなかったといえそうだ。20年7月販売終了。
・スズキ SX4 S-CROSS
ハンガリー生産のコンパクトクロスオーバーSUV。欧州市場では人気が高いモデルで、現在も生産継続中。一方、日本では15年に登場し20年6月に終了となったが、先代の「SX4」を含めて最後までマイナーな存在だった。
Sクロスは現行エスクードとプラットフォームを共用するが、オフロード寄りのエスクードに対してSクロスはどちらかといえばハッチバック寄りのキャラクター。しかし、スズキ独自の四輪制御システム「ALLGRIP」を搭載するなど、SUVとしての実力も高かった。
走行性能や居住性なども評価が高いモデルだったが、19年のマイナーチェンジまで先進安全装備の類がほとんどなかったのが大きな弱点。また欧州仕様車の生産で工場のキャパが一杯で、日本仕様は納期が読めないこともあってスズキ自体が推販にあまり積極的でなかったことも低調に終わった要因となった。
・SUBARU レガシィB4
レガシィはスバルを代表するモデルだが、その中心だったツーリングワゴンは既に海外専売車となり、国内はレヴォーグにバトンタッチ。残ったのはセダンの「B4」とクロスオーバーSUVの「アウトバック」。で、アウトバックは販売継続中だが、不振のセダンは一足早く終了。結果、国内に残るレガシィはアウトバックだけになってしまった。
最終モデルのB4はレガシィとしては6代目になるモデルで、14年の登場。全長4800×全幅1840×全高1500mmとやや大きいが、2.5Lエンジンの搭載で走りは悪くない。しかし、SUV人気全盛の中で、販売は苦戦。一時はパトカーにも採用されていたので、目にした人も多いはずだが、人気回復にはつながらなかった。20年7月で終了。
・SUBARU BRZ
20年7月に受注終了。2012年にトヨタとの共同開発で誕生した2ドアクーペで、トヨタ「86」とは兄弟車となるが、86より先にフェードアウトとなった。ちなみに19年の平均月販は108台。トヨタ「86」は386台。販売ボリュームの小さい2ドアクーペで、さらにモデル末期とはいえ、ちょっと厳しい数字だ。
2代目モデルは既に米国仕様車は発表されており、21年春の発売予定。ただし国内への導入は未発表なのが気になるところではある。
・トヨタ ポルテ/スペイド
20年12月終了。スライドドアを持つ小型トールワゴンで、助手席側はピラーレスで1枚の大開口電動スライドドアとしているのが大きな特徴。初代は運転席側もヒンジドア1枚の3ドアハッチバックだったが、12年に登場した2代目は運転席側後席にもドアが加わり2枚ドアになった。同時に姉妹車としてスペイドも加わった。
2004年の初代登場当時は高い人気を誇ったが、その後、似たようなコンセプトのタントをはじめ、軽スーパーハイトワゴンの充実ぶりに押されて徐々にトーンダウン。そして同じトヨタからルーミー/タンクが登場したことで事実上のバトンタッチ。大開口スライドドアは確かに便利なのだが、必要とするユーザー層の絶対数は多くないのか。静かに終了となった。
・トヨタ プレミオ/アリオン
まだ販売はしているが、既に21年3月での生産終了が決定済。現行モデルは07年の発売だから、13年という長命のモデルとなった。もともとプレミオはコロナ、アリオンはカリーナの後継車種として誕生したモデルで、初代コロナ(1957年)から数えると60年以上という長い歴史を持つものの、時代の流れには逆らえなかった。
最終となる現行モデルは、オーソドックスな5ナンバーセダンとして、人気があるとは言えないが、安定した需要を誇った。これが13年もモデルチェンジしなかった大きな理由でもあり、これまで廃盤にならなかった理由でもある。ただカローラが現行モデルとなってボディが拡大されたことで、従来のプレミオ/アリオンのポジションをカバーしており、役目を終えることとなったといえそうだ。
・トヨタ プリウスα
プレミオ/アリオンと同じく、これも21年3月で生産終了予定。先代プリウスをベースにしたステーションワゴン/ミニバンで、11年発売だから約10年のロングライフとなった。
発売当初は大ヒットとなったモデルだが、当時はまだハイブリッド車のラインナップが少なかったことも大きな理由だった。が、13年8月にカローラフィールダー、14年2月にはヴォクシー/ノアにHVが設定されるなどした結果、ステーションワゴンもミニバンもHVの選択肢が充実。プリウスαを積極的に選ぶ理由も薄れてしまった。ベース車の古さを考えると、長寿を全うしたといえるだろう。