アルプスアルパインは10月27日、高まる位置測位ニーズに対応するために、Bluetooth Low Energyチップを使用した高精度位置測位システムの評価キットを11月より提供開始すると発表した。
昨今、IoT(Internet of Things)活用において、自動車をはじめ生産や物流など幅広い市場において対象物の位置を高精度に測位するアプリケーション需要が高まりつつあり、特に車載機器においては、スマートフォンを核としたデジタルキーなどによるMaaS(Mobility as a service)の実現には、個人認証に加え、対象装置の位置特定は欠かせない技術となっている。一方で、これまでの位置測位にはバーコードやICタグなどによる物理的なスキャニング行為が必要になったり、GPSやWi-Fiなどを利用した高価なシステム構築が必要になるなど、実用性や開発リソース負荷などさまざまな課題があった。
アルプスアルパインでは、上記の課題に対応するために、これまでも「物流トラッカー」などSub-GHz帯を利用した位置測位モジュールの製品化に取り組んできたが、現在では新たにBluetooth Low Energyチップを利用した高精度位置測位技術の開発を進め、2021年の製品化および量産化を目指しており、それに先駆けて今回、高精度位置測位システムを利用した評価キットを開発し11月より提供を開始する。
同社の高精度位置測位技術は、2018年5月に買収を発表した米国・Greina Technologies, Inc.(RF Ranging, Inc.)が独自に開発した位置検出アルゴリズムを採用。電波到来角度(AoA:Angle of Arrival)/伝搬時間(ToA:Time of Arrival)の同時測定が可能なため、高精度な測位が可能なほか、位置測位には多くの市場で導入実績のあるBluetooth Low Energyチップを使用しており、Bluetoothを利用している既存システムへのデータ通信が容易なため、社会実装性に優れたシステムとなっている。さらに、同開発キットに搭載しているチップは車載市場や民生および産業機器市場で豊富な実績とセキュリティ技術を持つNXP Semiconductors社の「KW38ワイヤレス・マイクロコントローラ」を採用しており、一つのチップを用いて測位とBluetoot Low Energy通信を利用することが可能となっている。なお、Bluetooth 5.1において電波到来角度(AoA)のオプション機能は既に標準化されており、現在はBluetooth SIGへの参加を通して、伝搬時間(ToA)ならびによりセキュリティ性の高い測距技術の標準化にも取り組んでいる。
アルプスアルパインでは、本高精度測位技術をいち早く確立、評価キットを市場へ提供することでセット機器の高付加価値化を実現させ、車載市場やEHI(Energy, Healthcare, Industry)市場における安心・安全かつ利便性に優れたユーザーエクスペリエンスの実現へ貢献していくと述べている。
【高精度位置測位システム 評価キット 概要】
<主な特長>
独自のAoA/ToAアルゴリズムにより小型かつ高精度な位置測位を実現
- 位置測位およびデータ通信は汎用性に優れるBluetooth Low Energyチップを採用
- 最小1つのAnchor(受信装置)によりTag(送信装置)で位置測位が可能
- Bluetooth® Low Energyスタックを内蔵しており測位結果とデータ通信が可能
<主な用途>
- 車載市場:スマート電子キー、デジタルキー
- 産業市場:生産装置、搬送用機器(搬送ロボット、倉庫内可搬資材など)