日産自動車は9月29日、自然災害などによる停電時に電気自動車の大容量のバッテリーから非常用電力を供給できる、災害復旧支援を目的とした電気自動車のコンセプトカー「RE-LEAF」を欧州で発表した。
災害対策における緊急対応(emergency REsponse)、人道支援(humanitarian REcovery)、そしてコミュニティの強靭性(REsilience)の3つの「RE」を由来として名付けられた「RE-LEAF」は、量産電気自動車「LEAF」をベースとしており、同車に搭載されている電力供給機能を活用して製作されたコンセプトカー。瓦礫など障害物の多い災害時の悪路走行を可能とする改良を加えるとともに、簡単に電気を取り出せるよう、クルマのフェンダー部分に耐候性の高い電気ソケットを取り付け、搭載する大容量リチウムイオンバッテリーから110~230Vの電気機器へ電力の供給を可能とした。また高められた悪路走破性により、被災地域を自由に移動し、復旧作業に必要な照明や作業ツールの電源としてだけでなく、通信や冷暖房など、被災者が必要とする機器に電力を供給する。
ベースとなった「リーフ」では、大容量バッテリーに貯めた電力を走行時に使用するだけではなく、PCS(Power Control System)を介して建物や電子機器に電力を供給することができるのに加え、電力系統を安定化させるV2G(Vehicle-to-Grid)技術によって、再生可能エネルギーの有効活用や発電施設の負荷を低減することも可能としている。これらの機能は、電気自動車を家庭や社会に電力を供給する移動可能な蓄電池としての活用、また電力需給の安定化への貢献により、将来の分散型エネルギーモデルの構築に寄与することを目的とした「ニッサンエナジー・シェア」という考えに基づいている。日本では2011年から自然災害による停電時の非常用電源、または移動手段として「リーフ」が活用されており、現在では国内の60を超える地方自治体と「災害連携協定」を締結し、災害の復旧支援のために電気自動車を活用するプログラムを進めている。
<コンセプトカー「RE-LEAF」>
車体には、古代ギリシャ語で「electron(電子)」の意味をもつ「琥珀」にちなんで、琥珀色(アンバー)のアクセントがあしらわれている。瓦礫や障害物のある悪路走行を可能とするため、最低地上高を225mmに引き上げ、専用のアンダーガードで車の床下を保護しているほか、17インチのオールテレインタイヤと専用のオーバーフェンダーを装着している。さらにルーフに取り付けられたLEDライトバーを琥珀色に点滅させることにより、車両の接近を歩行者などに知らせる。
大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載し、複数の電気機器に安定した電力供給を可能としている。簡単に電気を取り出せるよう、フロントフェンダーに2つの耐候性外部コネクター、トランクには3つのコンセントを装備しているのに加え、災害復旧支援活動に必要な機器を収納できるよう後部座席を取り外すとともに、前部座席とラゲージスペースをケージにより分離した。ラゲッジスペースには32インチモニターと引き出し式デスクおよび通信機器を装備することで、被災地における復旧支援活動をサポートする。
<「RE-LEAF」仕様>
- ベースモデル:日産リーフ テクナ(欧州仕様)
- タイヤ:BF Goodrich Baja オールテレイン 225/65R17
- ホイール:Compomotive MO5 8” x 17”
- ホイルアーチ:カスタムGRPコンポジット40mmワイドアーチ
- 地上高:225mm
- 全幅(前/後):1830mm/1890mm(1740mm/1760mmから拡張)
※車両製作はイギリスを拠点とするエンジニアリングおよびモータースポーツ会社であるRJNが行い、プロジェクト管理はGTA Global Ltd.が担当した。