文:岩田 一成(キャンピングカーライフ研究家/ライター)
キャンピングカーには、乗ってみないとわからない楽しさがある。キャンプや旅、趣味のツールとしての利便性は言うまでもないが、キャンピングカーならではの“出会い”も大きな魅力のひとつだ。
ビルダーが主催するキャンプ大会やSNSのオフ会、オーナーズクラブのミーティングなどで、多くのキャンピングカー仲間を得られるのをはじめ、旅先でも地元の人やキャンピングカーオーナーと出会うチャンスが多い。
新たな出会いが広がれば、キャンピングカーライフはもっと楽しくなる。
仲間がいれば、楽しさは10倍!
宿泊先を予約せずに気ままに旅ができること、キャンプでテントを張る手間がなく設営・撤収が楽なこと、趣味やアウトドアアクティビティのベース基地にできること、災害時のシェルターとして活用できること、移動事務所として仕事にも役立つこと……。
キャンピングカーの使い方は、乗り手のライフスタイルによって多種多様。遊びや仕事から災害時まで、幅広い用途で利用できる柔軟性、それこそがキャンピングカーの最大の魅力だ。
そうした実用面でのメリット以外に、キャンピングカーには他のクルマにはない大きな魅力がある。それは、キャンピングカーならではの“出会い”だ。ビルダー主催のキャンプ大会、SNSやブログに端を発したオフ会、キャンピングカー雑誌のユーザーミーティングなど、キャンピングカーに乗っているとオーナー同士が知り合える機会が多い。
キャンピングカーという共通の楽しみを持っている者同士、初対面でもすぐに打ち解け、日本中にどんどんと仲間が増えていく。
年齢や職業、住んでいる場所も異なる、本来知り合う機会のない人たちと、キャンピングカーを通じて友達になれるのが、キャンピングカーならではの大きな魅力。ここでは、キャンピングカーだからこそできる出会いや楽しみ方について、具体的に紹介していこう。
ビルダー主催のキャンプ大会
キャンピングカー購入後の楽しみのひとつが、キャンピングカービルダー主催のキャンプ大会だ。
多くのビルダーでは、自社で車両を購入したユーザーを対象としたキャンプ大会を定期的に開催している。ビルダーによって規模は数十台から数百台まで様々だが、キャンプ場にキャンピングカーユーザーが集まって、ユーザー同士で交流したり、のんびり過ごしたりするのが基本スタイル。ステージイベントやゲーム、抽選会などの催しが用意されていることも多く、大人も子供も楽しめるように各ビルダーが趣向を凝らしている。
集まりが苦手な人や人見知りの人でも気軽に参加できるのが、ビルダー主催のキャンプ大会の特徴だ。参加者同士、同じビルダーのキャンピングカーに乗っているという共通項があるので、初対面でも話が弾みやすく、キャンプ大会で知り合った仲間とプライベートでも遊ぶような関係に発展するケースも多い。
キャンプをしたことのない初心者でも、スタッフや仲間がサポートしてくれるので、キャンプデビューの場所としても最適。実際に、キャンプ大会で初めてキャンプにチャレンジしたユーザーや、普段はキャンプをしないけど1年に1回はキャンプ大会でキャンプを楽しむというユーザーも多い。
同じ車種に乗るユーザーと情報交換ができるのはもちろん、普段ゆっくり話す機会のないビルダーのスタッフと交流できるのもメリット。愛車で気になることがあれば、キャンプ大会の会場でアドバイスをもらったり、修理を依頼したりすることも可能だ。
ビルダー主催のキャンプ大会は、キャンピングカーの遊び方、楽しみ方を体験できる貴重な機会。キャンピングカー仲間やスタッフと交流を深められるチャンスなので、ぜひ積極的に参加してみよう。
SNSのオフ会も盛ん
多くのキャンピングカーオーナーがブログやSNSを活用しており、それを通じて観光スポットや車中泊スポット、DIYなどの情報交換が活発に行われている。
また、SNSに端を発したオフ会や、SNSに数多く存在するキャンピングカー・コミュニティのミーティングが各地で開催されるなど、ユーザー同士のリアルな交流も盛んだ。
こうした集まりに積極的に参加することで、キャンピングカーという共通の楽しみを持つ多くの仲間が得られる。それによって、遊びの幅が広がり、クルマや旅に関する情報も共有できる。住所や年齢、職業の垣根を越えた仲間が集まってキャンピングカー談議に花を咲かせるだけでも楽しいが、旅の途中で、こうした集まりで知り合った全国のキャンピングカーの友人を訪問して、地元のお勧めスポットや穴場スポットを案内してもらえるのもうれしい。
実際、ユーザーに「キャンピングカーに乗ってよかったこと」を尋ねると、「一番良かったのは、友達が増えたこと」と話す人が非常に多い。家族とのキャンピングカーライフも楽しいが、共通の楽しみを持つ仲間が増えれば、キャンピングカーの楽しみ方はさらに大きく広がる。
手を振り合うのも何かの縁
キャンピングカーには、すれ違ったときに手を振ったり手を上げたりして挨拶を交わす習慣がある。
ツーリングのバイクがピースサインを交わし合うのと同じように、キャンピングカー同士がすれ違ったときにお互いに手を振り合って、束の間の“出会い”を楽しむ。人間関係が希薄と言われる現代だからこそ、いつまでも続いてほしい素晴らしい習慣だ。
子供が笑顔で大きく手を振ってくれたり、助手席の奥さんが身を乗り出すようにして手を振ってくれたり、運転席の窓から手を出して挨拶をしてくれたり……。ほんの一瞬の心の触れ合いだが、旅を終えて何年か経っても、「あの時のオーナーさんは笑顔で手を振ってくれたなぁ」「子供が身を乗り出して大きく手を振ってくれたなぁ」など、挨拶を交わしたクルマのことはよく覚えている。
同じ楽しみを持つキャンピングカーユーザー同士が、旅先の見知らぬ土地で自然に手を振り合う。「キャンピングカーに乗っていてよかった」と、心から思う瞬間だ。
出会いは旅のスパイス
筆者はキャンピングカーを使って日本中で累積1000泊以上の旅をしてきたが、そこでも数えきれないほどの素敵な出会いがあった。
キャンピングカーに乗っていると、それが洗車場であれ、高速道路のサービスエリアであれ、道の駅であれ、「キャンピングカーいいですね」などと見知らぬ人に声をかけられることが多い。
道の駅の朝市で、地元の農家の方に「キャンピングカーいいね~! こんなクルマで家族と旅をするのが、憧れだね~!」と声をかけられ、大きなビニール袋一杯に入ったフルーツトマトを「これ、移動中に食べな」と持たせてくれたこともあった。これも、普通車にはないキャンピングカーならではの出会いのひとつだろう。
また、北海道に10年以上も親戚のようなお付き合いをしている友人夫婦がいるが、彼らとの出会いもキャンピングカーがきっかけ。北海道のキャンプ場で家族とキャンプをしているときに、たまたま隣り合わせのサイトになり、「もしよかったら、夕食後にお話しませんか」と誘われてサイトにお邪魔したのが付き合いの始まりだった。
それから、毎年夏に北海道を訪れるときに再会して、自宅に泊めてもらったり、一緒にキャンプをしたり、お勧めの観光スポットやグルメスポットを教えてもらったり、旬の食材を送ってもらったりと、10年以上も親密な付き合いが続いている。
年齢も、職業も、住んでいる場所も違う、普通では出会う機会のない人たちと知り合えるのは、キャンピングカーがあるからこそ。行った先々での地元の人との出会い、それぞれのスタイルでキャンピングカーライフを楽しむユーザーとの出会い、同じように旅をしているライダーや自転車ツーリストとの出会い……。過去のキャンピングカー旅を振り返って思い出すのは、いつも旅先で出会った人たちの笑顔ばかり。
キャンピングカーの旅は、まさに「出会いの旅」なのだ。
プロフィール
岩田 一成(キャンピングカーライフ研究家/ライター/HOT MIND代表)
1971年東京都生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業・ 8年間の出版社勤務を経て2003年3月に独立。同年4月より、編集工房『HOT MIND』代表として編集業務の請負を開始。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に様々なジャンルの雑誌・ムック製作に携わる。取材・インタビュー経験は3000件以上。座右の銘は、『商人ではなく、常に最前線に立つ職人であれ!』。
関連リンク
《 本稿は新聞「週刊Car&レジャー」2694号(2019年10月)に掲載 》