シェルビーコブラはモンスター

コラム・特集 車屋四六

多くの国に独立記念日がある。が、建国の年月とは異なる。
人類文明発祥の地といわれる中国も、中華人民共和国建国宣言は1949年。同様にインド=47年、エジプト=52年、古くはフランス=1789年、ロシア1791年である。

宣言通りなら日本は世界最古…天皇即位が約2678年前=BC660年が建前だが、相当に古いのは間違いない。日本的年号は「皇紀」だが、昭和15年が皇紀2600年で、国中が御祝いムードに溢れ、提灯行列や花電車が走るのを見たのは、私が幼稚園児の頃だった。

で、日本建国記念日は神武天皇即位の2月11日を紀元節と定め祝ったが、敗戦後の47年にGHQの命令で廃止された。が、66年に建国記念日として復活した。

さて世界最強を自負する米国は、東部13州が統治国英国に対し独立宣言をしたのが1776年だから242年前である。で、独立記念日の7月4日の前後数日はバーゲンセールが盛んになる。

それを知らずに、1994年ピッツバーグでハートマンのショルダーバッグを買ったら、三割ほど安いので聞いてみれば独立記念日というので、更にガーメントバッグと、カミさんにコーチのハンドバッグを買い足した。当時日本でコーチは無名だった。

短期間で大国になった米国は「力は正義なり」という思想があるようで、それが20世紀に花開いた。が、近頃ではその正義が迷惑という国もあるのだが、短期間で発展したせいで、米国人には歴史ある文化を持つ欧州に憧れを持つ人が多く居る。

20世紀、米国は世界一の自動車生産国になるが、欧州車に興味を持つ人も居て、特にスポーツカーでは英国車が人気だったが、WWⅡが終わり更にスポーツカー熱が高まり、英車が続々と上陸した。

が、大型大馬力に馴れた彼等の中には、パワー不足を感じる者も居た。事実、人気のMGやトライアンフなど一流ブランドではあったが、一緒に走れば米国製大衆車の方が速かった。

力の信奉者の一人にキャロル・シェルビーなる男が居たが、59年のルマン24時間にアストンマーチンで優勝というのだから、そこらにいるマニアではない。

彼は、英国ACカーズ社長に「米国製V8載せれば人気が出るだろう」と持ちかけた。ACは1904年創業の乗用車メーカーだが、WWⅡ後スポーツカーのACコブラを開発したが人気が出ない、それに目を付けたのである。

62年、米国のシェルビー工場製の、フォードV8・4330cc164馬力搭載のACコブラは評判よく75台を完売。次の4220ccの260馬力~300馬力搭載車も654台が売れた。

そして力を誇示するコブラ427が登場する。エンジン容積が427立方吋のフォードV8DOHCは実に7120ccで345~425馬力…市販車ながら最高速度250㎞以上を誇ったのである。

ルマンやデイトナのレース用に空気抵抗を減らしたクーペ仕様のコブラ427

作曲家三保敬太郎、通称ミホケイは大学の後輩。たまに銀座赤坂で夜出会うと、楽しいジャズピアノを聴かせてくれた。彼は車好きでも人後に落ちず、日本グランプリ出場のためにコブラ427を買いこんだので、私も乗る機会に恵まれたが、その豪快な走りは感激の一言だった。まさに米国の力を誇示した車だった。

AC社は営業不振でその後倒産するが、コブラの人気は衰えず幾つかのレプリカが誕生した…その一台に試乗する筆者

 

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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