2019年6月に発売されたBMWのフラッグシップSUV「X7」に試乗させていただきました。
昨今人気のSUVとは「Sport Utility Vehicleの略ですが、BMWでは「SAV(Sport Activity Vehicle)」と呼称しています。
X7は3列シートを持つ大型のSAVですが、どういった特徴があるのでしょうか。
■巨大なキドニーグリルが目立つエクステリア
試乗車として用意していただいたのは、新型BMW X7 xDrive35d Design Pure Exellenceというディーゼルモデル。車両本体価格は1,229万円ですが、試乗車はオプションだけで305万円とてんこ盛りで、総額は1,500万円を超えていました。
1,500万円オーバーでも、フラッグシップモデルとしては高すぎるわけでもないですね。ライバルとして想定されるのは、レクサスLXやメルセデス・ベンツGLEなどですが、それらも余裕で1,000万円は超えて総額は1,500万円クラスになりますからね。
それではまずX7のエクステリアから見ていきますが、昨今どんどん大きくなるキドニーグリルは、X7では最大級となっています。
これも需要が大きい中国でグリルは大きければ大きいほど好まれるという傾向から、デザイナーが美しさなどのバランスよりも中国優先に振り切って大胆にデザインをしているという噂もありますね。
中国以外の国でこのドデカイグリルが好まれるかどうかは別として、個人的には意外と上手くバランスが取れているんじゃないかとも思います。
他のメーカーのLサイズSUVも、顔つきはド迫力ですからね。
X7のボディサイズは、全長5,165mm×全幅2,000mm×全高1,835mm、ホイールベース3,105mmと、押し出しの強いエクステリアの印象も相まって、クルマと言うよりもはや「城」とも思えるほどの迫力です。
青いユニットが特徴的なヘッドライトですが、「BMW レーザーライト」という、600m先まで照射できるレーザーを光源に使ったものになっています。これもフラッグシップならではですね。
そして巨大なキドニーグリルですが、さすがにX7クラスだとグリルシャッターが装備されていました。X3ではグリル内部のラジエーターが丸見えで見栄えが良くなかったですが、最近のBMW車ではちゃんとグリルシャッターが付いていますよね。
ボディサイドにある「エアブリーザー」と呼ばれる、BMWではお馴染みのエアスリットですが、こちらはダミー。空気が抜けるようには出来ていませんでした。
ただ、リアのバンパー一体型のマフラーは、ダミーデザインなどではなく本物なのは良かったです。
GLEやアウディQ8などではダミーのマフラーデザインが採用されていて個人的には好きではなかったですが、BMWはちゃんと本物のマフラーです。
■内装の質感演出は最高峰!
続いてはX7の内装ですが、こちらの試乗車にはBMW Individualのフルレザーメリノ(55.6万円)やらBowers & Wilkinsダイヤモンドサラウンドサウンドシステム(61.7万円)など、豪華絢爛な装備が付いているので、見た目の質感も素晴らしいです。
手に触れる部分はほぼレザーで覆われ、クリスタルのシフトノブやLEDが散りばめられたスカイラウンジパノラマガラスサンルーフ(11.7万円)なども、わかりやすい高級感があって良いです。
インテリアデザイン自体は、3シリーズやZ4などから始まった、新世代BMWのデザイン文法に則って造られているので、1シリーズから8シリーズまで、そしてこのX7も例外なく同じデザイン。マテリアルはもちろんX7ならではの高級感ある素材が使われているので安っぽさはまったく無いのですが、1シリーズを見た後だと「あんまり変わらないな」という印象も強いです。むしろ1シリーズが価格に対しての満足度が高いのだと思いますが。
■2列目・3列目シートでは良い点・悪い点も
2列目にアクセスしてみると、乗り込みやすさにはやや難を感じます。
というのもフロアの高いSAVなので、ボディサイドに装着されたアルミニウムランニングボード(8.3万円)に足をかけて、よいしょと2列目シートに座りますが、その際にシートレールが張り出していてそれが足に当たりがちです。
このあたりの設計はどうにかならなかったのかと思います。
また、2列目はキャプテンシートになっていて、3列目にはウォークスルーでアクセスできるのですが、何故かウォークスルーできる中央部分の足元にカップホルダーがあり、移動する際に飲み物が置いてあったら足を引っ掛ける可能性があり危ないと思いました。
3列目シートに座ってみると、さすがに広々とはいきませんが、3列目の頭上にもガラスルーフが設置してあったり、本木目のオーナメントやアンビエントライトも付いていたりと、心地よさの演出はしっかりされています。
多少2列目を前にスライドさせても、膝前にはコブシ1つ無いくらい。実用的に3列目を使用するSUVなら、マツダ・CX-8のほうが快適に座れますね。
■ラゲッジは3列使用時でも広い
X7のバックドアは上下2分割で開くタイプ。下段は腰掛けとしても利用できるのでアウトドアで使うのも楽しそう。
3列目に人を乗せている状態でも、ラゲッジスペースは比較的広く高さがあるので750Lもの容積を確保しています。旅行の荷物くらいは余裕で積み込めますね。
さらに、3列目を格納してしまえば2,120Lもの広大なラゲッジになります。通常はこの状態で4人乗りまでを使えば、ラゲッジも広いSAVとして使えそうですね。
内外装のインプレッションは以下の動画でも配信中!
■X7の走りはBMWらしくない?
内外装のチェックが済んだところで、いよいよ試乗へと漕ぎ出します。
クリスタルのスタートスイッチを入れると、直6の3.0Lディーゼルターボエンジンが始動しますが、室内は静かそのもの。全くディーゼルとわからないくらいの静粛性の高さです。
最高出力195kW(265ps)、最大トルク620Nmと、十分すぎるほどのスペックです。それでいて燃費も11.4km/Lと、このサイズのラージSAVとしては燃費も良いですね。
走った感じは、BMWらしいガッチリした接地感があって地を這うようなハンドリングとは異なり、意外とフワフワとした、まるで海原を進むルーザーに乗っているような乗り味です。
街中でゆっくりと走っている時には、やはりボディの重さを感じるような、じっくりと動き出す感じ。しかしアクセルを開ければグイッと加速します。やはり重量があるので慣性が働く分、停止状態からの発進では重さを感じる部分もありますが、動き出してしまうと大トルクでグイグイと前に進むドライブフィールです。
そして、高速の合流時など全開加速を試してみますが、直6の回転フィールはディーゼルでも素晴らしく、高回転域まできれいに回っていくので気持ちいいですね!
「クルルルァァァン!」という渋さを微塵も感じさせないサウンドで猛然と加速し、気をつけないと首がやられるほど鋭い加速を見せてくれます。
やはりフラッグシップSAVとしては、踏んでも早くないと威厳も保てないですからね。
高速域を流していると、ステアフィールはBMWとしてはやや軽めかなと思います。さらに、クルーズコントロール中ではなくても、積極的にステアに介入してくるようなトルクを感じるのは、やや違和感がありました。
これもBMWらしくないと感じた部分でもあります。
■ハンズオフを試す
最近デビューしたBMWの中でも上位車種には、指定された高速道路で60km/h以下の条件下で、ハンズオフ(手放し)でアダプティブクルーズコントロールができます。
実際に試してみましたが、渋滞時などはとても楽ですね。手放し・足放しで自動運転しているというのは、未来感があって良いです。
ただ、視線だけはちゃんと前を向いていないとハンズオフが解除されてしまうので、よそ見や居眠り運転は出来ないように設定されています。
惜しむらくは、60km/h以下かつ限られた高速道路の条件下でしかハンズオフが作動しないので、外環道や首都高などを使う人以外は使えるシーンはかなり少ないと思います。
試乗インプレッションは以下の動画でも配信中!
■今の時代のプレステージカーはやはりSUV?
今までは、VIPが乗るクルマは7シリーズやSクラスといったセダンでしたが、セダンの人気が低迷しSUV全盛のこの時代では、VIPが自らハンドルを握るプレステージカーとしてはX7のようなSUV(SAV)のほうが実用性や見栄え、そして何よりリセールも良いでしょうね。
後席の居住性という面では、X7は乗り込みやすさはやや課題ありでしたが、運転するでも後席に乗るでも、この押し出しの強いエクステリアなら、誇らしい気持ちで乗ることができそうですね。
やはり高い位置から見下ろす視界は、気持ちいいものです。
次世代のプレステージカー、BMWの動く城、新型X7が気になった人は、試乗&見積もりしてみてはいかがでしょうか?
[ドラヨス]
月間100万PVのブログ「ワンダー速報」と、月間100万再生以上のYouTubeチャンネル「ワンソクtube」の管理人。
クルマ買うチューバーを自称し、年に何台もクルマを購入してレビューするスタイルが好評。
ワンダー速報ブログ:https://wansoku.com/