【アーカイブ】 初代アルト試乗記(週刊Car&レジャー・1979年6月掲載)

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スズキを代表する軽自動車が今年で40周年を迎えた「アルト」。79年の発売以来、現在までの国内累計販売台数は514万台というのだから大したものだ。6月には40周年記念限定車も登場し、今後ももっともベーシックな軽自動車として活躍を続けることだろう。というわけで、今回は40年前に登場した初代アルトは登場時どのように評価されたのか、当時の試乗記をみてみよう。

初代アルト

<週刊Car&レジャー 昭和54年6月23日発行号より>

■47万円の走りに文句なし

最近話題の「スズキ・アルト」を試乗した。商用車でありながら乗用車感覚のクルマで、これからの軽自動車のあるべき姿にチャレンジしたというニューカーだ。二サイクルエンジンのメリットを存分に生かし、FF、二ボックス、ハッチバックとしてデビューした。コストダウンと簡素化によって四十七万円という驚くべき低価格設定に成功した。チャレンジコースは都内幹線道路だ。

初体験の印象は出足がよく、安定した走行であるということだ。ふつう二サイクル・エンジンだと加速はよいが、思い切りアクセルを踏み込んだ時や、定時走行の際でさえあの独特の騒音が気になるが、このアルトはほとんど気にならない静粛さを保っているのがよい。排気管にプリマフラー、サブマフラー、メインマフラーの三個のマフラーを使って消音している効果が出ているのだろう。

快調の2サイクル

すいている道を選び思い切り飛ばす。タイヤがガッチリ路面にくい込み、ぐんぐんと突き進む軽快なフィーリングが心地よい。周囲の小型車を難なく追い越してしまう力量も備えている。誰れも商用車と気づかず、乗用車の仲間として見ている目がわかる。ハンドルをにぎるドライバーさえその感じは全くないのだ。計器盤にはラジオも時計もない。これがアルトであることを印象づけているようなものだが、かえってすっきりして運転し易いことにもつながる。どうせ時計などはあまり見ることがないし、小型車のデジタルならばともかく、普通の二針や三針ならばあてにならない狂いがあるし、腕時計があるのだから必要もないというわけだ。

FFのメリット満喫

また、FFのメリットが十分に生かされ、足元が広々として運転し易い。大衆車なみのフィーリングであり、同じ二ボックス仲間ならば乗っていてこれが軽だとは思うまい。ステアリング半径も大きめに設計してあり、切れをよく運転し易さにつながっている。

走行安定性とこの快適な乗り心地は、前輪がバネ下重量が軽く路面ショックの吸収性がよいストラット独立懸架方式。後輪は三枚リーフのリジットアクスル、操作性のよいラックアンドピニオンステアリングが保証してくれる。

軽自動車の場合は商用車でも車検が乗用車なみに二年だから、このアルトは一般家庭でも充分通用できる便利さがある。

高速道路での試走は今回はできなかったが、幹線道路のすいた場所でそれに近いフィーリングを得られたからまず合格点をつけてもよいだろう。

 

<解説>

現行アルトは乗用車だが、初代は軽商用車として登場。これは当時、軽乗用車には物品税が課されていたためで、非課税の商用車とすることでより手頃なベーシックカーとすることが狙いであった。結果としてこの狙いは見事に的中し、初代アルトは大ベストセラーとなる。なおこの初代アルトの乗用車版としては5代目フロンテが用意された。

アルトのエンジンは昭和56年に4サイクルエンジンも追加されるが、当初は2サイクルエンジンのみの設定。FF用の550cc水冷3気筒T5Bエンジンを搭載していたが、排ガス規制を境に四輪車に2ストロークエンジンを搭載しているのはスズキのみとなっていた。試乗記の中で2サイクルエンジンについて言及しているのはそのためである。

写真のキャプションには「軽とは思えぬ走りをみせた」とある。少々大げさではあるが、現在の軽自動車の試乗記事にありがちな表現と変わらないのが面白い。エンジンの最高出力は28ps(グロス)だが、車両重量は545kgしかなく、これがキビキビとした走りにつながっていたといえるだろう。

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