2002年の生産終了から17年ぶりの復活となった新型スープラ。BMWとの共同開発となりBMWの新型Z4とはプラットフォームを共用する兄弟車という関係にはなったが、直列6気筒エンジン+FR駆動というスープラの伝統はしっかりと受け継がれている。
ラインアップは、最高出力340psを発揮する直6・3Lターボの「RZ」、最高出力258psの直4・2Lターボの「SZ-R」、同じく直4・2Lターボだが最高出力を197psとした「SZ」の3グレード。先代の80スープラからグレード名称も継承されている。ちなみに80スープラの場合は全車直6エンジンだが、「RZ」が3Lターボ、「SZ」は3L・NA(自然吸気)であった。
ボディサイズは全長4380㎜×全幅1865㎜×全高1290㎜でトヨタ86に近いサイズだが、ホイールベースは86の2570㎜に対してスープラは2470㎜と短いのが特徴で、ハンドリング重視のパッケージであることが数値からも読み取れる。
室内空間は、2ドアの2シータークーペだけにタイトだが、乗りこんでしまえば窮屈さは感じない。シート高が極端に低くないので、乗り降りは86よりもやや楽に感じられるほどだ。またインパネ周りは部品は替えられているが、レバーの位置も含めて操作系はBMWのスタイル。このため他のトヨタ車と雰囲気が異なるが、配置は機能的なので、操作そのもので迷うことはないだろう。
今回は伊豆・修善寺を基点に公道で試乗したが、3グレードでかなり乗り味が異なることに驚かされた。エンジンのパワーがそれぞれ違うので当然といえば当然なのだが、それ以上に重量や足回りの違いがそれぞれの個性となっている印象である。
まずトップグレードである「RZ」は、直6エンジンを搭載するスープラのアイコン的存在だが、何よりも高回転域まで淀みなく一気に吹け上がるエンジンの心地よさが別格だ。直列6気筒ならではの魅力であり、これだけでもRZを選ぶ価値がある。
踏み込んでみると、さすが320psを発揮するだけあって公道では持て余すほどの強烈な加速を楽しめるが、低回転域でもレスポンスよくアクセルに反応するので、街乗りもラクにこなすエンジンである。全体の乗り味としては、やや重厚感を持ちながらも滑らかにクルマが動く感覚で上質さも十分。ただタイトなワインディングでは若干フロントが重く感じられ、特にきついコーナーに早目の速度で進入した際など、動き出しがやや鈍い感覚がある。ハンドリング自体に不満はないが、基本的にはサーキットや高速道路に向いている印象だ。
今回の試乗コースは公道のワインディング主体だったが、そこで一番バランスが取れていると感じたのは直4・2Lの「SZ-R」である。基本的な乗り味はRZと共通するが、タイトコーナーではRZに感じた鼻先の重さがなく、機敏かつ自然な挙動でドライブが楽しい。エンジンの官能的なフィーリングという点ではRZに及ばないが、そこさえ気にしなければ、パワーも公道では十分満足できるものだ。直6にこだわらず、公道中心に楽しむドライバーであれば、このSZ-Rが最適であると感じた。
「RZ」「SZ-R」が比較的似たような乗り味を見せるのに対し、全然違う印象だったのがベースグレードである「SZ」である。この最大の要因は、上の2グレードが装備する可変ダンパー「AVS(アクティブ・バリアブル・サスペンション」)」と「アクティブ・ディファレンシャル」が装備されないこと。特にサスペンションの違いは大きく、RZ、SZ-Rで感じた適度な安定感がなく、よく言えばスッキリ、悪く言うと少しバタついた乗り味。車格から見ると少々もの足りないというのが正直なところだが、その分、リーズナブルな価格で手に入れられるのは魅力だろう。上位2グレードに比べれば余裕がないが、日常の中でドライブを気軽に楽しむ分には、パワーも十分。カスタマイズのベース車としても最適だ。(鞍智誉章)