10年ぶりにフルモデルチェンジが行われたBMW・Z4。ルーフを先代のリトラクタブルハードトップから電動ソフトトップに変更した見た目だけでなく、ボディサイズやホイールベースを見直すことでバランスを最適化し、走行性能にも一層の磨きがかけられた。
ボディサイズは全長4335mm(先代比85mm増)、全幅1865mm(同75mm増)、全高1305mm(同15mm増)と拡大した一方で、ホイールベースは2470mmと25mm短縮。低重心で前後重量配分は50:50とすることで、高い俊敏性と操作性を追求した。
エンジンは直列4気筒2・0ℓターボと、直列6気筒3・0ℓターボの2種類を設定。今回は後者を搭載するトップグレード「M40i」に試乗した。
走り始めて感じた第一印象は、1600-4500rpmの広範囲で最大トルク500Nmを発揮するエンジンはどの場面においてもパワー不足を見せず、低速域でのトルクの出力も滑らかで非常に扱いやすいこと。中高速域のアクセルの踏み増しによる力強い再加速は、スペック以上のものを感じさせる。
基本的な操舵感はスポーツモデルらしく重めだが、クセも無く素直なセッティング。カーブや登坂路が連続するワインディングを走行するシーンでは狙ったラインを正確にトレースし、しなやかな回頭性、高い接地感によってもたらされるクルマとの一体感はまさに〝駆け抜ける歓び〟を体現している。
乗り味はスポーティモデルらしく硬めになっているが、スポーツモデルにありがちな〝高速域では快適なフラットライド〟であるだけでなく、街乗りの速度域でも路面からの不快な突き上げなどを感じさせない。街乗りからワインディング走行まで対応する乗り味の良さはZ4の真骨頂と言え、高性能でありながら乗り手を選ばない懐の深さは特筆すべきポイントだ。
ヘッドレストと一体型となっている専用スポーツシートは、硬そうな見た目とは対照的に座り心地が良好。コーナーでの高いサポート性を実現しながら窮屈さも無いので、長距離の運転も問題なくGTカーとしての素養も備えている。
また、10秒ほどで開閉できる電動ソフトトップは、50km/h以下なら走行中でも開閉できる。さらに、ルーフの開閉に関わらずトランクの容量は281?を確保していることに加え、シートの背後のネット付きトレイ、アームレスト部に設えられたカップホルダーなど、手荷物を置くには困らない装備もあり見た目以上に使い勝手も良好。フル液晶のメーターパネルをはじめとする最新のインフォテインメントや先進安全装備も搭載し、趣味性で選ばれていた過去のオープンカーとは一線を画すモデルとなった。