ボルボSUVラインアップの頂点に立つのが「XC90」。新世代ボルボの第1弾として登場したモデルで、全長4,950mm、全幅1,960mm、全高1,775mmという堂々たるボディサイズに3列シートを備えたSUVだ。
このXC90に今年3月、新たにクリーンディーゼル「D5」が追加された。
大柄なSUVはクリーンディーゼルとの相性が良い。が、意外なことにこれまでXC90のディーゼルモデルは日本では設定がなく、パワートレーンは254psを発揮する2Lガソリンターボ「T5」、これにスーパーチャージャーを組み合わせ320psとした「T6」、さらに電気モーターを加え320ps+87psとしたプラグインハイブリッド「T8」の3種類であった。
プラットフォームを共用する同じ90シリーズのV90、V90クロスカントリーには2Lディーゼルターボの「D4」(190ps/400Nm)が既に搭載されているが、さすがに重量が重くなるSUVに搭載するにはこの「D4」エンジンでは厳しいということなのだろう。XC90では、さらに出力を高めたボルボ最強のクリーンディーゼルエンジン「D5」が搭載された。日本では初めて導入されたパワフルなエンジンである。
排気量は2LでD4と同じだが、最高出力は235ps、最大トルクは480Nmに高められ、加えて新開発「パワーパルス」システムを搭載しているのが特徴だ。これは急加速時に圧縮エアをターボチャージャーに送り込み、タービンを素早く高回転させることでトルクの立ち上がりを早めるというものだ。通常のターボエンジンの場合、アクセルを踏み込んでからターボが効き出すまで少し時間が掛かるが、これを解消するのがこのシステムというわけである。
その効果は実際に走ってみるとすぐに体感できる。今回試乗したのは装備が充実した上級の「D5インスクリプション」だったが、その重さは2110キロとまさに重量級。だがD5エンジンは、この約2トンのボディをいとも軽々と発進させてしまう。大型SUVらしからぬ軽快な動きで、ストップ&ゴーが多い街中でも、ストレスなく走ることができそうだ。
今回の試乗会は箱根で行われたため急勾配の坂を上るシーンも多かったが、そこでも力不足を感じることはなかった。低回転域から力強いトルクが出てくるので極めてスムーズに走ることができる。この辺りはさすがハイパワー・ディーゼルである。もともと重量のあるモデルだが、さらに多人数乗車や多くの荷物を積んで走る機会が多いSUVということを考えれば、トルクにある程度の余裕は欲しいが、その期待を裏切らない。
クルマ全体の乗り味はややゆったりとしており、乗り心地を優先したセッティング。3年前にXC90が登場した時は大型SUVとは思えないカッチリした乗り心地に驚いたが、少しソフト寄りに修正されたようである。とはいえ余計な動きは最小限に抑えられているので、運転していて不安を感じることはない。ディーゼル特有の音や振動も抑え込んでいるので、この点でも不満はなく、上質な空間でドライブを楽しむことが可能だ。
室内のパッケージングや装備はガソリン車と同様。フラッグシップSUVらしく、充実した装備を搭載している。もちろんボルボ自慢の先進安全装備も標準装備。安心して快適なドライブが楽しめる実力モデルである。(鞍智誉章)