ハッチバックからセダンへと変貌を遂げたホンダ・インサイト試乗

試乗レポート

1999年に誕生したホンダ・インサイトは、初代が燃費世界一への挑戦、09年に登場した2代目は200万円以下の価格設定で、環境車の普及促進を担ってきた。4年振りに復活した新型車は、デザイン等とともに、ボディタイプを5ナンバーサイズからミドルサイズセダンへと拡大し〝環境車だから〟と我慢を強いることなく「クルマの本質的価値」の提供を目指した。

3代目となったインサイトは、ボディタイプを従来の5ドアハッチバックから4ドアのミドルサイズセダンに変更。ハイブリッド車であることを声高に主張せず、上質な走りと優れた環境性能を予感させる流麗なシルエットが印象的だ。

インテリアは、センターパネルから助手席にかけて本革の風合いを持つリアルステッチソフトパッドを配し、ミドルセダンにふさわしい上質な空間を創出。センターコンソールには、ギア操作をボタンで行うエレクトリックギアセレクター等の操作系を機能的に配置。シフトレバーの操作に慣れているので最初は違和感を覚えたが、慣れるとギア選択の〝ブラインドタッチ〟も可能で、先進性を演出しながら使い勝手にも配慮されている。

 

後席の居住性は、ハイブリッドの機器類を床下に収めることで、一般的なミドルサイズと遜色のないレベル。大人が座っても窮屈しない足元空間が確保されている。一方で、頭上空間にはあまりゆとりがなく、乗り降りの際も一度屈んで乗り込むような形となっており、このあたりは改善の余地がありそうだ。

■力強く、スムーズでシームレスな走り

ハイブリッドシステムは、直列4気筒1.5ℓアトキンソンサイクルエンジン(最高出力109PS/最大トルク134Nm)+2モーター(最高出力131PS/最大トルク267Nm)、IPU、パワーコントロールユニットなどで構成され、エンジンはクラリティPHEV用をベースに、吸気・排気系を専用設計した。

走り出してみると、ハイブリッドらしい力強いトルクや瞬発力が感じられ、ある程度スピードに乗ると一般道の速度域ではほとんどモーターのみで走るので、電気自動車に乗っているような感覚というのが第一印象。スポーツモードを選択すると力強い加速を得られるが、オフの状態でもアクセルの反応が俊敏で、必要十分な加速性能を持っており〝スポーツハイブリッド〟らしい爽快な走りを見せてくれる。加えて、高速の追い越し時や登坂路といった、もう一段階上の加速がほしい場面での力強い走りは、ストレスを感じさせない。

さらに、モーター走行からエンジン走行の切り替わりもシームレスで、よほどアクセルを踏み込まなければ乗っている人はエンジンが動いていると判らないのでは?と思わせるスムーズな走りは特筆すべき点。ブレーキのフィーリングは、回生ブレーキによる充電の様子を感じられたが、違和感はなく滑らかな感触。軽さや抜けるような感じは無く、ガソリン車と変わらないブレーキフィールであるのも好印象だ。

全体的な挙動は穏やかなので、スポーティな印象は薄い。だが、ロールも微小に抑えられており、一般道での右左折や車線変更後の車両の揺り戻しは少なく、どっしりとしたコーナリングでカーブでの走行も安心感がある。

ハンドリングは程よい重さを残し、切れ味や軽快感より扱いやすさを重視したものになっている。修正舵も少なく直進安定性も高いので、長距離や高速走行にも応えるグランドツアラーとしての素養は、デザインと並んで先代から大きく変化した点と言える。

試乗を通して〝環境車だから〟と我慢を強いられることのない仕上がりになっていたインサイト。基本装備や上質感にハイブリッドという付加価値を考えれば、321万円からという価格も納得できる。

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