リクリエーショナル・ビークル=RVという言葉を耳にするようになったのは、20世紀末からで、日本では、クロカンや1BOX、を指していた。
いずれにしても遊び目的のRVは、何時頃生まれたのだろうか。多分このあたりが元祖と思われる車を見つけたので紹介しよう。
ニュージーランドの航空博物館、その中のワナカの戦闘機博物館を目指してニュージーランドに行ったのは1998年だった。
そしてクイーンズタウンで代々金持ちであろう人物の、たぶん道楽であろう自動車博物館があると聞いて訪れ、遭遇したのである。
見れば判るように、かなり古い車である。ラジェーターグリル形状やエンブレムから探したら、アメリカのインターナショナル・ハーベスター社製/IHということが判った。(写真上:インターナショナル/ステップには籐製バスケット)
現在同社は、世界最大級の農機具会社だが、19世紀半ばからの脱穀機、収穫機、蒸気機関など数社が合併してIH社が誕生したのが1902年のこと。02年というと明治35年のことである。
明治35年は、独シュタイフ社からルーズベルト大統領ヒントのテディーベアが登場。日本海海戦の戦艦三笠が英国から横須賀に到着、八甲田山雪中行軍による遭難、御木本幸吉の養殖真珠に特許が。懐中時計に加えて腕時計がはやり始めた頃でもある。
さて、IHは、19世紀中に乗用車製造を止めてしまったが、小型トラックシャシーで、得意先から注文あればカスタムメイドしていた。たぶん写真の車もそのようで、10年代後半の作だと推測する。
かなり高度な木工技術は、当時の家具職人か船大工と思われる。狭いところに上手にストーブや洗面台、とくにストッパー付引き出しなど、腕のいいヨット職人ではないだろうか。
ステンドグラスに飾られた室内は、陶製のシンク、銅製の湯沸かし内蔵の調理用石炭ストーブ、たぶん二段ベッドになるであろう革製ソファーなど、どれもヨットの発想である。
両ステップには籐製バスケットに工具箱、ハンドル、シフトノブ、運転席屋根、すべて木部は美しいニスで仕上げられている。
こんな車を特別注文して、家族でニュージーランドを旅する、金持ちならではの贅沢さである。
博物館の片隅に軽飛行機の胴体が転がっていた。眺めていると「飛行機は好きか」「英国のオースター?」「親爺のだが良くわかるね」「私もパイロット」というと、にわかに打ちとけた。
ニュージーランドで代々の資産家のようで、先祖が愛用した乗用車などを展示しているのだと判った。