ミシュランは、「ミシュランアーキテクチャ&デザインアワード」のノミネートホテル5軒を8月13日に発表した。
同アワードは、印象的な建築とインテリアで、滞在を豊かなものにする宿泊施設に授与される賞。ミシュランガイドホテルセレクション、第1回目の「ミシュランアーキテクチャ&デザインアワード」のノミネートホテルは、ベネッセハウス(日本)、アトランティス・ザ・ロイヤル(ドバイ)、シェバラ・リゾート(サウジアラビア)、ローズウッド サンパウロ(ブラジル)、ヴィラ・ナイ 3.3(クロアチア)の5軒となる。
ノミネートされたホテルは、世界のどの建物とも一線を画す独創的な外観を持っており、これらの空間をデザインした建築家たちは、単なる視覚的なインパクトを狙っているのではなく、単に宿泊者の体験を補完するのではなく、体験そのものを目的として設計されており、あるホテルでは、巧みな設計によって、滞在中まるでサンゴ礁の海に溶け込むような体験を提供。
また別のホテルでは、革新的な建築技術で、砂漠の大地にいながら涼しさを感じられる屋外空間を生み出しており、さらに別のホテルでは、島に点在する美術館とホテルの建物が一体化しており、ゲストはまるで生きたギャラリーの中での滞在時間を提供する。
ミシュランガイドは10月8日に、5軒のノミネートホテルの中から「第1回ミシュランアーキテクチャ&デザインアワード」1軒をパリの装飾美術館で発表するとともに、2025年のミシュランキーホテルの発表も予定している。
【今年新たに発表される、その他のアワード選出ホテル発表予定】
- ミシュランウェルネスアワード:8月27日
- ミシュランローカルゲートウェイアワード:9月10日
- ミシュランオープニング・オブ・ザ・イヤーアワード:9月24日
【ミシュランアーキテクチャ&デザイン、ノミネートホテル】
<ベネッセハウス(日本)/Benesse House, Japan>
◆こんな旅行者におすすめ:プライベートアクセスで現代美術コレクションとデザイン建築を満喫したいアート愛好家やカップル
1992年、世界的に著名な建築家・安藤忠雄による革新的な設計により、瀬戸内海の直島に美術館と客室を融合した世界初のミュージアム・ホテルを誕生。コンクリートのミニマリズムを基調とし、海沿いの地形と一体化した「ミュージアム棟」、水盤と日差しあふれる回廊が特徴の「オーバル棟」、内外の境を曖昧にする木造の「パーク棟」、海面と目線を合わせて浮遊感を生む「ビーチ棟」など、4つの異なる建築とゲストルームから構成されている。65室の客室はいずれも広々としており、控えめな家具と床から天井までの大きな窓からは、瀬戸内海や四国山地、庭園の景色が一望できる。
◆特徴:
- 開放的な間取りでデイヴィッド・ホックニー、ジェームズ・タレル、草間彌生、アンディ・ウォーホルらの作品が展示されるギャラリーやインスタレーション
- 海辺や森の彫刻公園など、屋内外が融合した生きた美術館空間
- ガラス張りのレストランやスパ、海を望む薬草露天風呂も併設
- モノレールでのみアクセス可能な丘の上のオーバル棟に設えた6室の特別客室
◆建築:安藤忠雄
建築家、安藤忠雄が手がけたミシュランガイド掲載の施設:7132 Hotel、瀬戸内リトリート 青凪 by 温故知新、The Shinmonzen、丸福樓
<アトランティス・ザ・ロイヤル(ドバイ)/Atlantis The Royal, Dubai>
◆こんな旅行者におすすめ:世界でも屈指の豪華な旅先で、圧倒的なスケールと体験を求める超高級志向の旅行者
2023年に誕生したこのホテルは、進化を続けるドバイの都市景観に新たなシルエットを描き出しており、そのデザインは、外観の美しさだけを目的としたものではなく、従来のホテル建築や超高層建築の概念に新たな解釈をもたらしている。建物の前衛的な外観は、6棟のタワーがテラス状に張り出したブロック構造で連なり、それぞれが独自の空間や施設を備えている。互いに噛み合うように配置された構造は未来的でありながら、自然換気と日陰を生み出す無数の屋外空間をゲストに提供。館内は水をテーマにした優美なインテリアで統一されており、これは水の確保が日々の暮らしを左右したこの地域の歴史を想起させるものとなっている。ホテル内の様々な棟には、合計795部屋の客室とスイート、15軒のレストラン、そして建物上部をつなぐ壮大なスカイブリッジが備わっている。
◆特徴:
- 高さ11.5メートルのステンレス製ロビー彫刻「ドロップレッツ(Droplets)」と、スイートの専用噴水、館内各所のカスケードプール
- 幾何学模様、ステンドグラスの窓、現地の職人技を駆使した没入型の光の演出
- 革新的なLEDスクリーンで映し出す7,200匹の海洋生物が生息する3つの水族館
- 22階にある全長90メートルのインフィニティプールから望むパームと湾岸の絶景
◆建築:Kohn Pedersen Fox
建築家コーン・ペダーソン・フォックスが手がけたミシュランガイド掲載の施設:
ローズウッド香港、ローズウッド北京、ラングハム上海新天地
<シェバラ・リゾート(サウジアラビア)/Shebara Resort, Saudi Arabia>
◆こんな旅行者におすすめ: 型にはまらない親密でエコ意識の高い体験をサウジアラビアの手つかずのサンゴ礁の上で楽しみたい冒険好きなカップルや家族連れ
サウジアラビア西海岸で進行中の大規模開発「レッドシー・プロジェクト」の一環として誕生したシェバラ・リゾートは、同国における“モルディブの水上ヴィラ”とも言える存在。旅行者は色鮮やかなサンゴ礁でのダイビングやシュノーケリングを目当てに訪れ、このリゾートの革新的な建築は、繊細な海洋環境を守りながら、その魅力を称えるという理念を体現している。73棟のヴィラは、輝く真珠を思わせるデザインで、環境への影響を最小限に抑えるため現地外でほぼ完成させたうえで輸送された。そのうち38棟は海上に直接建てられ、細い柱で支えることで海底への干渉を最小限に抑えている。ステンレス鋼の外壁は太陽の光を反射し、水面の映り込みを纏うことで自然に溶け込んでいる。ヴィラは完全に独立した構造で、最適なプライバシーを確保するよう間隔を取って配置。先進的な設備として、大規模な自家用太陽光発電施設、淡水化および逆浸透プラント、オール電化の移動手段を備えている。これらの取り組みにより、LEEDプラチナ認証を取得。各“真珠”の内部は、外観同様に軽やかで洗練された空間。磨き上げられたスチールと特注家具が調和し、現代的な優雅さを演出している。
◆特徴:
- 水上と陸上2タイプのヴィラ。全てに専用インフィニティプール、ダブルデイベッド、屋外シャワー、ラウンジスペースなどの設備
- 屋内で味わうシェフのおまかせコース、ビーチサイドグリル、パスタ工房、大人専用プールバーなど海を望む5つのダイニング
- 屋内外スパ&ハマム(トルコ式スチームバス)、ヨガパビリオン、屋外プール隣接のテニス&パデルコート
- 広がるサンゴ礁群を巡り、夜光プランクトン鑑賞を含むガイド付きシュノーケル&ダイビングツアー
<ローズウッド サンパウロ(ブラジル)/Rosewood São Paulo, Brazil>
◆こんな旅行者におすすめ: サンパウロの象徴的な大通りまで徒歩圏内で、ブラジルの伝統と先進デザインを融合した魅力を体験したい都会派や家族連れ
20世紀初頭の歴史的建造物群であった「シダージ・マタラッツォ」開発地区は、現在では活気あふれる複合ライフスタイルセンターに変貌。その敷地から高さ93メートル、22階建ての大胆な垂直庭園タワーがそびえ立っている。木製ルーバーに包まれたローズウッド・タワーの外観には、マタ・アトランティカ熱帯雨林原産の樹木1万本以上が植えられており、革新的な設計によって都市の環境課題に応えながら、自生植物を都会の景観に再び呼び戻している。客室やパブリックスペースには、ブランドの哲学である「Sense of Place(その土地らしさ)」が息づき、ブラジルの豊かな歴史と持続可能な未来を同時に称えている。木材や大理石、特注家具、そして57人のブラジル人アーティストによる450点のオリジナル作品など、使用される素材はすべて国内産。
◆特徴:
- 1930年代のジャズバー「ラボ・ジ・ガロ」の天井を飾る、68時間かけて描かれた抽象的な夜空の壁画
- 都会の景色を一望できる屋上インフィニティプールと、熱帯植物に囲まれた家族向けモザイクプール
- ブラジル産水晶を400個以上使用し、鏡張りのヒーリングルームを備えた最先端スパ&フィットネス
- 1922年建設のサンタ・ルジア礼拝堂。現代ブラジルを代表するアーティスト、ヴィック・ムニーズ作の新設したバラ窓
◆建築:Jean Nouvel
ジャン・ヌーヴェルが手がけたミシュランガイド掲載の施設:ザ ホテル ルツェルン オートグラフ コレクション、SO/ウィーン、ル・サン・ジャック・ブリアック
<ヴィラ・ナイ3.3(クロアチア)/Villa Nai 3.3, Croatia>
◆こんな旅行者におすすめ: プライバシー、ウェルネス、自然、食体験を重視したい、欧州の穴場アイランドリゾートを求めるカップルや一人旅
アドリア海ダルマチア地方ドゥギ・オトク島の斜面を直接掘り込んで造られたエコラグジュアリーな宿泊施設。掘削で得られた石は建物の主要素材として再利用され、排出量削減のための革新的な設計上の工夫となった。広さ4万平方メートルのオリーブ畑に囲まれ、その畑では受賞歴のあるオリーブオイルが生産されている。ホテルの起伏あるデザインは、伝統的なダルマチア地方の建築技法から着想を得たもので、特にモルタルを使わず石を積み上げる「ドライストーンウォーリング」が特徴。この技法により、地形に沿って形作られたテラスや壁が生まれ、建物と環境がほぼ一体化。島の荒々しい地形に溶け込み、ゲストが自然の中に身を委ねられるような空間を作り出している。建物の内部も外観に劣らず優美で、8室の客室はすべて天然素材で仕上げられている。イタリア産の大理石や木の落ち着いた色調が、ホテルのサステナブルなコンセプトを引き立てている。
◆特徴:
- 天窓、独立型バスタブ、プライベートパティオを備える5つのデラックスルームと3つのスイート
- ダルマチア芸術と島の自然を表現する、1.6メートルの特注「ソード」シャンデリアが印象的なロビー
- 受賞歴のあるオリーブオイルを使った料理と、ガラス壁越しに製造所を眺められるレストラン
- 敷地全体に施された環境配慮型の給水システム。バスルームには浄水を供給し、塩水プール、雨水の再利用による灌漑
◆建築:Nikola Bašić
建築家、二コラ・バシッチが手がけたミシュランガイド掲載の施設:D-Resort Sibenik