トヨタ自動車、新ブランド戦略でセンチュリーを別ブランドとして独立、「センチュリー」「レクサス」「トヨタ」「GR」「ダイハツ」の5ブランドに再構築

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トヨタ自動車は10月13日のトヨタイムズ特別生放送で新しいブランド戦略を発表した。

生放送では、ダイハツを含めたオールトヨタを「CENTURY:One of One」、「LEXUS:DISCOVER・誰の真似もしない」、「TOYOTA:TO YOU」、「GR:THE SOUL LIVES ON.」、「DAIHATSU:わたしにダイハツ」の5つのブランドに再構築し、それぞれのコンセプトを表現した新しいCMを披露した他、ジャパンモビリティショー2025(JMS)に出展するコンセプトカーを一足先に披露した。

 

<CENTURY:One of One>

新しいブランド戦略では、センチュリーがトヨタブランドの一車種ではなく、別のブランドとして独立。

生放送に出演したトヨタ自動車 豊田章男会長は、センチュリーを独立させる理由について、これまでセンチュリーの居場所がはっきりしておらず、トヨタの高級車ブランドとしてレクサスがある一方で、別格のクルマとしてセンチュリーがあるが、前回のジャパンモビリティショーで、センチュリーがトヨタブースに置かれている状況に問題意識を持っていたという。

◆生放送での豊田章男会長のコメント

海外のブランドは根っこ、生い立ちの違う会社が一緒になってできた。ただ、これら(トヨタ)のブランドは、ダイハツ以外、全部根っこは同じですよね。その中で、レクサスが長男坊、トヨタが次男坊みたいな感じで、レクサスは長男としてしっかりしなきゃいけない(という意識があったように思う)。以前、「アバブ(above)レクサスをつくったら?」と(言ったのですが)どうしても(トヨタという会社は)フルラインで量産メーカーですから、量(が出るクルマ)を取っちゃうんです。ですが、上級車以上になるとレクサスでもアバブが必要。トヨタにはセンチュリーがあるじゃないかと、この位置付けをアドバイスしました。

 

また、サイモン・ハンフリーズCBO(Chief Branding Officer)は「ある意味、レクサスの動きは自由になる」「レクサスはどんどんパイオニアとしてチャレンジすればいい。センチュリーはTop of Top、One of Oneとして、ハイエンドにチャレンジする」と役割の違いを示した。

なお、新ブランドのCMはハンフリーズCBOが自ら手掛けており、自動織機の会社として誕生したトヨタのルーツ、センチュリーの革新、日本人のプライドなどを表現することにこだわって製作されており、「One of One この世界にひとつを、この国から。」というメッセージが添えられている。

 

<LEXUS:DISCOVER・誰の真似もしない>

センチュリーブランドの誕生で、より思い切った挑戦が期待されるレクサス。ブランドの変革を象徴するかのように、新CMにはLSコンセプトという名の6輪のクルマが登場する。

LSはレクサスのフラッグシップモデルで、「ラグジュアリーセダン」の頭文字をとった車種として知られてきただけに、今回の変貌は関係者の想像をはるかに超えていたという。

CMを手掛けた野添剛士氏(SIX Inc.)も、LSのSはセダンのSと認識してきたそうで、「スペース」だという豊田会長のまったく新しい解釈に驚かされたと話している。

豊田会長は、レクサスのブランドの成り立ちに触れ、「(当時)トヨタのフラッグシップはクラウン。アバブ・クラウンはヨーロッパのプレミアムブランドがひしめいていました。初めてそこをつくろうとしたのがLS。その後、ラインナップを増やしてきましたが、もう一回、LSの原点に戻って、これからのショーファードリブン、レクサスのフラッグシップがどういうクルマなのか、セダンにこだわらず、考えてみようと投げかけました。」と語っている。

レクサスブランドの方向性を示す言葉として選ばれたのが、「DISCOVER(発見する)」であり「誰の真似もしない」。

野添氏は今回、(ブランドCMを)つくるにあたって、「DISCOVER」と「誰の真似もしない」という言葉を選択。「誰の真似もしない」は豊田会長が開発陣の背中を押すときにずっと使っていた言葉だったという。

豊田会長は、ヨーロッパ勢を追ってきた歩みに触れ、「だけど、イミテーション(模倣)をインプルーブ(改善)させて、イノベーション(革新)にする。もうイノベーションの段階に来ているクルマもあってもいいと思う」と指摘。

「すごいチャレンジ。レクサスに期待されることってあるじゃないですか。静粛性、乗り心地、道を選ばないとか。そういうことをやって初めて6輪車が完成します。みんな本気ですから、必ず実現してくれると思います」と期待を示した。

 

<TOYOTA:TO YOU>

いわゆる高級車部門はセンチュリーとレクサスですみ分ける一方、「フルラインナップ」「マルチパスウェイ」を掲げる一番のボリュームゾーンがトヨタブランドだ。

CMを担当した篠原誠氏(篠原誠事務所)は「本当に幅広い車種があって、何をメッセージにすればいいのか、何を言えばいいのか途方に暮れた」と告白。

豊田会長の言葉を振り返る中で、トヨタには「Mobility for All(すべての人に移動の自由を)」という言葉はあるものの、「一人ひとりのために」という意味合いが強いことに気が付いたという。

 

◆篠原氏のコメント

For Allというより、For Youに近いんじゃないかなと(思いました)。でも、「あなたのため」という感じも少し違うな…と違和感を持っていたんです。そのときに一緒にやっているコピーライターから「あなた目がけて」という言葉が出てきたんです。まさにこれだなと。

◆豊田会長のコメント

トヨタは年間1,000万人近くのお客様に(クルマを)選んでいただいています。我々が間違ってはいけないのは1,000万人というお客さんはいないということ。1人ずつの集合体で1,000万人。それを『あなた目がけて』(と表現してくれた)。すごくドーンときました。

こうして、トヨタブランドの「TO YOU」というコピーが生まれたという。トヨタ(TOYO)があなた(U)を向くという姿勢も表現されており、豊田会長もお気に入りのメッセージだ。

 

<GR:THE SOUL LIVES ON.>

今回トヨタでは、ジャパンモビリティショー2025ではGRの出展を見送ることに決定。毎年、年始に開かれるクルマ好きの祭典「東京オートサロン」を見据え準備を進めているという。

しかし、富士スピードウェイの最終コーナー前「GRスープラコーナー」の看板に意味深な広告を出しており、豊田会長が年末のワールドプレミアを予告。

豊田会長もこだわっているというエンジン音が番組内で披露されると、コメント欄は大盛り上がりを見せた。

 

<DAIHATSU:わたしにダイハツメイ。>

5ブランドで、唯一ルーツが異なるのがダイハツ。オールトヨタの一ブランドとして、豊田会長から与えられたキーワードは「おもろい」だったとCMを担当した小西利行氏(POOL Inc.)は言う。

小西氏は、「会長から最初に『おもろいダイハツを復権させて』とテーマをいただきました。大阪人にとっての『おもろい』はセンスがいい、気が利いている、アイデアがいっぱいあるという意味。ダイハツ本社に初めて行ったときに、なるほどと思ったことがありました。ダイハツはクルマが主役というより、暮らしが主役。時代のニーズ、街の人たちの困っている声を直接聞いて、一つひとつ形にしていった歴史でした。しかも、小さいクルマだからできることがあり、そこにすごい技術をギュッと詰め込んだ発明が一つひとつにあるのがものすごくわかったんです。」とコメントしており、こうしたことから、「わたしにダイハツメイ。」というコピーが生まれたのだという。

「発明」は自動織機を生み出した豊田佐吉氏から受け継がれるトヨタグループの原点。CMはダイハツの名前が広く知られるきっかけとなったミゼットで始まり、次のジャパンモビリティショーに展示するミゼットXで締めくくられる。

ハンフリーズCBOは「原点回帰。街の中でも、田舎でも、皆の暮らしを支えているのが強み」と説明した。

さらに、番組の中では、「わたしにダイハツメイ。」というカラフルで楽しげなコピーの後に出てくるダイハツの赤いブランドロゴを、社員の「おもろいから」という提案でカラフルロゴに差し替えることになった裏話も披露。

豊田会長は、「ダイハツってもともとそういう会社だと思います。大阪の会社なんだから、関西らしさにはこだわってほしい。1960年代にご縁があって、今は資本でいくと100%子会社ですが、ダイハツがそもそも持っている『トヨタには近づかない』という『遠心力』は応援してあげたい。このCMをダイハツのステークホルダーの皆さんが見て、ダイハツの応援歌みたいになって、日本の国民車を担当するスズキ、ダイハツがライバルとして、切磋琢磨することで、日本の道の風景も変わると思う。」と語った。

ジャパンモビリティショーでは、トヨタ・ダイハツは隣り合わせでブースを構え、間には壁も設けていない。センチュリーやレクサスも一つのホールに結集する予定だ。

 

<オールトヨタ本気のモビリティをジャパンモビリティショーで>

今回、ジャパンモビリティショーに展示するいくつかの車両を紹介したが、ハンフリーズCBOは「コンセプトカーは必ず本気でつくっています。(市販に向けては)ショーに出してみて、みんなが「いいね」とリアクションしてくれたら」と本気度を強調した。

◆豊田会長の視聴者へのメッセージ

トヨタが世界中のお客様のショッピングリストに入れてもらえる。そして、いっぱい、いっぱい思い出をつくっていただけるよう、こんなビジョンを持ち、こんなミッションを達成するために、みんなが力を合わせて、商品を一生懸命つくっています。

トヨタからどんな商品が出てくるのかな、どんな思い出、ストーリーが紡げるのかなと、同じジャーニー(旅)をともに歩める、走れる方々が増えていくよう、トヨタ従業員38万3千人、心ひとつにやってまいります。

ぜひとも、トヨタがこれから世界中で出す商品に期待いただきたいですし、興味を持っていただきたいと思います。

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