国産、輸入車問わず、人気の高いSUV。その中でも最も激戦区となっているのがBセグメントからCセグメント手前くらいのコンパクトSUV。国産ではトヨタ・ヤリスクロス、日産キックス、ホンダ・ヴェゼルなどがあるが、さらに多いのが欧州車。フォルクスワーゲン・Tクロス、プジョー2008、シトロエンC3エアクロス、プレミアムブランドではメルセデスGLA、BMW X1、アウディQ2等々、枚挙にいとまがない。大きすぎず、小さすぎない手頃なサイズは、洋の東西を問わず、多くのユーザーのニーズにマッチしているのだろう。
さて、そんな超激戦区の欧州コンパクトSUVの中で、最も売れているモデルがルノー「キャプチャー」だ。2013年の登場以来2019年まで世界で170万台を販売、20年も欧州で販売されたSUVの中で販売台数第1位。まさに欧州コンパクトSUVを代表するモデルといえる存在である。
そんな人気のキャプチャーが、いよいよフルモデルチェンジ。早速、この2代目となった新型キャプチャーの実力をチェックしてみた。
SUVらしく存在感を増したエクステリア
まず外観から見てみよう。全体のデザインは、キープコンセプトで進化。先代同様、基本的には曲線で構成されたルノーらしい柔らかなフォルムだが、新型ではそこに直線も加え、力強さも加わった印象だ。特にフロント周りは迫力を増し、よりSUVらしさが強調されている。ボンネットのプレスラインや、サイドのベルトラインに入るメッキのモールなども新たに加えられ、メリハリのあるデザインとなった。


ボディサイズは全長4230×全幅1795×全高1590mm。プラットフォームを刷新し、ルノー・日産・三菱のアライアンスで新開発されたCMF-Bプラットフォームとすることでボディサイズは先代よりも一回り大きくなり、全長は95mm、全幅は15mm、全高は5mm拡大。ホイールベースは35mm長くなっている。とはいえ、コンパクトなサイズであることには変わりはなく、取り回し性の良さは先代同様である。

上級クラスにも匹敵する上質で快適な室内空間
コンパクトなボディサイズながら、居住空間は広く、足元、頭上とも余裕がある。前席はもちろん、後席のシートも座り心地が良く快適だ。また6:4分割可倒式の後席は前後に最大160mmスライドできるので、乗員や荷物に合わせて最適な使い方が可能となっている。荷室スペースは最大で536Lを確保。荷室の床は2段になっており、整理して収納もしやすい。ファミリーユースにも最適だ。



そして広さとともに驚くのが、質感の高さである。先代キャプチャーを含め、これまでのルノー車の室内空間は機能的だが素っ気なく、実用車然としたものが多かった。ところが新型では一新され、1クラス、いや2クラス上の上級車を思わせるほど。全体としてはシックにまとめられているが、良質な素材をふんだんに用いることで見た目にも質感の高さが感じられる。もちろん見た目だけでなく、前席の手に触れる部分は、ほぼすべての箇所にソフトパッドが用いられるなど触感にもこだわっており、コンパクトSUVとは思えないほど丁寧に造り込まれている。
そうなった理由は、ダウンサイザーの存在だ。日本もそうだが、欧州でもCセグメント車からBセグメント車に乗り換える人が増えているのだという。人気のコンパクトSUVはその代替先として最適だが、そうなると選ぶユーザーの要求レベルも高くなる。小さい車に乗りたいがクオリティまでは落したくない、というわけだ。そこで新型キャプチャーでは、とにかく上質さに磨きをかけた。確かにこれならば上級車から乗りかえても、満足できる内容だ。
一方、上質感だけでなく、高い機能性も両立している。運転席周りは、ルノーが「スマートコクピット」と呼ぶコンセプトに基づいてレイアウトされ、表示パネルや操作系はドライバーの方に傾けて配置されており、見やすく、操作しやすい。基本的な構成は昨秋登場した新型ルーテシアと共通するが、センターコンソールの位置が上げられ、シフトレバーが操作しやすくなっているのが大きく異なる部分。その下は大きな収納スペースとなっており、使い勝手も良い。シフトレバーの奥側にも収納スペースがあり、小物の収納に困ることはないだろう。またパーキングレバーもサイド式から電動式になり、ブレーキホールドも装備。これも見た目の質感を向上させるとともに、扱いやすさを向上させている。


トルクフルなエンジンとしなやかな足回り
搭載するエンジンは最高出力154ps、最大トルク270Nmを発揮する1.3Lの直噴ターボ。トランスミッションは7速AT(7EDC)が組み合わされている。
低回転域から力強いトルクフルなエンジンで、発進時からスムーズに加速。アクセルへのレスポンスも過敏過ぎずダル過ぎず、クセがないから街中でも扱いやすい。パワーに余裕があるので高速道路への合流時なども楽々。大きく踏み込まなくても必要なパワーが出てくるので、これも上質さを感じさせるポイントであろう。心地よく高速クルージングが楽しめるエンジンだ。燃費性能もWLTCモードで17.0km/Lとなかなか優秀である。

足回りを含めた全体のセッティングは、乗り心地優先。新型ルーテシアは、やや硬く締め上げ、キビキビとしたスポーティな乗り味に仕上げられていたが、新型キャプチャーはそれと比較してしっとりマイルド系。しなやかな足回りで少々荒れた路面でも乗り心地を損なわない。多人数乗車の機会も多いSUVに最適なセッティングといえるだろう。しかし、それでいて直進安定性やコーナーでの安定感は極めて高く、実にバランスよくまとめられている。
走行中の静粛性は非常に高い。エンジンを一気に踏み込んだ際もうるささは感じられず、ここでも質感の高さを実感させられた。アイドリングストップからの再始動はわずかにタイミングが遅れる感はあるものの、しばらく乗っていれば慣れてしまうレベル。走りの面でもダウンサイザーを納得させてしまうことは間違いない。
コンパクトSUV検討者は絶対に試乗すべし!
プラットフォームから一新し、すべてに渡って大きく進化を遂げた新型キャプチャーは、まず間違いなくこのクラスでトップレベル。先代キャプチャーの弱点であった貧弱な(というかほとんどなかった)先進安全運転支援装備も、新型ではフルに標準搭載されており不満は解消。それでいて価格は標準グレードの「インテンス」で299万円、上級の「インテンス・テックパック」で319万円。ナビゲーションや9スピーカーのBOSEサウンドシステム、360度カメラなども標準装備されていての価格だから、国産コンパクトSUVと比較しても割安だ。
走りの面でも大いに満足できる。クセがなく、誰でも運転しやすい車だ。国産車から乗り換えても違和感を感じることはなく、初めての輸入車としても最適な車といえる。また、コンパクトでも上質なクルマに乗りたいというユーザーにもオススメだ。
というわけで、国産・輸入車を問わず、コンパクトSUVを検討しているユーザーは、ぜひ一度試乗してみて欲しい。その完成度の高さには必ずや驚くはずだ。欧州で一番売れているコンパクトSUVは、やっぱりダテじゃないのである。(鞍智誉章)