「トヨタモビリティ東京」(片山守社長)は10月8日、同社トヨタブランドの移転新築第1号店となる「練馬北町店」の竣工式を行い、同月10日に営業を開始した。同店は、トヨタディーラーが推進する「店舗完結型営業」が実践できる店舗をコンセプトに設計。また、新型コロナウイルスがもたらした「新しい生活様式(ニューノーマル)」に対応すべく、来店客と従業員の安全・安心を確保する工夫も取り入れる等、この先のディーラーのあり方を提唱する時代に先駆けた店舗としても注目されている。
店舗完結型営業を実践できる店舗へ
10月10日にグランドオープンを迎えた練馬北町店は、旧東京トヨペット練馬北町店として1989年9月に開設。旧店舗は、当時の一般的な訪問型営業を前提とした設計のため、来店客の駐車スペースには限りがあり、またサービス工場は2階に配置されたことによる取り回しの悪さなど、増大する来店客の入庫対応に苦慮。そこで新店舗は、同社の中期経営計画に基づいた店舗完結型営業が実践でき、店舗で来店客との絆を深めることができる店づくりを基本コンセプトに設計された。
具体的には、来店客の導線に基づき、各フロアに機能別のゾーニングを設定。各ゾーニングに配置したデジタルツールを活用して従業員全員の情報共有を行う等、効率の良いおもてなしを可能にした。
店舗は、1階が車両展示場、サービス受付とクイック整備場、2台分の納車コーナーとなっており、2階は新車ショールームとサービス工場となっている。1階ピロティは、全天候型の展示場とすることで、将来の対応として24時間運用可能なカーシェアスペースや急速充電器の設置も可能としている。
2階は、エレベーターの扉が開くとショールームを一望できるようになっており、スタンディングカウンターのショールームスタッフがすぐに出迎えることができるようレイアウト。インテリアは落ち着いた木目基調で統一し、コーポレートカラーのレッドをアクセントに取り入れた、親しみやすいデザインとしている。商談スペースには、全てのテーブルに32インチのタッチパネルモニターを配置。来店客に効果的な提案を可能としている。
また、レイアウトの自由度を高めるため、大型サイネージやテーブル、キッズコーナー等は可働タイプになっている。
新型コロナへの対応設計で安心・安全を確保
ショールームには、既存店舗以上に各所に換気窓が設置されている。これは、新型コロナウイルスへの対応策を計画段階から取り入れ、密室を作らない、飛沫感染を防ぐといったニューノーマルをコンセプトとした店舗設計になっているからだ。特徴的なのは、密室になりがちだったスタッフルームをオープンオフィス化し、対面式ではなく一方向に向けて並べたスタンディングカウンター採用により、従業員間の感染リスクを軽減。加えて、オープンオフィス化したことで、素早い来店客対応も可能にした。
また、ショールームのテーブルやイス等の什器は抗ウイルスタイプを使用。ソーシャルディスタンスが保たれるよう席の配置にゆとりをもたせ、全席にアクリル製の飛沫感染予防シールドを設置している。
SDGsを取り入れ全ての人にやさしい設計
国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の目標期限2030年まで10年を切った今、取り組みを積極化する企業が増えている。同社もSDGs活動の一環として、様々な取り組みを加速させており、店舗設計においてもSDGsの考えに則し、来店客にも従業員にも優しい店づくりを実施。来店客が快適に滞在できるよう、1階と2階の2カ所にバリアフリートイレを設置。車両エレベーターは両方向出庫タイプを2機設置し、事故防止を図る車両探知センサーを採用。サービス工場も全館空調とする等、従業員の職場環境と安全性の向上も図っている。
また、練馬区との帰宅困難者受け入れ協定に基づき、屋上には貯水機能付き給水機「マルチアクア」を設置し、災害時には帰宅困難者100人を3日間受け入れることができる体制を整えている。