日産自動車は5月13日、ビジネス環境の変化に迅速に対応できるスリムで強靭な事業構造の実現を目指す経営再建計画Re:Nissanを発表した。
同社は、Re:Nissanを通じて2024年度の実績比で、固定費と変動費を計5,000億円削減し、2026年度までに自動車事業における営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化を目指す。
◆変動費の削減
2,500億円の変動費の削減を目指し、エンジニアリングとコスト効率を向上させ、厳格なガバナンスで同取り組みを推進。TdCトランスフォーメーションチーフの下に各部門から集められた約300人のエキスパートで構成するTdC改革オフィスを設置し、コストに関する意思決定を実施する。
さらに、先行開発や2026年度以降の商品の開発を一時的に停止して、3,000人の従業員がコスト削減活動を実施するが、開発期間を短縮するプロセスを迅速に適用することで、商品の市場投入の遅延はないとしている。
また、日産はサプライヤーパネルを再構築し、より少数のサプライヤーでより多くの量を確保する他、非効率さを排除し、従来の基準の見直しを図る。
◆固定費の削減
変動費の削減に強力に取り組みながら、固定費を削減する機会も追求し、2026年度までに2024年度実績比で2,500億円の削減を目指す。
◆生産の再編と効率化
車両生産工場を2027年度までに17から10の工場に統合。パワートレイン工場についても見直しを行い、配置転換や生産シフトの調整に加え、設備投資も削減。北九州市におけるLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリー新工場の建設中止も同取り組みの一部。
◆人員の削減
2024年度から2027年度にかけて計20,000人の人員削減を実施(発表済の9,000人の削減を含む)。対象には、グローバルに生産部門、一般管理部門、R&D部門の直接員、間接員、及び契約社員も含まれとり、販売費と一般管理費においても、シェアードサービスの範囲を拡大し、マーケティングの効率向上を推進する。
◆開発の刷新
エンジニアリングコストの削減や開発スピードの向上を図るため、開発のプロセスを刷新。グローバルでR&Dのリソースの合理化を通じて、平均の労務費単価を20%削減することを目指す。
部品種類を70%削減するとともに、プラットフォームの統合と最適化を進め、プラットフォームの数を2035年度までに現在の13から7に減少。リードモデルの開発期間を37ヶ月、後続モデルの開発期間を30ヶ月へと大幅に短縮する取り組みを進めており、同取り組みで開発される車種には、新型スカイライン、新型グローバルC SUV、新型インフィニティコンパクトSUVが含まれている。
◆市場戦略と商品戦略の再定義
商品戦略は市場とブランドに焦点を当てて再構築。新たな戦略は、日産ブランドの鼓動を具現化したアイコニックなモデルを中心に、収益や成長に貢献する量販モデル等によって構成される。
市場戦略では米国、日本、中国、欧州、中東、メキシコを主要市場として位置付け、他の市場についてはそれぞれの市場要件にあわせたアプローチを実施。米国では、ハイブリッドなど急速に拡大するセグメントへの対応や、日産ブランドとのシナジーを通じたインフィニティブランドの再生に取り組む。日本では、モデルカバー率を拡大してホームマーケットにおけるブランドを強化。中国では複数の新エネルギー車(NEV)を投入し、市場でのパフォーマンスを強化する他、中国からの輸出により多様でグローバルなニーズに対応。欧州ではB/CセグメントのSUVに集中する他、ルノーグループや中国でのパートナーシップを活用してラインアップの拡充を推進。大型SUVを中心に販売する中東では、中国からの供給についても検討してラインアップの競争力を向上。メキシコは重要な輸出ハブとしての役割を果たしながら、収益と成長に大きく貢献する。
◆パートナーシップの強化
アライアンスパートナーであるルノーおよび三菱自動車とはいくつかのプロジェクトが進行中で、三菱自動車とは、先日発表された次期型「日産リーフ」をベースとした北米市場向け新型電気自動車(BEV)や、2025年度に市場投入予定のフィリピン向けの新型バンで協業。また、日産とホンダは自動車の知能化・電動化における戦略的パートナーシップの枠組みにおける連携を継続する。