【河村康彦 試乗チェック】フォルクスワーゲン・ID.4 ブランド初、SUVのピュアEVに乗る

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EVにありがちな“爆速”よりも日常の使いやすさを重視

フォルクスワーゲンが「自身のSUV初のピュアEV」と銘打って発売したニューモデル、『ID.4』をテストドライブした。

全長×全幅が4585×1850㎜で、全高は1640㎜というサイズのボディ骨格に採用をされたのは、「ロングホイールベース、ショートオーバーハングによってサイズ比で1クラス上の室内空間を実現」と謳われる、”MEB”と名付けられたピュアEV専用に開発されたアーキテクチャー。

EV専用のMEBによりロングホイールベース、ショートオーバーハングが実現

日本にはバッテリー容量とモーター出力が異なる後2輪駆動の2タイプのモデルが導入され、『ライトローンチエディション』では52Kwhのバッテリーと、最高125kW(≒170PS)の出力と最大310Nmのトルクを発するモーターの組み合わせ。また、『プロローンチエディション』には同じく77Kwh容量のバッテリーと、150kW(≒204PS)/310Nmを発するモーターが組み合わされる。

ボンネットフードを開けたところ。駆動用のモーターは車両後部に搭載される

テストドライブを行ったのは後者。バッテリーが敷き詰められたことでやや”高床”の印象はあるものの、確かにレッグスペースはなかなかの広さ。インテリア全体の質感はまずまずの高さで、物理的なスイッチが減らされたことにより見た目もスッキリしているものの、多くの操作系がディスプレイ内の表示に置き換えられたことで、そこを注視する必要に迫られるなど、かえって使い勝手が悪化したと感じられる部分も少なくないのは、実は昨今リファインの手が加えられた多くのVW車に共通するウイークポイント。センターディスプレイの大型化によって空調吹き出し口が下方に追いやられ、いわゆるフェイスレベルの空気の流れが得られなくなってしまったことも同様だ。

ツートーンカラーのインテリア。丸で囲んだ部分にあるのが回転式のATセレクター

小ぶりのメーターパネル右横という意表を突く場所に設けられた、回転式のATセレクターでDレンジを選んでアクセルペダルを踏み込むと、0~100㎞/h加速タイムが8.5秒というデータからも推測できるように、動力性能は「一部のピュアEVに見られるような”爆速”こそないものの、日常走行では十二分に速くストレスのないもの」という印象。ただし、アクセルオフの際にはコースティング状態となるので、エンジンブレーキ程度の減速度が発生するBレンジを常用する方が個人的な感覚にはより合っていた。

日常走行では十二分に速くストレスもない

ピュアEVゆえに基本的な静粛性には富んでいるものの、逆にそれゆえドラミング的な音圧を鼓膜に感じたのはやや気になったポイント。同時に、首都高速の継ぎ目通過時などにヒョコヒョコした動きが目立ちがちだった点には、SUVの風情を演じる意図もあってか20インチとオーバーサイズ気味に思えたパンクシール剤入りの”モビリティタイヤ”を装着する影響もあったのかも知れない。

20インチの”モビリティタイヤ”

ちなみに、そんなID.4の発売と同時に発表されたのが、これまでポルシェとアウディによって提供されて来た、各ブランドの販売店や都市部に展開される90~150kW級の急速充電ネットワークである『プレミアムチャージングアライアンス』へのフォルクスワーゲンの加盟。大容量バッテリー搭載のピュアEVには必須と思える大出力充電器の整備が遅々として進まない日本だけに、このニュースは車両そのもの以上に見逃せない話題と言って良いものだ。

(河村 康彦)

(車両本体価格:499万9000円~636万5000円)

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