2018年に登場した三菱「エクリプス クロス」が初のマイナーチェンジを実施。デザインの刷新とともにボディサイズの拡大も図られているが、最大の注目はプラグインハイブリッド(PHEV)モデルが追加されたことだろう。
新型エクリプス クロスのボディサイズは、全長4545mm×全幅1805 mm×全高1685mm、ホイールベース2670mmで、全長は従来から140mm延長しているが、それ以外は不変。伸びやかなフォルムを手に入れている。
エクステリアのデザインも刷新され、フロントグリルはメッシュタイプになり、ランプのレイアウトや形状を見直すことで、三菱自動車のデザインコンセプトである「ダイナミックシールド」を進化させ、スポーティな雰囲気に仕立てた。加えて、バンパー下部にはアンダーガード風ガーニッシュを加え、SUVとしての力強さを表現している。
フロント以上に大きな変化があったのはリヤのデザイン。従来型のリヤゲートは上下に分割されたダブルウインドウが特徴的であったが、マイナーチェンジでシングルウインドウに改められた。独特のスタイルだった従来型も支持を集めていたが、シングルウインドウになったことで見た目の重心が下がり、クーペライクで正統派SUVのスタイルの方が多くのユーザーに好まれるのではないだろうか。
また、ルームミラーに映る後方視界もシングルウインドウになったことで、下方の視界は無くなったが、リヤガラスを横に貫くピラーも無くなったので、運転してみてむしろ今までより見やすくなったように感じられた。
インテリアは、ディスプレイオーディオが8インチとなり、PHEVではメーターやシフトレバー、エアコンパネルが専用設計されている。さらに、従来型の上位グレードに装備されていた「タッチパッドコントローラー」は無くなり、センターコンソールまわりのデザインもすっきりとした。
荷室はリヤにモーターを搭載するためガソリンに比べるとは若干狭くなるものの、PHEVモデルで359Lとした。全長が拡大されたことによって、後席の足元空間も十分な広さが確保されていて、9段階のリクライニングを活用することで優れた居住性を実現しており、ファミリーユースにも応える。なお、従来型ではあった後席のスライド機構は廃止されている。
■ツインモーター式4WDがもたらす気持ちの良い走り
パワートレーンは1.5LガソリンターボとPHEVの2タイプで、2019年6月に追加設定されたクリーンディーゼルは廃止となった。個人的には、低回転から豊かなトルクを発揮し、4WDとの相性が良かったディーゼルのカタログ落ちは残念であった。
PHEVのパワーユニットは、アウトランダーでも定評のある2.4Lガソリンエンジンと、前後車軸に各1基ずつのモーターからなるツインモーター4WD方式のシステムをエクリプス クロスに最適化して搭載する。
システムを起動するとエンジンは始動せず、音も無く走りだす様はまさにEV。このシステムの優れているのは、よほどアクセルを踏み込まなかったり、バッテリーの残量が低下していなければほぼEV走行できる点。登り坂や高速での合流といった、パワーが必要な場面でもEV走行を保てており、極めて高い静粛性と合わせて特筆すべきポイントである。
また、走行用バッテリーの電力でモーターを駆動する「EV走行モード」とエンジンが発電した電力でモーターを駆動する「シリーズ走行モード」、エンジンが発生した動力による走行をモーターがアシストする「パラレル走行モード」の三つの設定を、状況に応じて自動で切り替えられるのが特徴となっている。
走行モードは五つが設定されていて、一般的なスポーツモードを意味する「ターマック」にすると、アクセル操作のレスポンスが大きく高まる。運転していて楽しいモードではあるが、その分バッテリーの消費も激しくなるうえに、ノーマルモードでも不足ない走りなので、普段使いはノーマルで十分と言える。
ハンドリングは扱いやすさを重視しながら、程よい操舵感のあるセッティングで応答性も良好。コーナーでも確実に路面を捉える走りは安心感も高く、ワインディングでの走行は、クルマとの一体となった走りを体感できる。
駆動用バッテリーを床下中央にレイアウトしたことによる前後重量バランスの最適化と低重心化が図られている。コーナーでクルマの姿勢が崩れるような頼りなさは無く、それでいて乗り味はどちらかと言えばソフトな印象なので、EV走行のフィーリングと合わせて独特な感覚を覚えた。
先進安全装備は衝突被害軽減ブレーキや全車速追従ACCなど最低限は備えるが、レーントレースは機能に含まれていない。乗り出し400万円を超える価格を考えると、不足感は否めない印象である。
ただ、トヨタ・RAV4 PHVにはない急速充電と200Vの普通充電の両方に対応するエクリプス クロスPHEVが385万円~という価格設定は十分戦略的。エコカー減税や重量税免税といった恩恵も受けられ、バッテリーのみでの航続可能距離は57.6km(WLTCモード)と、普段使いはEVで、遠方に行くときは電欠の心配のないPHEVは、現在発売されているエコカーの中では最も使い勝手に優れている。
さらに、ラゲッジルームには1500WのAC100V電源が備えられており、バッテリーとエンジンでの発電を組み合わせれば最大で一般家庭における約10日分の電力供給ができるので、万が一の備えとしても有効だ。