トヨタ自動車は12月9日、燃料電池自動車(FCV)のMIRAI(ミライ)のフルモデルチェンジを発表した。初代のウイークポイントを克服しつつ、クルマを見た時、運転している時、乗り終わった時、それぞれの瞬間で〝いいクルマ〟〝欲しいクルマ〟と思われることを目指し開発された。航続距離は従来型比3割増の850km(ZGグレード、WLTCモード)となった。
■エモーショナルなスタイリング
新型MIRAIはスタイリングの良さで選ばれるクルマを目指し、エクステリアを作り込んだ。スピード感あふれるプロポーションと、大胆な面変化を重視した造形を組み合わせた。このスタイリッシュなボディを際立たせる、陰影感と鮮やかさを兼備した新開発色〝フォースブルーマルティプルレイヤーズ〟を含む全8色の車体色を設定した。
■磨き上げられたFCVらしい走り
FR高級車用に開発されたGA-Lプラットフォームをベースに、後部等各部の構造を見直しボディ剛性が徹底的に強化された。FCスタックは小型化・高出力化されフード下に、モーターと駆動用バッテリーはリヤに配置され、後輪駆動となった。さらに、水素タンクを含めたFCシステムの最適配置により、前後50対50の理想的な重量配分を手に入れた。
この結果、アクセルを踏んだ瞬間からトルクが立ち上がり、どこまでもスムーズに伸びるFCVならではの加速特性が向上。本来エンジン振動や騒音がないことに加え、徹底したボディ剛性の向上や遮音対策で、圧倒的な静粛性を手に入れた。
■先進安全装備も充実
最新の予防安全パッケージ〝トヨタセーフティセンス〟を採用。中でも、プリクラッシュセーフティは、交差点右折時の直進車両と右左折時の前方から来る歩行者が検知対象に加わった。また、車道の歩行者に対して、車線を逸脱しない範囲での操舵アシストを行い、ドライバーの衝突回避を支援する。
レーダークルーズコントロールには、カーブでシステムが速度抑制が必要と判断すると、ハンドル切り始めで速度抑制を開始し、切り戻しで速度抑制を終了する〝カーブ走行速度抑制機能〟が加わった。
さらに、レーントレーシングアシストの制御中、体調急変等でドライバーが無操作状態になると徐々に車両を減速させ、安全な停車を支援する。
高度運転支援技術〝トヨタチームメイト〟では、アドバンストパークの装着車を設定した他、自動車専用道路でドライバーの監視の下、システムが車線変更や車間維持、分岐、レーンチェンジ、追い越し等を行う、アドバンストドライブ装着車の21年発売を予定している。
■走行中排出するのは水ときれいな空気
FCVは、空気と水素を反応させ、電気と水が生じる。この吸入した空気を浄化して排出するシステムが搭載された(トヨタ初)。エアークリーナーでPM2.5レベルの細かい粒子までを補足し、ケミカルフィルターで有害な化学物資を除去し、PM2.5の発生を抑制するようにした。
発電に必要な水素は、フロアトンネルのスペースを活用することで搭載量が20%増えた(4.6kg↓5.6kg)。さらに、昇圧コンバータへのSic半導体採用や、2次電池にリチウムイオン電池を使用したことで損失を低減。また、FCスタックの性能向上や触媒リフレッシュ制御の導入により発電効率が向上した。この結果、フル充填後の航続距離は従来型比3割増となる850km(Gグレード、WLTCモード走行)を実現した。
FCVは、停電等非常時の電源としても有効だ。フード下に外部給電用のアウトレットが設けられ、最大9kWの給電が可能は他、家庭と同じコンセント(AC100V/1500W)を2カ所持ち、電気製品が使用できる。この非常時給電システムは、一般家庭の約4日分の給電に対応できる。
【希望小売価格】710万円~805万円(140万円前後の優遇税制+補助金あり)