BMWディキシーって知っていますか

コラム・特集 車屋四六

若い編集者が避けるのか、年を取ると新車の記事依頼が減り、書き手が少ない昔の車の原稿依頼が多くなる。まるで古道具骨董専門商的になっただけに、古い車に出会うと嬉しくなる。

毎年三月末に出掛けるバンコク自動車ショーのクラシックカー展示、ここ数年少なくなり淋しい思いだが、昔は盛況だった。例えば、2010年には、ポルシェ2台、ベンツ2台、シトロエン2CV、ロールスロイス、ジャガーE、シボレースティングレイ、BMWイセッタ、オースチンセブンが一室に集まった特別展示室は壮観だった。

その日、ふとオースチンセブンを見つけると、何故か連想したのがディキシーだった。航空発動機専門のBMWがWWⅠの敗戦で、やむなく開発したオートバイが好評で、次に目指したのが当たり前のように、四輪乗用車造りだった。

話しは更に古く、1896年に創業のダイムラーとベンツに次ぐ第三の自動車会社アイゼナッハ自動車製造は、ライセンス生産した仏車デコーブにディキシーと名付けたのが1904年・明治43年だった。

ディキシーの名は、27年にライセンス生産を始めたオースチンセブンに引き継がれるが、会社が28年BMWに買収されても、セブンは継続生産されて、ディキシーはBMW初の四輪乗用車となる。

オースチンセブンとそっくりなBMW初の四輪乗用車ディキシー:三角のエンブレムから買収直後と思われる。

正式名をディキシーBMW3・3/15馬力。二座席ロードスターは巻上げ型幌+差込み型ドア窓・全長3米に満たない車体は440kg・748cc・15馬力/3000回転+3MTで最高速度75㎞だった。

その後、優れた技術屋集団のBMWらしく、種々改良が加えられた。マグネット点火が高圧コイル式に、前輪フートブレーキ+後輪手動式は、四輪フート式に。前輪横置きリーフ懸架が31年スイングアクスル型にというようにである。

とにかくバンコクで出会ってディキシーを想い出させくれたオースチンセブンだが、その30年型に乗ったことがある。が、左足の微調整が難しくいきなり食らいつくコーン型クラッチには手を焼いた…あれは「サドンデスクラッチ」呼ぶんだとは、後で会った英国人ジャーナリストから聞いた。

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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