都市部の使い勝手を追求した絶妙なサイズ感 マツダ・CX-30 試乗記

試乗レポート

CX-30は“私たちに、ジャストサイズのSUV”をキャッチコピーに、CX-3とCX-5の間に位置づけられたマツダの新型クロスオーバーだ。流麗なスタイルと取りまわしの良いサイズを両立し、MAZDA3に続く新世代商品の第二弾として話題の「スカイアクティブX」を搭載することでも注目を集めている。

ボディサイズは全長4395mm×全幅1795mmと、トヨタ・C-HRやホンダ・ヴェゼルとほぼ同じながら、全高を1540mm(C-HRは1565mm、ヴェゼルは1605mm)とすることで、機械式立体駐車場にも対応。国産・輸入車問わず多様化するSUVの中でも、都市部で日常的に使うことに適したモデルと言える。

エクステリアは、ボディサイドにプレスラインを設けず、余分な要素を削った柔らかい曲面で美しさを表現。ウインカーシグナルが心臓の鼓動のように明滅する「ディミング・ターン・シグナル」も他のモデルにはない特徴だ。

インテリア、ベースモデルのMAZDA3と共通する部分が多く、コクピット周辺の操作、機器、情報などをドライバー中心に左右対称に配置。肌が触れるところにはソフトパッドが多用されており、随所に質感の高さが見られる。

後席の足元空間は広々と確保されていないが、身長177cmの筆者が座っても膝前と頭上は握りこぶし1つ半ほどの余裕があり、CX-3ほど窮屈な印象はなくファミリーユースにも応える。Dピラーを寝かせることで、室内空間に大きな犠牲を伴うことなくスポーティでクーペのような流麗なスタイルを実現していた。また、リヤゲートは、エントリーモデル以外電動でゲートの開閉ができる「パワーリフトゲート」を装備しており、日々の荷物の積み下ろしで重宝しそうだ。

パワーユニットはガソリンが2.0L直噴(最高出力156PS/最大トルク199Nm)、ディーゼルは1.8L直噴ターボ(最高出力116PS/最大トルク270Nm)を設定。さらに、新世代ガソリンユニット、2.0Lスカイアクティブ-X(最高出力180PS/最大トルク224Nm)も採用され、今回はスカイアクティブXモデルに試乗する機会を得た。

■しなやかな走りと軽快感

運転席に座ってみると、一般的なSUVより全高が低いからか、見晴らしはセダンライクであることが印象的。乗り心地はやや硬めで、高速の継ぎ目などでは突き上げが気になる場面もあり、後席では前席よりその傾向が強い。日常的に3.4名乗車をするユーザーにとって、もっと穏健なセッティングであるほうが好まれる。

一方で、ハンドリングは程よい操舵感と応答性の高さを感じさせるもので、特にワインディングでのしなやかな走りや軽快感は、運転していて高揚感を覚えるほどであった。

スカイアクティブXエンジンは、2.0Lガソリンモデルと比較して全域にわたって太いトルクが感じられ、高回転までの吹けあがりの良さも好印象。エンジンのカプセル化などによる徹底的な遮音対策によって室内の静粛性は高く、運転中は気が付くと速度が思いのほか上昇していたという場面が多かった。

一方で、ディーゼルほどの強大なトルク感や、ターボのような鋭い加速やレスポンスは無く、2.0Lガソリンと劇的な性能差は体感できない。さらに、見た目においてもアルミホイールとやや太い径になったマフラー以外の専用装備は無く、2.0Lガソリンモデルとの約70万円の価格差は、新技術のエンジンを搭載しているとはいえ説得力に欠ける。

また、2.0Lガソリンモデルの走りも特に不満を覚えるものではないので、客観的に見れば現状2.0Lガソリンか、ディーゼルモデルを用途やライフスタイルに合わせて購入するのが最適と言える。

ただ、世界的に電動化への技術革新が進む中“エンジンにはできることが、まだまだある”と、革新的な新技術を市販モデルに搭載した意義は大きい。かつて夢のエンジンと言われたロータリーエンジンを実用化させ、近年は常に最良のモデルをユーザーに届けるという思想で改良を適宜行っているので、スカイアクティブXのさらなるブレークスルーや熟成に期待したい。

 

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