文・写真:吉田直志(automobile columnist)
早いもので、桜の季節もあっという間に過ぎ去り、新緑の季節となった。ちょうどこの時期、駿河湾では桜エビの春漁の季節を迎えていることをご存知だろうか。今回訪れた由比の港ではそんな新鮮な桜エビに出会え、そして富士山を眺めることができるスポットだ。ドライブの相棒に選んだのは日産「ティアナ」。残念ながら、雨模様となってしまい富士山を見ることは叶わなかったが、快適なドライブを愉しむことができた。
由比と聞いてもピンとこない人もいるかもしれない。現在の住所は静岡県静岡市清水区で、静岡市の中でも富士市との境にある。昔より交通の難所と呼ばれたところで、特に、由比と興津の間は海辺には断崖が続いており、かつての東海道は断崖の上の方に作られていたほど。現在では、海辺に東名高速道路が走り、すぐそばに国道1号線とJR東海道本線がある。そのため、台風の時など海が荒れると通行止めになることで、有名な地でもある。
由比は東名高速道路の富士ICと清水ICの間にあるが、富士川SAのスマートETC出入り口を使うとアクセスはとても便利。まず訪れたのは由比漁港だ。ここは、桜エビの水揚げで有名で、港には獲れたての桜エビやシラスが手に入る「由比港漁協直売所」と食事処「浜のかきあげや」がある。ドライブへと出かけて、いきなり食事というのもおかしなものだが、実は、桜エビ漁の時期は食事処は大混雑するため、お昼時はずらしたほうがいい。10時から開店しているので、ちょっと早めのお昼ご飯、もしくは、少し遅めの朝ご飯というドライブルートを組んでみることをオススメしたい。
この日は、桜エビが不漁のため、生の桜エビを食すことも、購入することもできなかったが、これも自然が相手ゆえのことで、仕方がない。ちなみに、由比では、港以外の街中でも桜エビを手に入れることができる。桜エビ漁は、6月上旬までだが、冷凍したモノも販売しているし、食事処も1年を通して営業しているので、この時期以外でも桜エビを求めて出かけてみてもいい。
次に訪れたのは、東海道の由比宿跡だ。通りにはイマドキの建物が見られるが、街のあちこちに当時を思い起こせる風景が残っている。本陣の跡は「由比本陣公園」として整備されており、園内には「東海道由比交流館」や「静岡市東海道広重美術館」があり、宿が賑わっていた当時の様子をうかがい知ることができる。
「由比本陣公園」から少し北へと向かうと、「西湖山林香寺」がある。駿河湾を望む景色が、中国の西湖からの眺めに似ていたことから、西湖山という名称が付けられた言い伝えがある寺だ。また、駿府に隠居していた徳川家康が鷹狩の帰りに立ち寄った際、山椒を浮かべた水を差し上げたところ、それをたいそう気に入って、それから山椒の献上が命じられたことでも有名。境内には、立木観音が彫られた楠もある。
由比といえば、桜エビのほかに、広重の浮世絵にも描かれた、手前に駿河湾が広がり、そして、遠くには富士山が見えるあの風景でもお馴染みだ。あのシーンは、当時の東海道にある「薩埵(さった)峠」より描かれたものだが、実は、現在でも旧東海道を歩くことで、同じ場所から富士山を望むことができる。ただし、駐車場までの道幅はとても狭く、由比側からの道中はオススメできない。興津側からアクセスするといいだろう(それでも道幅は狭いが)。ちなみに駐車場は10台足らずで、駐車場からは少し歩くことになる。平坦ではあるが舗装されていない道を歩くので、歩きやすいスタイルをお忘れなく。
快適な乗り味をさらに高めた新型ティアナは、今回の由比のドライブではまさに適役だった。フラット感を大切にした乗り心地は宿場町のゆったりとした雰囲気に見合っていたし、引き上げられたシャシーの剛性感は高速道路での移動で安心感があふれていた。また、コンパクトとはいえないボディながら、燃費に優れていたことも印象に残った。高速道路で丁寧に運転すると20km/Lを超えていたことをお伝えしておこう。
ドライブデータ
試乗車=日産 ティアナ XL
パワーユニット=エンジン排気量2488cc、エクストロニックCVT、FF
乗車定員=5名
全行程走行距離=約360km
立ち寄りスポット[マップコード]
・由比港 漁協直売所[72 037 853*05]
・由比本陣公園[72 068 463*27]
・西湖山林香寺[72 097 472*40]
※「マップコード」および「MAP CODE」は、株式会社デンソーの登録商標です。
※ナビの機種によっては、高分解能マップコードに対応していない場合があります。
プロフィール
吉田直志/automobile columnist
四輪駆動車専門誌、デジタルカルチャー誌の編集部を経て、フリーライターに。現在は新型モデルの評価を軸に、自動車雑誌のほか、ファッション誌にも寄稿。
(本稿は2014年5月に新聞「週刊Car&レジャー」に掲載)