文・写真:吉田直志(automobile columnist)
前回は暑い夏を乗り切るために涼を求めたが、今回は暑さから逃げるのではなく、逆に暑さを愉しんでしまう、そんなドライブルートを紹介しよう。その目的地はズバリ千葉県南端に位置する館山市。これまでに幾度も紹介してきた地域だが、あらためてその魅力を紹介していく。今回のドライブの相棒は、ルノー「メガーヌ」に追加されたベーシックグレードのゼン。その実力はベーシックという言葉から想像されるようなチープさはなく、ドライブを快適に、そして愉しくしてくれるというルノーらしさにあふれていた。
館山までのアクセスは、都心からは東京湾アクアラインを利用して館山自動車道へと入り、その終点である富浦ICで下り、そこから国道をしばらく走る。その距離は東京駅から館山駅まで距離にして約100kmであり、時間にして2時間もあれば到着できる。ただ、館山は、東京湾側の内房と、太平洋側の外房に面しており、景色もさまざまに変わるため、館山らしさをひとことで表現するのはなかなか難しい。今回は、そんな館山の代表的なスポットでも、海をキーワードに紹介していこう。
館山自動車道を下りてからは、国道127号線、国道410号線をつないで、太平洋を目指した。ICから海までは距離にし15㎞ほどあるが、国道410号線は信号も少なく、あっという間に到着できる。最初に向かったのは、相浜漁協直営の食事処である「相浜亭」。ドライブに出掛けて、いきなり食事というのもどうかと思ったが、人気店ゆえに売り切れとなることも多いため、まずは訪れることにした。最近、漁協直営の食事処が増えており、このコーナーでも房総半島にあるいくつかを紹介してきたが、ここ相浜亭はテレビで大々的に紹介されるとか。大型バスで観光客が来るような派手さはないものの、逆に素朴さがあってとてもいい。
早速におなかを満たした後は、房総フラワーラインへと向かうことにした。ここは、春先に何度か紹介しているドライブルートだが、この時期はさすがに菜の花ではなく、マリーゴールドが出迎えてくれた。ルート途中にある「道の駅 南房パラダイス」は、名称も一新したアロハガーデンたてやま(以前は南房パラダイス)を併設し、まさに南国気分に浸ることができる。また、この近くには「砂山」があり、その面積だけではなく、傾斜もあることから、砂山すべり、イマドキの言葉を使うならばサンドスキーを愉しむことができるなど、さまざまな館山を愉しむことができる。
そのまま、海沿いの道を西へと走っていくと、房総半島の南西端にある「洲埼灯台」へとたどり着く。こぢんまりとした灯台だが、内房と外房を一望できることから、是非とも訪れたい館山スポットのひとつだ。
ちなみに今回のドライブルートは食事を優先して紹介しているわけではない。実は、半島巡りをする際は、時計回りルートがオススメということをご存知だろうか。左側通行、つまり海側を走ることになるため、助手席はもちろん、運転席からも海を近くに見ることができる。
そんな海が見える景色を堪能しながらの館山ドライブで、外せないスポットが「沖ノ島」だ。かつては、沖合いにあった島だったが、いつしか地続きとなっている。ちなみに、島と陸地とを繋ぐ砂浜は、この時期は海水浴場となり、多くの人で賑わいを見せる。少し離れたところにある「渚の駅たてやま」も、以前紹介したスポットだが、食事処と土産処が加わり、さらに魅力的な施設へと変わっている。
この館山の内房ゾーンは、陽が暮れる景色が美しいことでも有名。特に渚の駅たてやまにある展望デッキから見る夕暮れは穏やかな湾内の景色も相まって美しい。時間が許すならば、夕暮れまで変わりゆく景色を堪能していただきたい。
今回のドライブに連れ出したルノー メガーヌ ゼンは、夏を愉しみながらの館山ドライブにぴったりだった。現行型メガーヌは、これまでRSやGTラインといったスポーティ系グレードのみが展開されてきたが、このゼンはいわゆるベーシックグレードとして追加されたもの。しかし、そこには物足りなさは全くなく、たとえば、1.2Lターボエンジンはパワー不足どころか、むしろ、パワフルさを感じたほどだったし、ハンドリング、乗り味含めて、スポーティし過ぎていないフィーリングに心地よさがあった。まさに、快適さを愉しむことができる、そんなクルマだ。
ドライブデータ
試乗車=ルノー メガーヌハッチバック ゼン
パワーユニット=ガソリンエンジン1.2Lターボ、エフィシエントデュアルクラッチトランスミッション6速、FF
乗車定員=5名
全行程走行距離=約240km
立ち寄りスポット[マップコード]
・道の駅 南房パラダイス[211 069 274*37]
・洲埼(すのさき)灯台[211 181 578*78]
・沖ノ島[1 123 252 898*00]
・渚の駅たてやま[211 252 357*67]
※「マップコード」および「MAP CODE」は、株式会社デンソーの登録商標です。
※ナビの機種によっては、高分解能マップコードに対応していない場合があります。
プロフィール
吉田直志/automobile columnist
四輪駆動車専門誌、デジタルカルチャー誌の編集部を経て、フリーライターに。現在は新型モデルの評価を軸に、自動車雑誌のほか、ファッション誌にも寄稿。
(本稿は2015年7月に新聞「週刊Car&レジャー」に掲載)