2022年7月に「4つの車型」が存在することが発表されたトヨタの新型クラウン。今回紹介するのは「セダンとSUVを融合させた新しいスタイル」と銘打って2022年9月に発売をされた「クロスオーバー」に続く、SUVテイストの強い「スポーツ」だ。
グローバル基準のサイズ感
「えっ!これがクラウンなの?」とこれまでの歴代モデルを知る人ならば例外なくそう感じるであろうこのモデルのボディ3サイズは4720×1880×1565mm。全幅が1.9mに近く標準で履くシューズが21インチ(!)といった点をみても、それはこれまでのように日本市場にフォーカスして作られたクラウンではなく、グローバルのマーケットを標的に据えていることは明らかだ。
現時点で発売されているのは、2.5Lの4気筒エンジンを組み込んだシリーズ/パラレル式のハイブリッドシステムをFWDベースの4WDシャシーに搭載するモノグレードのみと、構成は極めてシンプル。もっともすでにプラグインハイブリッド仕様も存在することが明らかにされ、同じFWDベースの「クロスオーバー」にはターボ付きエンジンを積むバージョンも存在することから、用意されるパワーユニットはこの先バリエーションを増やしていくことは確実と言って良い状況だ。
走りは抑えめ? この先のバリエーション展開にも期待
ワイドでグラマラスなスタイリングに熱い走りを期待したくなるが、動力性能はごく常識的なもの。モーターのパワーによる走り始めの印象は静かで滑らかだが、アクセルペダルを深く踏んだ際に耳に届く走行速度とはリンクをしない4気筒エンジンゆえのノイズは正直言ってちょっと興醒め。個人的には、この大胆なルックスのボディにお似合いなのは、もう少しパワフルな6気筒ユニットが生み出す力強さか、あるいはむしろよりレスポンスに長けたモーターのパワーではないかと、そんな無い物ねだりをしたくなってしまう。
このモデルのカッコ良さの決め手のひとつになっているのが大径のシューズにあることに異論はないが、時にややシャープな路面の凹凸感を伝えたり、ばね下の重さを意識させたりと、こと性能面にフォーカスをするとやはり“過大感”が捨てきれない場面もあるというのは事実。ちなみに、大径になるほどにタイヤ価格も急上昇をするので、摩耗時の交換にはそれなりの覚悟も必要となりそうだ。
ユーザー層の若返りを図ったモデルチェンジ
それにしても、ブランドを継承しながらここまで思い切ったモデルチェンジにふみ切っただけに、今度こそは長年の念願だったユーザー層の若返りと新規顧客の獲得が可能となりそう。
一方で、これまでは「クラウン」と名が付けばほぼ自動的に買い換えて来たという長年のファン層は切り捨てられたカタチとも受け取れそう。いずれにしても、名実ともに“リボーン”となった新型クラウン劇場は、これまでの日本にはなかった面白い展開を見せてくれることになりそうだ!
(河村 康彦)
(車両本体価格:590万円)