トヨタ、テクニカル・ワークショップで開発中の新技術を公開、2026年に次世代BEVを市場投入

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トヨタ自動車は、「クルマの未来を変えていこう」をテーマにしたテクニカル・ワークショップを東富士研究所で開催し、開発中の新技術を報道陣に公開した。

このワークショップでは、同社のビジョンや方針を実現するため、開発中のコンセプトも含む多様な技術を公開するとともに、副社長の中嶋 裕樹氏、BEVファクトリー プレジデントの加藤 武郎氏、水素ファクトリーのプレジデントに就任予定の山形 光正氏が、新組織での技術戦略と今後のクルマづくりの方向性やバッテリーEVおよび水素事業の戦略などを公開した。

【トヨタの技術戦略とクルマづくりの方向性/トヨタ自動車 副社長 中嶋 裕樹氏】

トヨタモビリティコンセプト実現の鍵として、新体制方針のテーマでもある「電動化・知能化・多様化」への取り組みを説明した。

  • 電動化:各地域の事情に応じた最適なパワートレーンの導入等、「マルチパスウェイ」の軸を推進。
  • 知能化:クルマやサービスに加え、Woven Cityなど、社会とのつながりを広げる取り組みを推進。
  • 多様化:すべての人に提供する移動の自由や多様なエネルギーの選択肢まで、「クルマ」から「社会」へと領域を広げた多様化を推進。

上記3テーマの推進のため、技術の領域において、カンパニー制発足当時の2016年以降、先行分野へのリソーセスシフトと未来志向での積極投資を進め、2023年3月時点、開発人員は半分以上をシフト、研究開発費は総額を増やしながら約半分を先行にシフトしており、今後さらに加速させるとしている。

また、クルマづくりにおいての軸として、①トヨタセーフティセンスをさらに向上し、妥協の無い安全・安心の追求、②世界中の仲間とつながり未来をつくる、③世界中の研究・開発拠点で「お客様のもとでの開発」を行う地域課の加速、以上の3点を挙げた。

トヨタ自動車 副社長の中嶋 裕樹氏

【次世代バッテリーEV戦略/BEVファクトリープレジデント 加藤 武郎氏】

良品廉価な“普及版電池”や全固体電池など次世代電池の実用化を目指す

グローバルかつフルラインナップの一括企画を推進。2026年に最初の次世代BEVを市場に投入する他、350万台のBEV販売を視野に入れた2030年には、170万台が次世代BEVになることを見込んでいるという

また、次世代BEV導入と併せて、電池も次世代電池へと進化。良品廉価な“普及版電池”、パフォーマンス性を追求した“パフォーマンス版電池”および“ハイパフォ―マンス版電池”、BEV用全固体電池を紹介した。

2026年に導入される次世代BEV搭載を目指して開発中のパフォーマンス版は、電池の高エネルギー密度化と空力等の車両効率の向上を図り、現行bZ4X比で、航続距離2倍の1000km、コスト20%減、急速充電20分以下を目指すとしている。

普及版では、HEV(ハイブリッド車)のニッケル水素電池で採用実績のあるバイポーラ構造をBEV電池にも適用。現行bZ4X比で、航続距離20%向上、コスト40%減、急速充電30分以下を目指し、普及価格帯のBEVへの搭載を検討。2026-2027年の実用化に挑戦するとしている。

上記2つの電池を融合したのハイパフォーマンス版(バイポーラ型リチウムイオン電池)では、正極にハイニッケル系素材を採用し、バイポーラ構造と組み合わせて進化を実現。パフォーマンス版との比較で航続距離10%向上、コスト10%減、急速充電20分以下を見込んでおり、2027-2028年の実用化を目指すとしている。

BEV用全固体電池では、課題だった電池寿命を克服する新技術を発見。従来のHEVへの導入を見直し、BEV用電池として開発を加速 。量産に向けた工法を開発中で、 2027-2028年の実用化に挑戦するとしている。

また、ロケットに使われている極超音速空力技術をBEVに適用し、空気抵抗を低減する新たな空気抵抗削減技術を、三菱重工業 宇宙事業部と共同で技術検討を実施。クルマの形状にとらわれずに空気抵抗を軽減出来ることにより、魅力ある意匠およびパッケージと空力との両立が可能になるという。

次世代BEVの生産では、従来数十点の板金部品で作っていたものを、アルミダイキャストで一体成形するギガキャストの開発を推進。車体を3分割のシンプルスリムな新モジュール構造とし、ギガキャストを採用することで、大幅な部品統合を実現。これにより、車両開発費、工場投資の削減にも貢献する他、自走生産の技術で工程と工場投資を半減させる

BEVファクトリープレジデントの加藤 武郎氏

【水素事業戦略/水素ファクトリープレジデント(7月1日付就任予定) 山形 光正氏】

低コストかつ航続距離が長い次世代FCスタックを開発、水素を「つくる」にも着手

7月から新たに設置予定の水素ファクトリーでは、①マーケットのある欧州・中国を中心に現地に拠点を設置し取り組みを加速、②有力パートナーとの連携を強化し、連携を通じて数をまとめることで手頃な価格の燃料電池を実現、③次世代セル技術やFCシステムといった「競争力のある次世代FC技術の革新的進化」への取り組み、以上3つの軸で事業を推進するとしている。

商用ユースを中心に水素需要を拡大するため、2026年の実用化を目指して革新的な次世代FCシステムの開発と、大型商用車向けの液体水素タンクや様々なタイプの車両に対応できるよう搭載性に配慮して設計した 水素タンクの開発を推進。次世代FCシステムでは、技術進化、量産効果、現地化により、37%の原価低減を実現。ディーゼルエンジン車を凌ぐメンテナンスの容易さ、発電量は現行モデル比で130%、スタックコストは現行モデル比で1/2、 航続距離は現行モデル比で20%向上を見込んでいるという。

また、水素の普及を図るため、水素を「つくる」「はこぶ」「つかう」のうち、「つくる」取り組みを実施。水電解による水素製造や、バイオガスから水素を製造する取り組みを実施している。

 水素ファクトリープレジデントに就任する山形 光正氏
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