鋭い加速は“スポーツ・プリウス”と呼べそう
すでに新型プリウスの印象はお伝えしているが、今回お届けするのはその駆動用バッテリーを外部充電に対応したより大容量のものへと置き換えた、いわゆるPHEV(プラグインハイブリッド)バージョンの話題。
ただし、そんなこのモデルでの見どころはそれだけではなく、従来型の場合には基本的に通常のハイブリッド仕様と変わらなかったモーターのスペックまでもが異なっている。具体的には新型の場合、ベース仕様が搭載するモーターの最高出力が83kW≒113PSであるのに対して、PHEVの場合は120kW≒163PSへと大幅アップ。すなわち新型プリウスの場合、PHEVグレードはシリーズ内のハイパフォーマンス・バージョンという明確なるキャラクター分けが行われることになっているわけだ。
もっとも、そんな両者を外観上から瞬時に見分けるのはなかなか難しい作業。左側リヤフェンダー上に充電用のリッドが新設されていたり、PHEV用専用デザインのホイールを装着していたりと識別のポイントが無いわけではないのだが、それも予め知識として知っていればこそ…という印象だ。
ちなみに、これまで”チャデモ”対応を行ってみたり、止めてみたりと急速充電に対しては紆余曲折(?)の経緯を辿ってきたプリウスのPHEV仕様だが、最新モデルでは再びの「対応ナシ」を選択。EV走行可能距離も87㎞と歴代モデルでひと際の長さを誇る最新モデルだが、それでも「充電ナシでもガソリンがある限り走り続けられる」というのはPHEV最大の特徴。ピュアEVが増加を続け、昨今では”充電渋滞”も珍しくなくなっている中では、敢えて急速充電に対応しないというのはひとつの見識であるはず。これが、今後の各PHEV車の基準となって行くかは見もののひとつだ。
0→100㎞加速タイムが6.7秒と豪語するスポーツカー級加速力の凄さはアクセルのひと踏みで明白。話題の流麗なスタイリングも含めて「歴代初の”スポーツ・プリウス”」とそう評しても良いかも知れない。一方で、フットワーク全般の軽快感はベース仕様のFWDバージョンが上。ここでは、さすがに150㎏という重量差が効いているという印象を受ける。
そんなPHEVバージョンに”死角”があるとすれば、それはこちらには4WD仕様の設定が無いこと。従来型ではボディ後端に置かれていた駆動用バッテリーが後席下に移動されて十分なラゲッジスペースが捻出された一方で、そこから追い出された燃料タンクが従来バッテリーのあった場所へと移動。それゆえ、後輪用モーターを置く場所はどこにも見当たらず、現状のパッケージングでは「PHEVの4WD仕様」は成立しないのだ。この先、そんな難題も技術の進歩で解決される時がやって来るのだろうか…。
(河村 康彦)
(車両本体価格(PHEVのみ):460万円)