2024年末までに全車電動化を表明するランボルギーニ。EVも加えつつ、今後はプラグインハイブリッドが当面の主力となる予定だ。というわけで、現行ウラカンはモーター駆動のない純エンジンのランボルギーニ車としては最後の世代となる可能性が高く、ある意味、これまでのランボルギーニの集大成ともいえそうだ。
今回試乗したのは、ウラカンの中でもレース車直系の「ウラカンSTO」。最高出力640hp、最大トルク565Nmを発揮するNAの5.2リッターV10を搭載し、0-100km/h加速はわずか3秒という圧倒的な速さを誇る。最強の市販ロードカーだ。
となれば過激でピーキーな性格を予想するが、実際に運転して見ると予想に反してドライバーに優しいクルマだった。もちろん低いシートポジションや背後から迫るエンジンの轟音、硬めの乗り心地など普通のクルマとは明らかに異なるが、アクセルやステアリング操作に対して過敏な反応はなく、発進から巡行域までごく自然な感覚でドライブできる。
本領はサーキットで発揮するクルマだが、少しアクセルを踏んだだけで突如として大パワーが出てくるようなタイプではないので、公道を流して走るようなシーンでも不安はない。アクセルの踏み量に応じてごく低速域からスムーズに必要な分だけのパワーが出てくるので、街中でもギクシャク感は皆無だ。サーキットで全開走行をすればまた違う印象になったかもしれないが、公道を普通の速度で走る分には、意外なほど扱いやすい。
ステアリング操作に対する反応も素直で、この点でも気を使わない。大パワーかつ後輪駆動、さらにリヤミッドシップともなれば、制御困難な暴れ馬のようなクルマになってもおかしくないが、ウラカンSTOは直進での安定感はもとより、コーナーでの安定感も抜群だ。挙動が自然過ぎて体感ではわからないが、きわめて緻密に制御されているのだろう。普通のドライバーでも気負わずにドライブを楽しめるクルマに仕上がっている。公道からサーキットまでシーンに合わせた楽しみ方が出来るというのは、さすが現代のスーパーカーである。
とはいえ全体的にみると、やはり普段使いで気楽に使えるクルマではない。ボタン一つで地上高を少し上げることは出来るものの段差には気を使うし、乗り降りもしやすいとは言い難い。死角も多く、特に走行中に真後ろが見えないのは目立つクルマだけに不安だったりする。昔のスーパーカーに比べて格段に乗りやすいクルマになったのは事実だが、それでも普通のクルマとまったく同じというわけにはいかない。
ただし、そんなところを楽しむのもスーパーカーの魅力と捉えたい。優しくなったとはいえ、やはり実用車とは対極にある特別なクルマなのである。また逆に、気を使わずに乗り回せるハイパフォーマンスSUVのウルスが売れているのも納得できるところである。(鞍智誉章)