【河村康彦 試乗チェック】ヒョンデ・アイオニック5 次々と“先入観”が覆される

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操作性の良さ、ワクワク感、先進性で日系EVを凌駕

世界のマーケットで、ブランド呼称を本国韓国での発音に準じたものに統一しようという動きから、かつて使われていたヒュンダイの名称を改めつつ日本への再上陸を果たした”ヒョンデ”のブランド。実は世界市場での年間販売台数がトヨタ、フォルクスワーゲン・グループに続く世界第3位という規模にあるこのブランドが、2021年に発表をした最新のピュアEVが『アイオニック5』だ。

実は見た目以上に大柄なクルマ

日本では2022年2月に発表されたこのモデルをテストドライブ。今回乗ったのは、1モーターで後輪が駆動される2WD、2モーターで4輪が駆動される4WDと用意をされる中での後者。ヘッドライトやテールランプなど様々な部分に”ピクセル”(画素)というテーマが用いられたそのルックスは、なかなかに個性的で未来風のデザイン。リヤにテールゲートが採用されたハッチバックのボディは、4.6mプラスの全長に対して全幅はおよそ1.9m。全高も1.6mをオーバーしホイールベースも3mに達するから、実は見た目以上に大柄なクルマでもあるのだ。

各部のデザインはピクセルがテーマ
リヤにテールゲートを持つハッチバックボディ

走行時にはボディに格納される”オートフラッシュ”式と呼ばれるドアハンドルを引いて室内に踏み入れると、そこは何とも斬新でモダンな空間。後席足元が完全にフラットなのは、ピュアEV専用の骨格が採用されているからこそ。いずれにしても、この段階で「正直、韓国車に対するイメージが変わった!」という人も少なくないに違いない。

乗り込むと斬新でモダンな空間が広がる

 

そうした良い意味での「先入観が覆される」という印象は、いざ走り出してからも続くことになる。テストドライブした4WD仕様は、2WD仕様よりも太く大径なミシュラン製のEV専用20インチ・シューズを装着。60㎞/h程度までの速度域では路面凹凸をややシャープに拾う感触はあるものの、サスペンションの動きそのものはスムーズでクルージング時のフラット感も良好。

ミシュランのEV専用タイヤを装着

ちなみに、そんなクルージングのシーンでは日本向け仕様としてコラム右側にレイアウトをされたウインカーのレバーや、その動作と共に正面ディスプレイ内に表示をされる該当側の後方の映像、前車追従式クルーズコントロールのセットのしやすさなど、様々な機能の充実ぶりやその操作性の良さなどにいたく感心をさせられることにもなった。

ウインカーを出した側の後方がディスプレイに表示される

絶対的な加速の能力は十二分に高く、常時4輪駆動となるスポーツ・モードはもちろん、日常シーンでは後輪駆動をベースとしながら必要に応じて前輪も駆動力を発する、ノーマル走行のモードでもトラクションの能力に不足ナシ。アクセルOFF時にコースティング走行を行うモードから完全停止までを行う1ペダル走行まで、回生減速力をパドル操作で簡単に選択できる機能も、「走行テストを繰り返しながら設定をしたのだろうな」と想像ができるものだった。

前後二つのモーターで4輪を駆動。加速性能は十二分に高い

ディーラー網を持たず全てをインターネット上で完結させる販売方法など、確かに不特定多数の人に訴求をするためにはまだハードルとなりそうと思える部分も存在するものの、単にEVだからというだけでなくワクワクする体験を味わわせてくれるという観点からも、率直なところ「現存する多くの日本製EVを凌いでいる」と実感させられる脅威の実力の持ち主だ。

(河村 康彦)

(車両本体価格:479万円~589万円)

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