ラージSUVとは思えないコーナーの心地よさ
3.3リッターで直列6気筒というスペックのターボ付きディーゼル・エンジンがNEW、ステップATながらトルクコンバーターを廃した8速トランスミッションがNEW、そしてそんなパワーパックを縦置き搭載するFRレイアウト・ベースの骨格がNEW……と、全てが新しいものづくしというその内容が話題のマツダのニューモデル、『CX-60』をテストドライブした。
そんなCX-60には、他に2.5リッター4気筒のガソリン・エンジンや、そこに外部充電が可能なバッテリーと強力なモーターから成るプラグインハイブリッド・システムを組み合わせたモデルが用意されることも発表済み。さらにCX-70にCX-80、そしてCX-90と、より幅広のボディや3列シートを備えた新型SUVが開発中であることも示唆をされ、これらを”ラージ商品群”と称してこれまでマツダが守備範囲外としていた、より大型で輸入車とも対抗ができるプレミアムな商品群を提供することで、新たなマーケットを開拓していくという意欲的な計画が明らかにされている。
全長×全幅が4740×1890㎜と大柄なことあり、一見での存在感は何とも威風堂々とした印象。そうした中にあって、フロント・オーバーハングの小ささや前輪の中心軸がAピラーの延長線上を通る伸びやかなプロポーションに、なるほどFRレイアウトをベースとした生い立ちを持つ構成ゆえの佇まいの美しさが滲み出る。
インテリア各部の上質な仕上がりも、これまでのマツダ車の常識を超えた印象。一方で、先進イメージを打ち出したいあまり、過度にスイッチ類を削減するようなことが無く、使用頻度が高いと思われる操作系は、きちんと物理スイッチが残されている点には好感が持てる。
試乗会場の駐車場でまず感じられたのは、前輪の切れ角が大きく思いのほか小回りが効くということ。実際、最小回転半径は5.4mと前述ボディサイズに対してはかなり小さく、この時点ですでに「パワートレインを”細身”に作ることに腐心した」と開発陣が語っていた効果を実感することになった。
前述のようにトルクコンバーター・レスという特殊な構造のATを採用するものの、それゆえにちょっと心配だった微低速時や変速時のショックは、無視するに足る水準に過ぎない仕上がり。
特筆すべきはコーナリングの心地良さで、ことさらに機敏とかロールが皆無とかと言うわけではないものの、4輪がバランス良く接地をしながら、アクセルONによって自然とコーナー出口を目指すような感覚は、これまでのこうしたサイズのSUVではなかなか得られないものであった。
一方、走り始めると常にバウンス挙動が強めでフラット感に欠ける乗り味は残念! いずれ手が加えられるに違いないが、この点だけは看過できないと言わなければならないポイントだ。
(河村 康彦)
(車両本体価格:299万2000円~626万4500円)