600PS超の高性能から経済的走行も可能な振り幅の広さに感服
世界屈指のスポーツカー・ブランドとして、誰もがその名を知るポルシェ社。しかし、このメーカーが「古くから4人がゆったり乗れる実用車に憧れを抱いていた」と紹介をすると、それを意外に思う人は少なくないかも知れない。
しかし、歴史を遡ってみるとこのブランドはそうしたコンセプト・モデルをこれまでに度々制作しているし、実際に市販化前提の開発を行って市販化まであと一歩という段階まで進んだ例もあったもの。すなわち、そんなポルシェ社の積年の思いをついに初めて実現させたとも受け取れたのが、2002年に初代モデルがデビューしたカイエンなのだ。
今回紹介するのは日本には2021年6月に設定をされた、シリーズの頂点に位置する『ターボGT』というモデル。ちなみに、デビュー以来3代目となるカイエンの現行型には、初代と2代目からの流れを受け継ぐベーシックなバージョンと、ルーフラインが後ろ下がりとされたよりスタイリッシュなクーペ・バージョンという2タイプのボディを用意。ただし、ターボGTはそのうちクーペのみへの設定で、この時点でよりアクティブでダイナミックなモデルを目指していることが連想できるかもしれない。
実際、搭載される4リッターのツインターボ付きV8エンジンは、これまで最高峰だった『ターボ』グレード用を90PSも上回る640PSの最高出力を発揮し、3チャンバー式のエアサスペンションには専用のセッティングを採用。さらに、多くのポルシェ車に高価なオプションとして用意をされるセラミックコンポジット・ブレーキ”PCCB”や、アクティブ・スタビライザー”PDCC”も標準装備する等々と、走りのポテンシャルを高めるための数々の装備は、とてもSUVとは思えない水準にある。
実際、そんなこのモデルでワインディング・ロードを走ってみると、アクセルペダルを深く踏み込んだ際のちょっと恐怖心すら抱くほどの凄まじい加速力はもとより、舵の効きのシャープさや2.2トン超という重さをモノともしないブレーキの強靭な効きに驚かされることが度々。
それでいて、高速道路をクルージングすれば、その最中に車載の燃費計は11~12㎞/リッターという数字をずっと指し続けているのだから、見た目から想像するよりはずっと空力性能にも優れているのかも知れない。
一方で、そのお値段は2700万円を超え、さらにゴージャスなオーディオやヘッドアップディスプレイなどをオプション装着したテスト車ではもはや総額3000万円近くとこちらももはや”不動産価格”。最近のスーパーカーにはこうしたキャラクターの持ち主もあるのだという一例だろう。
(河村 康彦)
(車両本体価格:2725万円)